| 久しぶりの自宅に帰ってはシャワーを浴びていた。 帰宅できたと言っても結構遅い時間だ。 バスルームから出てくるとインターホンが鳴り、出てみるとイザークだった。 「本当に来た...」 このの呟きにムッとするイザーク。 「言っただろう、昼間に」 「あ、うん。聞いてたけどさ。忙しいみたいだから、来れないかもって思ってて...」 慌てて今の自分の発言にフォローを入れる。 「忙しくても久しぶりにと過ごせるんだ。適当に誰かに押し付けて来るさ。だって昼間に指折り数えただろう?」 そう言ってニヤリと笑うイザークに、 「イザークって、時々どす黒いよね。昔はディアッカに対してのみだったけど。オトナってヤダね」 が緩く首を振りながら呟いた。 のその言葉は黙殺してイザークは部屋に上がる。 今まで数回しか来たことのない、この部屋。もしかしたら、右手だけで来た回数を数え切れるのではないだろうか? ふと、キッチンの食器棚に目が行く。 「は、よく来てるのか?」 マグカップが4つある。 ひとつはの。ひとつはイザークの。後の2つは良く分からないが、ひとつは以前きたときに見た。客が来たとき用だと言っていたと思う。だから、残ったひとつはきっとの。彼女が好きそうなデザインでもある。 「凄い、イザーク!『浮気か!?』とかって騒がれたら大変だねーってが置いてったの」 騒がれるかもしれないものを態々置いていく。相変わらずだ。 「ご飯は?」 「済ませてきたが、は?」 「まだ。どうする?」 冷蔵庫を開けながらが聞く。 「作るのか?」 「ご希望とあらば」 少し悩んでいる様子のイザークに 「因みに、1人分作るも2人分作るも手間はあまり変わりません」 とが声を掛けると「じゃあ、いいか?」とイザークが言い「畏まりました」とが笑った。 が料理をしている間、イザークは部屋の中を見渡す。 生活空間という雰囲気はあまり無い。 まあ、研究施設に泊り込むことが多いと言っているのだから、実際生活空間になりきってはいないのだろう。 「できたよー」 と本日の夕飯のチャーハンを運んできた。 食事を済ませてそれなりに時間が経っているため、美味しそうな匂いが食欲を刺激する。 2人は食事をしながら昼間話きれていなかったお互いの近況等を話した。 食事を済ませて食器を洗っているに 「。良かったら後で散歩でもしないか?」 とイザークが声を掛ける。 は振り返り、 「久しぶりのデートだね」 と言って笑った。 本当に久しぶりだ、とイザークも溜息を吐く。なんと言っても前に会ったのがあのニコルの命日だったのだから。あの時はディアッカとアスランがいたのでデートではない。その後も仕事ですぐに帰った。 はぁ、と溜息を吐いていると「イザーク?」とが声を掛けてくる。 「ああ、もういいのか?」 「うん、行こう」 「うわ、今日は満月だったんだー」 空を見上げては歓声を上げる。 「何だ、知らなかったのか?」 は空を見上げるのがクセだと思う。だから、先ほど帰宅したのなら見上げていてもおかしくないと思ったのだ。 「心に余裕がないので。というか、私が好きなのは昼間の青空だから」 そう言ってイザークの瞳を覗き込んで微笑む。 「そう、だったな」 目を細めてイザークが頷く。 「俺は、こっちの方が好きだけどな」 そう言って、いつもは仕事のときは纏めているの髪を手にとって口付けた。 「あ、そういえば。イザークがずっと前に言ってた花」 「ん?」 何だろう。花...? 「ほら、月の光でどうのっての」 「ああ、アレか」 何だかに言われると非常に恥ずかしい。何せ、初めてを目にしたときその風景と彼女を重ねてしまったのだから。 「今度地球に降りるでしょ?文献とか見れる機会があったら探してみるね」 そんなことを言うにイザークは小さく笑う。 「いいよ」 「え、でも。気になるって言ってなかった?」 首を傾げてが言う。思い切り調べる気満々だったのだ。 「いいんだよ」 納得いかないといった表情でがイザークを見上げる。 「俺にはもうそれ以上の花があるから」 そう言ってに口付ける。 「イザークって時々恥ずかしいくらいにキザだよね」 は恥ずかしそうに俯いたまま呟く。 「いいだろう、たまには」 そう言ってイザークは笑ってまたキスをする。 今思うとあの時目にした風景は案外大したものではなかったのかもしれない。 月の光を受けて淡く輝く花。 それは確かに幻想的で美しいだろう。 けれど、イザークはそれ以上の花を見つけた。 月の光がなくとも、常に輝いている花。・を。 |
桜風
08.8.30
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