| 「ねえ、ノルンちゃん。何でこっちに?」 少し車が走った頃にルナマリアが聞いた。 「ごめんなさい、お邪魔して」 ノルンがしゅんとなって謝った。 「ああ、いいのよ。別に。でも、何でかなって思って」 「あのね」とノルンは話し始める。 最近イザークは忙しくて休日も仕事だ何だで全然家に居なかったという。 確かに、この間まで評議会の開会期間だったから親衛隊のイザークも忙しかったのだろう。 「それで、ママもずっとパパと一緒に居なかったから。私やヴィンセントはママが居るけど、やっぱりママはパパと居たいんじゃないかって思って。だから、せっかくだし。いつもだったら私とヴィンセントがいるから2人でどこかに出かけること出来ないでしょう?こういうときしかチャンスがないから...」 ノルンの言葉にルナマリアはこっそりと笑った。 シンは相変わらず鈍いようで、だから何だ?と言いたいみたいだ。 「ノルンちゃんはたちにデートをプレゼントしたかったのね。せっかくだし」 ルナマリアの言葉にノルンは頷いた。 「だから、ヴィンセント。今は我慢してね」 隣でしょんぼりしている弟の頭を撫でながら声を掛けた。 話を聞いた彼は頷く。 「うん。ぼく、ははうえがうれしいほうがいい」 ヴィンセントの言葉に「ありがと」とノルンは返した。 「しかし、久しぶりだな」 車を運転しながらイザークが呟いた。 「何?シンたち?」 「...違う。というか、あいつらなら本部で時々会ってる。そうじゃなくて、今の状況だ」 は「今の状況、」と呟いて頷いた。 「ああ、そうね。いつもノルンとヴィンセントも居るもんね」 そう言い終わって「あ、そうか」と言う。 「何だ?」 「たぶん、ノルンはこれよ」 「これ?」と言いながらイザークは首を傾げる。 「イザークと私のデート。これを狙って嫌がるヴィンセントまでシンの車に乗せたのよ」 イザークも「ああ、」と納得した。 しかし、どうしてあんなに強引なんだろう? 「私、あそこまで強引じゃないと思う...」 イザークの考えを先回りしてが応えた。 まあ、確かに。はあまり強引じゃない。人に何かを強要する性格ではない。 「ノルンってフレイと買い物、よく行ってるから」 そこか、とイザークは溜息を吐いた。後天的な、環境による性格形成。 ちょっと心配になったが、気を取り直した。 「ま、せっかくノルンがくれた時間だ。楽しもう」 そう言ってイザークは笑い、も「そうねー」と笑う。 「でも、イザークは運転をしているだけだから何も出来ないねー」とが言うものだから、信号待ちのときにキスをしたら怒られた。 イザークは理不尽だ、と思いながら会場まで車を滑らせた。 会場について周囲を見渡す。 ノルンたちは待っていないようだ。チケットを渡したので先に入っているとも考えたが、一応念のために探してみた。 「居ないみたい」 「...そうだな」 怒られたことがよっぽど納得いかないのかイザークは不機嫌になっていた。 こんなイザークを見せては子供たちに申し訳が立たない。 どうしたものかと考えたが、思いつかないためは諦めた。 イザークに関して諦めが早いのは相変わらずだ。 イザークもいつまでも拗ねているわけにはいかないのは分かっているので適当なところで機嫌が直ったフリをしておこうと思いながらをエスコートして会場へと入った。 ニコルの楽屋に向かった。ミーアはまだ着替え中かもしれない。 丁度、ノルンたちもニコルの楽屋に居た。 「ははうえ!」 を見つけてヴィンセントが駆け寄ってくる。 「ありがとね、ヴィンセント。ノルン」 がそう声を掛けると嬉しそうに2人は照れていた。イザークもいい加減此処で機嫌を直すことにした。 「お久しぶりですね」 ニコルが声を掛けてくる。さっきまで誰かと話をしていたのでたちは声を掛けないでいた。 「元気そうで何よりだわ。今回も演奏楽しみにしてるから」 そう話しているとミーアがやってきた。 一緒に来たフレイがいつもの如くに抱きつく。もう、これは彼女の挨拶になっている。 そして、フレイがに抱きつくと対抗心からか、ノルンも抱きついてくる。 正直、重い... 「ひさしぶりね、」 フレイはノルンと出かけることがあるから家まで来るけど、ミーアはそうでもない。 「久しぶり。楽しみにしてるよ」 が声を掛けると「任せて!」という声が返ってくる。 「ニコルおにいちゃん」 ヴィンセントが声をかけてきた。 「何ですか?」と膝を折って返す。 「なんで、おにいちゃんたちのこんさーとのたいとるはいつも『Like a fairy tale』なの?ははうえにきいても『ニコルにきいてごらん』っていうだけで...」 ヴィンセントの言葉を聞いてニコルはを見上げた。 はニコリと微笑む。 「ヴィンセントは、おとぎ話読む?」 「ははうえによくよんでもらってる」 「じゃあ、そのおとぎ話。最後はどうなってる?」 ミーアも話に入った。 「えーと。『みんなしわあせにくらしました』でおわる、かな?」 首を傾げてを見上げた。 は「そうね、」と頷く。 「僕たちも、みんなに幸せになってほしいと思ってます。だから、このチャリティコンサートのタイトルは必ずこれにしてるんですよ」 「どうせなら、みんな幸せになってほしいもの。そう思わない?」 ミーアが続けた。 ヴィンセントは顔をぱっと明るくして「うん!」と元気よく頷いた。 後ろで聞いていたイザークは腕時計を見た。 「そろそろ行くぞ」 に声を掛ける。 「ノルン、ヴィンセント」 が名前を呼ぶと2人は返事をした。 「がんばってね」 ヴィンセントは2人にそう言っての手を取って楽屋を後にする。 |
桜風
09.9.7
ブラウザを閉じてお戻りください