月下に咲く花 39





艦に戻ったイザークはパイロットスーツのままが居るはずの医務室に向かった。

後方支援に徹していたため艦に被害は殆どなく、パイロットもかなり軽症で済んでいた。



声を掛けられてが振り返る。

「はい」

「一緒に来てくれ」

は首を傾げながらドアに近づく。

「何処に、でしょうか?」

「いいから」と一言言ってそのまま連れ出す。


「ホント、何処に行くの?」

イザークの後ろを歩きながらが問いかけると

「エターナルだ」

と一言返ってくる。

イザークの返答には「はあ?!」と素っ頓狂な声を出した。

「何でまた...」

「向こうの方が負傷者が多い。更にオーブ艦隊もあるから医師が不足しているんだと」

の眉間に皺が寄る。

「それなら、普通は充実してそうなのに...」

呟くにイザークは取り合わない。

そのまま更衣室に連れて行く。勿論、女性パイロットの。

「ノーマルスーツを着ておけ」

そう言って放り込まれた。

中にいたシホが呆然と見ている。

「えーと。ノーマルスーツってあるのかしら」

の問い掛けに頷いてロッカーを開けてそれを取り出す。

「ノーマルスーツは軍服の上から...スカートが邪魔よね?」

コクコクとは頷いた。

「脱いじゃって」

「は!?」

「どこかに行くんでしょうけど。スカートを持ってってそこの更衣室でも借りて着替えれば良いわよ」

あっさりと言われては呆然とした。

「え...?」聞き返す。

「さ、よくわかんないけど、隊長がお待ちなんでしょ?早く着替えなさいよ」

そう言って服を脱がされ始める。

抵抗を試みたが、パイロットとドクターでは同じ女性でも腕力が違うらしい。

あっという間にはノーマルスーツに身を包んでいた。


プシュー、とドアが開いたため、イザークは凭れていた壁から背を離す。

イザークの目はのお腹辺りに釘付けだ。

スカートを持って歩くのもはしたないと主張するの願いを聞き入れたシホがノーマルスーツの中にスカートを突っ込んだ。具体的にお腹の辺りに。

一応きちんと畳んだが、絶対に皺になっている...

「太ったか?」

イザークの言葉にはムッとする。

「はいはい!太りましたー。ブクブクと今この部屋に入った途端に太りましたー!!」

投げやりに言うにイザークはしまったという顔をした。

シホは小さく笑う。

イザークが焦ってる。有能な隊長も恋人の機嫌を損ねると中々楽しい。とイザークが一緒にいるときでもこんなイザークは中々見れない。

「や、冗談だ。だから、怒るな...」

そう言ったイザークには溜息を吐く。

「時間、ないんでしょ。イザークも行くの?」

「当然だ」

そう応えてシホを見る。

「ディアッカが残るか分からんが、というか寧ろついて来そうだから、艦の事は少し任せてもいいか?」

「は!」と敬礼をして応えた。

艦長にはもう連絡入れているし、大丈夫だろう。

そう思いながらイザークはを連れてドックへと向かった。


「あれ、イザーク。も?」

「出られるな?」

の声に振り返り、確認する。

「うん。イザークはさすが。殆ど傷がいってないからすぐに出ても良いよ。ディアもギリセーフかな?」

ディアッカの機体を見上げてが言う。

「ディアッカ、怪我してるの?」

「や、怪我って程じゃない」

心配そうに言うに肩を竦めて軽く応えた。

「で、つまりお前も行くのか?」

面倒くさそうに言うイザークに

「隊長が許可してくれれば」

という。

イザークは舌打ちをして「好きにしろ」と一言呟いてを抱え上げる。

「え、もしかしてこれで!?」

「そうだ」と言いながらそのままと一緒にコックピットに乗り込む。

「や、ちょ、ダメ!やめて!!」

何となく涙声でが訴えるが

「イザーク・ジュール。出るぞ!」

そのまま気にせずに発進した。

「あーあ...」

が呟く。

「ん?」

ってスピード恐怖症」

のこの一言にディアッカは固まった。

「え?」

「MSで移動なんてダメなのよ。ついでに、MS自体何だか怖いんだって」

「ダメじゃん、イザーク」

「うん。けど、ディアもついて行くなら早く行きなよ」

に言われてヘルメットを被る。

「りょーかい。んじゃ、行ってくるわ」

そう言って自機に乗り込む。

遅れてディアッカもエターナルに向かった。









桜風
08.6.28


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