| ラスティが送り届けてくれたヴィンセントはスッキリした面持ちだった。 「ありがとう」 は礼を口にしたあと、少しラスティに近付き、「何か、嫌な話とかさせちゃわなかった?」と小声で問う。 「わー、イザークが睨んでるよー」 指摘されてが振り返るとイザークが確かに鋭い目つきでこちらを見ている。 先ほど帰ってきたばかりなのだ。 イザークがゆっくり近付いてきた。 「悪かったな」 「いや、うん。てか、ヴィンセント、精神年齢高すぎて、オレちょっと自信なくしたよー」 苦笑してラスティが言う。 「ねえ、イザーク」 「なんだ?」 「愛は世界を救うかな?」 ラスティの言葉にイザークは一瞬言葉を失った。 だが、 「世界を、というのは俺も分からないが。誰かを救うことはできるだろうな」 と答える。 「...だよねー。オレも、世界は無理でも、手の届く範囲なら何とかって思うよ」 ラスティはそう言って、を見た。 「の愛は世界を救う?」 「私、今まで世界をどうこうしようと思って引き金を引いたことはないの。世界はどうでもいいけど、欲しい未来があって、そのために必要なものは守ってただけ」 困ったようにそう言う。 ジェネシスも、レクイエムも必要が無いから壊した。 「は、手の届く範囲が広かっただけだよね」 「欲張りだったのよ。欲しいものに手を伸ばしていただけだもの」 苦笑してが返す。 「うん...オレ、今日ヴィンセントと話せてよかったかも」 イザークとは顔を見合わせた。 「過去は、たまには復習しないとね」 過去にばかり目を向けることは、建設的ではない。 だが、忘れてはいけないことだってある。 「そう」 は静かに相槌を打った。 「ちちうえ」 夜、テラスのデッキチェアに座り、空を見上げているとヴィンセントが声をかけてきた。 「どうした?」 体を起こして振り返る。 「おしえてください」 「なんだ?」 「ちちうえにとって、“あい”って何ですか?」 イザークは困ったように笑い、 「だ」 と答えた。 「ぼく、たぶんこんかいみんなをこまらせたと思うんです」 「そうか?」 「はい。でも、みんなぼくのためにたくさんおはなしをしてくれました」 「...そうだな」 イザークは頷く。 「おはなしをきいてもらえるってすごく、うれしいことです」 「ああ」 「ぼく、あの子とたくさんおはなしします。ぼく、にくしみとかうらみとかよくわからないんです」 「...憎しみも恨みもいいもんじゃないぞ」 イザークは苦く笑った。 「はい」 ヴィンセントは頷く。 「ちちうえ」 「なんだ?」 「ぼく、やっぱりザフトに入ります」 まさかの言葉にイザークは言葉を失った。 「みんながたくさんはなしてくれて、それをきいて、せんそうは、やっぱりよくないものだと思いました。いま、ぼくたちがすんでいるこのじかんは、せんそうがなくてもつくれたものかもしれません」 「...そうだな」 否定は出来ない。 「けど、せんそうがあって、今のぼくたちのせかいがあるのもじじつです」 「...ヴィンセント、お前は今何歳だったか?」 「3さいです」 「...だよな」 イザークは首を傾げる。しっかりしすぎではないだろうか... 「はい。つづけます。だから、ぼくは、ちちうえやははうえ..おにいちゃんたちが作ってくれたこのせかいを守りたいんです」 ヴィンセントの言葉をイザークはしっかりと聞いた。 「なるほど。だが、ヴィンセント。ザフト以外の方法で守れるかもしれないだろう?」 イザークの問いにヴィンセントは頷いた。 「はい。でも、今のぼくにはわかりません。だから、ぼくは、ザフトに入るというよりも、このせかいを守れる人になりたいです」 「ああ。お前の未来はまだまだ続いている。ザフト以外の方法があるだろう。お前の母上は、自分の描いた未来を守るために戦った。俺たちの時代で、それを守るためにはザフトしかなかった。でも、この先はまだ色んな選択肢が出てくるだろう。その色んな選択肢の中でザフトを選ぶなら、それもいいだろう。しかし、今は答えを急ぐ必要は無い」 イザークの言葉にヴィンセントは「はい」と頷き、「では、ぼくはもう寝ます」と言って挨拶をしていなくなった。 「...はぁ」 は深く息を吐く。イザークに先ほどのヴィンセントとの会話について聞いたのだ。 「あの子、いくつ?」 「3つだそうだ」 「...だよね」 しっかりしすぎだ。 「イザークって子供の頃、どうだったの?」 が問うと 「あそこまでしっかりしたお子さんじゃなかっただろうな」 と返事がある。 「ノルンも、オーブの幼年学校にするって言ってるし」 難しいと思われていた親離れは着々と進んでいるらしい。かなり早いが... 「寂しいねー、イザーク」 「俺がいると何度言えば分かる」 溜息混じりに少し拗ねたようにそういったイザークに、は苦笑してギュッと抱きつき、 「はいはい、イザークがいるもんね。そろそろクーリングオフも無理だもんね」 といって笑った。 |
桜風
12.
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