| 美しいピアノの音色が邸の中に響く。 曲が終わるとパチパチと複数の拍手があった。 「やっぱ、ニコルのピアノは良いよなー」 「素敵な音色よね」 「いつもありがとう。でも、ニコルはスケジュールがタイトだって聞いたことあるけど、休める時は自分の体を休めてよ」 の言葉にピアノを弾き終わったニコルが微笑む。 「いいえ。僕がお役に立てるんですから。それに、こうやってオーディエンスが居ることですしね」 そういって肩をすくめる。 本日のジュール邸リサイタルにはの他にラスティとフレイもいた。 の妊娠を聞いてからこの2人はかなり頻繁にジュール邸に足を運んでいる。 ニコルは仕事の合間だが、胎教に、とピアノを弾きに来てくれる。 「ただいま」 ホールからイザークの声が聞こえた。 「...あれ?早い」 「そろそろ戦後の片付けとしては落ち着いてきているはずですから、早く終わったんでしょうね」 ニコルは物知りだなーと思いつつホールに足を向けると「よ!」と軽く手を上げて挨拶をする人物が居た。 「ディアッカ!?」 「おひさし」 「うわー、一番懐かしい人だ」 そのままがディアッカの元へと足を向けたのでその間にすっとイザークが割って入る。 「ただいま」とのおでこにキスをした。 「お帰りなさい...」 「やーん、俺にもただいまのチューしてー!」 からかうようにラスティが言い、「するか、気色悪い」とイザークは冷ややかに言ってそのまま着替えるべく自室へと足を向けた。 もそれに続こうとしたが、イザークが断ったため、お客様も居ることだし、と応接室へと戻る。 「姫さん、順調?」 ディアッカの言葉に「今のところ」とが頷く。 「あれ?、性別まだ見てもらってないって言ってなかった?」 首を傾げながらラスティが問う。 「うん。けど、イザークとエザリア様の間では女の子決定みたい」 肩をすくめてが言う。 「何で?エザリア様は、何となく分かるけど、イザークは?」 ラスティの疑問には肩をすくめるだけだった。理由は、よく分からない。 「けど、女の子だったら一緒に買い物に行けるから良いわよね。私、いろんなところに連れて行ってあげたいなー」 買い物好きのフレイが言う。 ホーキンスについてきてもらっても買い物が長いと文句ばかり言われて落ち着いてしっかりと買い物に出られてないのだ。 女の子の友達といえばだが、も買い物はあまり好きではないらしいし、今は妊娠中なので無理はさせられないため、現在ちょっぴり寂しい思いをしている。 「何でフレイがの娘と買い物に行くんだよ」 首を傾げながらラスティが言うと、 「良いじゃない。ほら、叔母と姪って感じで」 とフレイが少しムッとしたように返す。ラスティは何も悪意があって言ったことばではないのだが、彼女には少し棘があるように聞こえたらしい。 「そういえば、アスランには?」 話題を変えるべく、ニコルが聞く。 は苦笑して首を振った。 「えーっと..アレックス・ディノだっけ?彼に頻繁にプラントから連絡が行くのは好ましくないでしょう」 なるほど、とニコルは頷いた。 「ニコル、いつもすまないな」 着替え終わって応接室にやってきたイザークが開口一番にニコルに礼を言う。 「いえ、僕も楽しみですから」とニコルは応える。 ラスティを見てイザークは深いため息をついた。 「貴様、仕事はちゃんとしているのか?」 「してるって。新しい環境に早々に順応してるんだから!」 えっへんと胸を張って言うラスティに少し胡散臭げな視線を向けて「そうか」とイザークは相槌を打つ。 「何か変わったことは?」 に向かってイザークが問う。 「特に何も」 「今日は定期健診の日だろう」 「あ!俺がちゃんと付いて行ったから。安心してよ」 ラスティが挙手をした。 「...なに?!」 イザークの眉間に瞬時に物凄く深い皺が刻まれた。 「要らない、って言ったんだけど...」と苦笑しながらが一応フォローを入れる。 「いやぁ、ドクターに『お父さん』って呼ばれちゃった。『お子さんは順調ですよ、ご安心ください』って。俺、思わずこれからもよろしくお願いしますって言っちゃったよ」 「ははは」と暢気に笑いながらラスティが続けた。 