| この度の戦争の残務に追われた生活が収束し、取り敢えず一時帰宅が出来ることになった。 全てを片付け終わっていないので、数日の休暇といったところだ。 「ただいまー!」 が玄関のドアを開けて声を掛ける。 「ただい、..お邪魔...ただいま?」 はどういって言いか分からずに何度か言い直す。 「どっちだって良いじゃん。寧ろ、『ただいま』にしたら?」 が笑いながら言い、は頷いて「ただいま」と言った。 ひょこ、とキッチンから顔を覗かせたのはの母親だ。 「あら、2人ともご苦労様。お帰りなさい」 の母から2人の無事を聞いていたらしく、そんなに感動の再会とはならない。 「さん、ちゃんが戻ってきたわよ」と同じくキッチンにいるらしいの母に声を掛けていた。 「ただいま」 キッチンに顔を覗かせてとが口々に帰宅を知らせる。 「あー、お帰り。お父さんたち、今日は早めに帰るって言ってたから」 「疲れたでしょう?シャワーを浴びて一眠りなさい」 の母にそう言われて2人はバスルームに向かった。 「何か、本当にごめんね」 一緒にお風呂に浸かりながらが言う。 「さっきからそればっかり。いいのよ、気にしないの。うちは、結構部屋が余ってるからさ」 そう笑いながら指鉄砲をつくり、の顔にお湯を掛けた。 やられたもお返しにお湯を掛け返す。 タオルを運んできたの母が「まあまあ」と微笑みながら「あまり暴れないのよ」と声を掛けて出て行った。 2人は「はーい」と返事をして肩まで浸かる。 「やばい、もう眠くなってきた」 が言うと 「同じく」 とが笑う。 2人は早々に風呂から上がり、お互いの髪をブローしてベッドに倒れこんだ。 「2人とも、起きなさい。お父さんたち帰ってきたわよ」 そう声を掛けて起こされ、とは寝惚け眼のままリビングへと向かった。 「ああ、お帰り」 「無事で何よりだ」 2人の父親がそれぞれ声を掛けてくる。 「ただいま」 とが口々にそう言ってテーブルにつく。 テーブルの上には豪華な食卓となっていた。 「うわぁ、おばさん。相変わらず美味しそうな...」 が目を輝かせて言う。 「ちょっと、なんでお母さんには言わないの」 不満そうに言う母に対しては 「お母さん、キャベツの千切り、上手になったね」 と返した。 母はグッと言葉に詰まる。 確かに、そういう生野菜を切ることしかしていない。何てったって、料理は大の苦手だ。夫は案外大雑把で味に煩くない。が、娘は何故か自分の味で育てたはずなのに、まともな味覚を持っているため、よく文句を言われていた。 そして、その味オンチの食卓を解消すべく彼女は自分で料理をするようになっていた。 だから、彼女がアカデミーに入学して家を出た後は元のステキな食卓事情となっていた。 「で、お母さん」 が母に顔を向ける。 「なあに?」 「家は?」 いい加減どうにか決めているだろうと辺りをつけて聞く。 「ああ、社宅が空いたって」 つまりは、そこに入るといったところか。 「いつ?」 「今書類を出してるところ、それが通ったら、ってのなんだけど。何だかいけそうな気がするわ!」 自信満々に言う母に溜息を吐く。自分の勘の良さは、間違いなく母譲りだ。 「それはそうと、あなたたちは?」 の母が聞いてきた。 「んー?」 肉を頬張ってるが声を出す。 「ザフト、縮小されるんでしょう?」 母の言葉にモゴモゴと口を動かしながら頷く。 「何か聞いてないの?」 「まだ体勢を整えていませんから。縮小すると言っても明日、明後日の話になりませんし、もちろん、そうした場合にザフトを離れる兵士たちの働く場所も確保するっていう話になっているそうです」 が答えると「そうなの?」とが聞いてくる。 「イザーク情報」 「なーる」 隊長であるイザークは結構上の会議の情報まで耳に入る。 「具体的にはどうするのかしら?」 「恐らく。ザフトと、研究機関を独立させるんじゃないですか?今はザフトに属している研究機関がそれなりの数ありますけど。それを独立させてそれぞれ特化するとか。そういう流れになると思います。これは、私の予想ですけど」 の言葉に母が頷く。 「そうなるでしょうね。ザフトで行われている全ての研究は、私たちコーディネーターの存亡に何らかの形でかかわっているものだから、それを特化するのは悪い政策ではないわね」 の母が頷いた。 「なあ、難しい話はこれくらいにしないか?折角娘たちが無事に戻ったんだ」 の父の言葉でこういった話はお終いとなる。 数ヵ月後、プラントとオーブ政府による和平条約の調印がなされ、評議会からラクスへの議長就任要請がある。 それに応じて、ラクス・クラインはプラントに戻ってきた。 少しずつ、情勢が動き始めていた。 |
桜風
08.8.9
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