Like a fairy tale −窓の外の風景−




ふわ、とカーテンがなびく。

風がちょうど良い加減で気持ち良い。

イザークが「久しぶりの休暇だし、家族でどこかに行こう」といってくれた。

こうして家族3人での旅行は久しぶりだ。

いや、正しくは4人だ。

は随分大きくなった自分のおなかにそっと手を当てた。

「ママー!!」

窓の外から自分を呼ぶ声がして顔を向けるとノルンが嬉しそうに手を振っている。

泥だらけで、その相手をしているイザークも結構汚れている。

ノルンたってのお願いでイザークが体術を教えているのだ。


今回の旅行の話を聞いてノルンがイザークにお願いしたのだ。体術を教えてほしい、と。

何故いきなり体術を、と思ったが、の本家に行ったときにが幼い頃からそういうものを教えられて育ったと聞いたという話を聞いて納得した。

「私が教えてあげたかったけどね」

が言ったが、イザークは全力で止めた。

何せ、のお腹には2人目がいるのだ。適度な運動は必要というが、どう考えても『適度な運動』にはならないだろう。


手加減の仕方が難しい、と悩んでいたが先人に相談するのが一番と思ってイザークはカインに相談しに行った。

「あー、まあ。なんと言うか...私も手加減が出来ない性質でね。何度かあの子の骨を欠けさせていたんだよなー」

という答えでアテに出来ないことを悟った。

アカデミー時代の恩師に聞いてみようかとも思ったが、体が出来ている成人を教えるのとは勝手が違うだろうと思って諦めた。

様子を見ながら徐々にレベルを上げていくことに決めて、イザークは愛娘のリクエストにより体術を教えている。

いつか、銃も教えてほしいといいそうで、そうなったらどうしようと悩んでいるところだ。


「ノルン、休憩にしよう」

別荘のテラスに出てこちらに手を振っているを目にしたイザークが提案した。

「はーい」

そう言っては駆け出す。

「シャワーを浴びて着替えろよ」

「はーい!」

後ろからイザークに言われてノルンはもう一度元気よく返事をした。

ふぅ、と息と吐いてイザークはゆっくりと別荘に戻る。


「お疲れ様」

くすくすと笑いながらがタオルをイザークに渡した。

「血か、才能か...」

溜息のようにイザークは呟いた。

「両方、でしょう」

「かもな」と笑う。

「座ったらどうだ?」

そう言ってテラスの椅子を引いた。

「ありがとう」とはイザークが引いた椅子に腰を下ろした。

イザークもの隣に椅子を引いて座る。

「いい風だな」

「気持ち良いよね。そうそう、女の子の名前は考えてよ?」

「何だ、今回はもう性別を見てもらったのか?」

少し意外と思ってイザークが返す。ノルンのときは産むまで知らない方が楽しいと言って見てもらわなかったのだ。

「ううん、見てもらってないよ。でも、男の子だったらきっともう決めてるだろうからなー、って。女の子はネタ切れでしょ?」

そのとおりだ。イザークは苦笑した。



改めて名前を呼ぶ。

「なあに?」と彼女が微笑んで振り返る。

軽く唇を合わせた。

「幸せか?」

イザークの問いに一瞬不意打ちを食らった気がした。

「おかげさまで」

少し、泣きそうになる。

「お前が守った世界だ」

「みんなで守った世界で、これからも守っていく世界。でしょ?」

「ああ、そうだな」

空を見上げる。今日は快晴の日で、突き抜けるような真っ青な空が広がっている。


「ママ、パパ」

愛娘に呼ばれて2人は振り返った。

「いらっしゃい」

が手を伸ばすとノルンは嬉しそうに、でもそっと抱きついた。

「じゃあ、俺はシャワーを浴びてくる」

イザークが立ち上がってテラスを後にした。

「ねえママ」

はノルンに視線を落として「なに?」と問う。

「幸せ?」

は目を丸くして、やがてとびきり優しく微笑んだ。

「ええ、とても。ノルンはどう?」

「うん。とても幸せ!」

これまたとびきりの笑顔で言われた。

「ねえ、ノルン。それイザークに言ってごらん?」

「パパに?幸せだよって言うの?」

「うん。イザーク、とっても喜ぶわ」

「わかった!」

トタトタと走っていくノルンの背を見送っては苦笑する。

「泣いちゃうかもしれないけどね」

はポツリと呟いた。

ノルンの前で泣かなくても、きっと今晩寝室で半泣きになった状態で熱く語られるだろう。


窓の外に広がっていた風景は今のところ自分の目指した守りたかった未来で、そして、とびきりの幸せに溢れていた。









桜風
09.11.16


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