イザークの神経を逆撫でているのは重々承知。むしろそれを狙って言っているようなものだ。 「ラースーティ。きっさまー!」 「イザーク、イザーク。おなかの赤ちゃんに怒鳴り声が聞こえるよ」 そういってラスティは人差し指を自分の唇に当ててを指差す。 イザークはグッと詰まった。 ギリッと奥歯をかむ音が漏れる。 「そういえば、美味しいローズティを持ってきたの。飲めるのかしら?」 フレイが慌てたように話題を変える。 「あー、あっちはそんなに気にしなくても良いんだぜ」 ディアッカがこっそりと教える。 「え?で、でも...」 「ラスティが飽きたら終わるから、大丈夫ですよ」 ニコルも同じようなことを言う。 心配そうにを見た。 「何なら、止めようか?」 苦笑してが言い、 「2人とも、そろそろやめたら?美味しい紅茶、淹れるからこっちにおいでよ。フレイがローズティ持って来てくれたみたいよ」 と声をかけた。 ふん、と鼻を鳴らしてすぐにイザークがのほうへと向かう。 ラスティは少し詰まらなさそうにしていたが、に軽くにらまれて肩を竦めてテーブルへと向かってくる。 「猛獣使い...」 ポツリと呟いたフレイの一言にディアッカとニコルは思わず噴出した。 やわらかい、ローズの香りが部屋の中を漂う。 「けど、性別が分からなかったら出産前に買っておくものとかで困らないか?」 ディアッカが言うと 「生まれたては性別とかあまり関係なく同じものが要るみたいだから特には。強いて言うなら服の色とかに拘るなら困るんだろうけど... 私は赤ちゃんのとき青とか、男の子が着るような服の色ばかりだったから、今更気にならないし。 それに、イザークとエザリア様も気にせずに色々買ってるから。今更男の子だってことになってもある意味手遅れ」 肩を竦めて苦笑しながらが言う。 何となく、ジュール母子の行動が目に浮かぶ。 「じゃあ!私も今度何か色々買ってくる!」 目を輝かせてフレイが宣言した。 「あ!俺も俺も!!」 ラスティもだ。 「いや、もう..色々と十分にあるから...」 ジュール母子はもちろん、の祖父も色々と購入しては送ってきている。 ジュール邸が大きくてよかった、と心から思っているところなのだ。 夕方になり、ニコルが仕事があるから、とジュール邸を後にするのにあわせて友人たちも揃って帰っていった。 先ほどまで賑やかにおしゃべりしていたのに途端に静かになる。 「...あいつらは、よく来るのか?」 やっとゆっくり出来るとイザークはソファに深く座ってに聞いた。 「んー。フレイとラスティは頻繁..かな?ニコルは時間を見つけては1曲だけピアノを弾いてそのままぱっと帰っていくときがある。忙しいならいいよ、って言ってるんだけど...」 「感謝するのはニコルにだけだな」 イザークの言葉には苦笑して、「みんなに、でしょ?」と言いながらイザークの隣に座る。 「百歩譲ってフレイまでだ」 「ラスティだって色々と気にかけてくれてるんだよ?」 の言葉にイザークはため息を吐く。 分かっているが、素直に礼を言う気にはなれない。 「そろそろ、現議会は解散だ」 不意に仕事の話を始めた。 「じゃあ、再就職先を探さないとね。ザフトに戻るの?」 の言葉にイザークは少し悩んだが「いや」と応えた。 「ちょっと前に声をかけられているところがあるからな。そっちにしようかと思ってる」 「そっか。まあ、イザークの思うとおりにしてね」 はそう言って立ち上がろうとしたが、イザークに腕をつかまれてそれが叶わない。 「ただいま、」 そう言ってにキスをする。先ほどはディアッカが居たため、おでこで済ませたが、やはりキスは唇だろう。 「おかえりなさい、イザーク」 そういってもイザークにキスをした。 |
リクエスト内容
『「Like a fairy tale」のヒロイン設定で妊娠発覚後のイザークの様子やディアッカの反応などの番外編』
リクエストありがとうございました!!
桜風
09.7.5
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