Good couple





テレビで流れる情報を目にしたノルンはすっくと立ち上がった。

「大変!」

庭に出て手入れをしているを見つけたノルンは「ママー!」と駆け寄った。

ちなみに、イザークはテラスで読書などを楽しんでいる。

「なに?」

「ママ、知ってた?今日はいい夫婦の日なんだって。さっきテレビで言ってたの」

「あら、そうなの?けど、ほら。『いい夫婦の日』なら『良くない夫婦』には関係ないでしょう?」

「おい」

すかさずイザークの非難の声が届く。

「ママたち、良くない夫婦なの?!」

衝撃の事実を知らされた愛娘の表情にイザークは盛大な溜息を吐いた。

「それで、ノルン。いい夫婦の日に、いい夫婦は何をするんだ?」

のおなかも少し目立ってきたので此処最近は家で大人しくしているが、大人しくしきれないので、彼女は庭師に任せておけばいい庭の手入れに手を出し始めたのだ。

そして、そんな彼女が心配でイザークはテラスに出ている。

「え?」

きょとんとノルンが首を傾げた。

テレビではそんなこと言ってなかった。何をしたら良いのだろう...

「き、聞いてくる!!」

回れ右をして戻って行った娘にイザークは苦笑した。本当に賑やかな子だ。

「そういえば、ヴィンセントが後ろをついて歩いていないな」

いつもノルンに振り回されているヴィンセントは、彼女の後を必死に追いかけて走っている姿がジュール邸では『お約束』となっている。

「言われてみれば、そうね...」

ノルンの後ろに居なかったらの傍に居る。今日はどちらでもない。

「出かけたのかしら?」

「誰と?」

確かに...

エザリアやフレイならまずノルンを連れて出て、ヴィンセントは『ついで』だ。

「お父様?」

「そらなら、一言声をかけてくださるだろう」

「だよねぇ...」

家庭内で、息子が行方不明。

これは大変だ...

「探そうか」

「食事の時間になれば出てくるとは思うが...」

そういいつつもイザークは立ち上がる。


屋敷というか、まずは庭から探そうとが提案した。

もしかしたら日向ぼっこをしていて眠くなったのかもしれない。

の提案にイザークは頷いた。

「今更だけど、このお屋敷、本当に広いよね」

「本当に今更だな。何年住んでる?」

苦笑してイザークが言う。

「だって、庭をこんな隅から隅まで歩いたことないもの」

「...言われてみれば、俺もそうだな」

「勿体無かったね。せっかく整えてもらってるんだから隈なく見ないと」

が言うと「そうだな」とイザークが頷いた。

外に出てデートとなればの体調が気になって仕方ないだろうし、何よりノルンが買い物など、出かけることが好きだから置いて行けない。

そうなると、子供たちのことを気にしながら、となるからそれなりに精神的に疲れる。

しかし、屋敷の中だと子供達は家の者達に任せ、自分達はこうして散策が出来る。

「なに?」

を見下ろすと彼女が首を傾げる。

「意外と、いいデートコースを見つけたと思ってな」

イタズラっぽく笑う。

「まさに、『今更』ね」

もそう言って笑った。


庭を一周したがヴィンセントが見つからない。

「...射撃場に居たりして」

の言葉にイザークは「まさか」という。

しかし、以前ディアッカから、ヴィンセントはザフトに入るかどうかを悩んでいるらしいと言う話も聞いた。

興味がないこともないのだろう。

ただ、彼の背丈では銃を仕舞っている保管庫に手が届かないし、その鍵は家のものに言わなくては手に入らない。

勿論、ヴィンセントが頼めばまずイザークが不在ならの耳に入れるだろうし、イザークが居れば当然彼の耳に入るはずだ。

射撃場に向かってみたがそもそも射撃場の扉の鍵が掛かっていたので中には入れない。

「おかしいなー」

「もしかして」とイザークが呟く。

「心当たりあるの?」

「母親が、高いところが好きだったからな」

言われては納得した。

射撃場よりも侵入しやすい。

屋敷の屋根に上がるはしごの前でイザークが足を止め、「は此処で待ってろ」と言う。

「えー!」と抗議の声を上げるが、

「今のの最優先事項を考えろ」

と叱られた。

肩を竦めて「はーい」と返事をしたは「テラスに居るから」と声をかけて階下に降りた。


「ヴィンセント」

やはりここに居た。

「ちちうえ」

驚いた様子でヴィンセントは振り返る。

「どうした、こんなところで」

「そらがたかいし、かぜがきもちいいんです。ははうえがお花に水をあげていて、ちちうえがごほんをよんでいて。あねうえが、たのしそうで」

「そうか。ヴィンセントはさっきからずっとここにいたのか」

「はい。ははうえをよぼうかとおもったのですが、ははうえはここまであがってこられないから...」

そう言ってヴィンセントはイザークを見上げる。

「おにわでおさんぽされていたちちうえたちはたのしそうでした。ぼくもいっしょにさんぽしたかったです」

お前を探して散歩していたんだがな、と心の中で苦笑したイザークは、「じゃあ、これからまた散歩するか」と誘う。

「いいんですか?」

「いいに決まっている。家の中ならもそう無茶しないだろうしな」

そう言うとヴィンセントは嬉しそうに頷いた。


余談だが、夕食時にノルンが教えてくれた。

「いい夫婦の日ってのは、イチャイチャしたら良いんだって」

物凄く適当に答えられたのだな、と思いつつ

「誰に教えてもらったんだ?」

とイザークが問うと

「ディアッカおじちゃん」

とノルンが返す。

ああ、適当に返しそう...

とイザークが納得した。

「ということは、いい夫婦の日以外はイチャイチャしたらダメなのね」

が笑いながら言えば、

「おい」

とすかさずイザークが非難の声を挟んだ。

これが、よく目にする平和なジュール家の光景である。









桜風
11.11.22


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