月下に咲く花 38





ジュール隊のモビルスーツ部隊が出撃した。

「けど、どうするんだよ、イザーク。お前、まさか...」

戦闘宙域に向かう中、ディアッカが声を掛ける。

「今俺が殴りたいのはあいつだけだ!」

怒鳴るイザークに「あ?」と意味が分からないディアッカ。

「よくもまたおめおめと、あんな所に!!」

イザークの激怒っぷりに相変わらずだといったようにディアッカが溜息を吐く。

しかし、あの船...

先の戦争で共に戦ったクルーを思い出す。

その中で明るい声のオペレーター。

彼女もまた、あの船のクルーとして戻ってきているのだろうか?

そんなことを考えていたがディアッカは頭を振る。

感傷に浸っている場合ではない。そんな余裕は今何処にもないのだ。


「貴様!またこんな所で何をやっている!!」

ジャスティスに向けて放たれた弾丸を打ち落としたイザークが通信を入れる。

「イザーク!?」

「何を、って。こいつを落とそうとしてんじゃんかよ」

ディアッカもその通信に入る。

「ディアッカ...」

アスランは呆然と呟くが

「俺が言ってるのはそういうことじゃない!」

イザークは相変わらず怒鳴りっぱなしで「もういいだろう、そんなことは」とディアッカがいつものように宥める。

「それより早くやることやっちまおうぜ」

ディアッカの言葉にアスランはワケが分からないといったように声が漏れる。

「ディアッカ、貴様!」

「こいつを落とすんだろ?...イザークがコレ、守るはずないじゃん」

そう言ってステーションワンへと向かう。

「イザーク...?」

アスランが声を掛けるが、イザークはそれに返事をすることはなく、舌打ちをしてディアッカを追いかけた。


フリーダムとジャスティスの手によってステーションワンの破壊が成功した。

が、そのすぐ後に移動要塞であるメサイヤが戦闘に加わり、ネオジェネシスが発射されてオーブの艦隊が多数撃破される。

ディスティニーとレジェンドが発進し、フリーダムとジャスティスがそれに応戦する。

戦闘が激化する中、「どうすんの、イザーク」とのんびりディアッカが決断を促す。

逡巡した後

「エターナルを援護する」

イザークは決断を口にする。

「あ?」

少し意外だったらしく、ディアッカが聞き返すと

「ザフトの船だ、アレは!」

ちょっと苦しい理由だが、

「なるほど」

ディアッカは微笑んでそう呟いた。

エターナルの護衛についているが、危うい。さすがザフトの戦闘力、というか、質量だ。

「フリーダムは何をやってる!?」

「何だよ、助けて欲しいのか?」

イザークの怒鳴り声に反応してディアッカが茶々を入れると

「違うわ、馬鹿者!!」

やっぱり怒鳴りつけて反応をする。

ラクス・クラインを守るのは彼の役目だ。


フリーダムによりレジェンドが、ジャスティスによりディスティニーとインパルスがそれぞれ戦闘不能となる。

メサイヤからネオジェネシスが再び発射されたが、その前にザフト全軍になされた通知により、イザークがエターナルにその危険を知らせて回避することが出来た。

そして、ジャスティスと暁によりレクイエムは破壊され、フリーダムの手によってメサイヤを沈黙させた。


ラクスがゴンドワナにこの宙域での戦闘停止を呼びかけ、ザフトはそれに応じる。

全ての戦艦から帰艦信号が放たれた。

深く息をつき、イザークもその信号に従いボルテールを目指す。

「イザーク!」

通信が入り、不機嫌に「何だ?」と応じる。

、はどの艦だ?」

アスランの問いに先程よりも更に不機嫌に「俺の船だ!」と怒鳴りながら応える。

「ああ、じゃあ丁度いい。、エターナルに派遣してもらえないか?」

「な、んだとー!?」

「イザーク、そんな血圧上げんなって」

機体を損傷しているディアッカがいつものように宥める。

「けど、エターナルにだってドクターは居るんだろう?」

ディアッカが尤もな事を問う。

「いや、そうなんだけど。オーブ艦隊の方とかそっちも看るだろうから、できれはドクターが多い方が良いと思って...」

「なるほどねー」と呟いてディアッカはイザークの返答を待つ。

長い沈黙が降りる。

「エターナルもザフトの船なんだろう?」

ディアッカが先ほどイザークの口から聞いたその言葉を持ち出してみる。

イザークは舌打ちをした。

「こちらの体勢が整うまでだぞ。命令が出たら帰らせるぞ」

そう一言言って帰艦した。

「なあ、そんなに人員不足なのか?」

ディアッカが聞くと

「そうでもない」

とアスランが言う。

「はあ?!」

「あそこには、ラクスがいるからな」

アスランの言葉にディアッカが眉を上げる。

「やっぱ、ってラクス・クラインのファンなんだ?つか、こんなときにファンサービスかよ」

呆れたディアッカが言うと

「はあ?そうだったのか?ってラクスのファンだったのか...」

感慨深そうにアスランが頷く。

...どうも話がずれているようだ。

「まあ、俺もついて行くわ。ああ、そういえばアスラン」

「何だ?」

「イザークに一発くらい殴られるかもしれないから、お前」

そう言ってディアッカもボルテールに向かった。









桜風
08.6.14


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