| パーティは比較的早い時間に終わった。 企画者達の瞼が降りてきたのだ。 どの道、翌日仕事を控えている者が多かったので、早めにお開きとなるのは大変助かった様子だった。 「カガリ様も、ありがとうございました」 深々と頭を下げたにカガリは苦笑した。 「友人として招かれたんだ。どうか畏まらないでほしい。素晴らしいご息女だな」 両親に喜んでもらいたい一心で今回奮闘したノルンを思ってカガリが言う。 「ええ、驚くくらいに」 「またこっちに来たら連絡するよ」 アスランが声をかけてきた。カガリは他の招待客と挨拶をしていた。 「あ、そうだ。ねえ、お願いがあるんだけど」 が言った事にアスランは目を丸くして、そして快諾した。 「どれでも良いのか?」 「基本、寮があるところが良いけど。なかったら、マリューさんが下宿させてくださるって言うから、甘えても良いのかなって検討中。アスラン的にお勧めかなーって思うところのパンフレット送って」 「わかった。そうか、もうそんな歳か...」 感慨深そうにアスランが唸った。 「わたし達も歳をとるわけよねー」 笑いながら言うにアスランは苦笑して、「はあんまりそういう感じしないけどな。いつまでも昔のままだ」と返した。 「ほーお?」との背後から低い唸り声がした。アスランは溜息をグッと堪えた。 「人の妻を口説くとは良い度胸だなぁ、アスラン?」 「違うだろう、どう考えても」と呆れながらアスランが言う。 「そうだよ。アスランにそんなスキル、あると思う?」 が全肯定でなんか酷いことを言った。 「ま、そうだろうなー」と何故か優越の笑みを浮かべてイザークが言う。 「そういえば、アスラン。くす玉ってアスラン作成でしょ?」 「...キラと一緒にな」 溜息混じりにそういう。この夫婦とはなるべく関わりたくない。同期だけど、なるべく遠くから眺めていたい。何となくそう思いながら会話を続ける。 「ありがとう。くす玉って間近で見たのは今回が初めて。こっちにきて突然言われたんでしょう?」 「キラがいたし、なんとかなるんじゃないかって思ったよ。集まったメンバー見たら器用なの揃ってたし」 苦笑しながら答える。名前が聞こえて自分の話題のように思ったのか、キラがやってきた。 「何?」 「くす玉、ありがとうって話」とが言うと「ああ、うん。楽しかったよ」とキラが返す。 「ノルンって結構突飛なところあるね」 「母親に似たんだ」とからかうようにイザークが言う。 「父親は短気だから、母親に似てよかったんじゃないのかしら〜?」 の言葉にイザークはキッと睨んだがどこ吹く風で流された。 これ見よがしに溜息を吐いてもまったく気にしない様子のに対して、終いには苦笑を漏らす。 「まあ、また遊びに来い」 イザークにそういわれたアスランは目をぱちくりとして、苦笑する。 「ああ、わかったよ」 ひとり、ふたりと帰って行き、最後の客を見送ってとイザークは息を吐いた。 子供達は既に部屋に寝かせている。 片付けは家の者がしてくれるというのでたちはそれを頼んで寝室に向かった。 「パーティとか、ホント久しぶりだったんだけど...」 苦笑しながらが言う。 「そうだな」とイザークは頷く。 「明日、本家に行くのか?」 「そのつもり」 先ほどの会話を思い出してイザークが問うとは頷いた。 「いいよ、イザークは仕事でしょ?」 ベッドにごろりと寝転んでが言う。 「服が皺になるぞ」 「でした」と言って起き上がり、服を着替える。 「紅茶、飲む?」 なんだか疲れた。だから、甘いものが欲しい。遅いけど、食べちゃえ。 そう思いながらイザークに声をかけた。 「そうだな、もらおう」 イザークの返事を聞いては部屋を後にした。 部屋に残されたイザークはベッド脇のサイドボードの引き出しを開ける。 その引き出しの奥の方に仕舞っていた箱を取り出した。 しかし、なんだか今更だなと思って気が引けた。その箱は思わずまた引き出しの中に仕舞った。 暫くしてが戻ってくる。トレイにティポットとカップを2つ。もちろん、甘いものが欲しいのでクッキーを少々。 室内のテーブルにおいてそこで紅茶を入れた。 「さっきもケーキを食べただろう。ノルンたちが作ってくれたのを」 「さくさくした甘いものが食べたくなったの」 イザークの言葉にがそう返し、イザークもテーブルの前のソファに腰を下ろした。 「ダージリンか?」 「そ。あっさりした感じで良いでしょ?」 の言葉に「そうだな」と返す。 「さっき、アスランと話しててノルンって大きくなったんだなーって思った」 が唐突に言う。 「そうだな。いつの間にか、と言った感じだったが...」 イザークも頷いた。 「今度イザークと二人きりでお出かけするのって、いつになるだろうね」 「そうだな。親離れが中々難しそうだしな」 も子離れできそうにないし... 「ねえ、イザーク。今日は結婚記念日だそうよ?」 悪戯っぽく笑ってが言った。 イザークは苦笑して立ち上がり、サイドボードの引き出しの中から先ほど仕舞った箱を取り出した。 「受け取っていただけますか?」 イザークは少しおどけてそういう。 手を出したにその箱をそっと渡した。 受け取ったは「見ても?」と聞く。「どうぞ」とイザークが頷くと、それを開けた。 プラチナのネックレスだった。 「流れ星?」 トップは流れ星のようだ。 「らしいな。それを見たら、何となく思い出したんだ」 何を、と言わなかったがは何となくそれが何かが分かった。 「ありがとう」と言うの声は少し震えていた。まさか、ここまで喜ばれるとは思わなかったイザークは些か慌てたが微笑んで「どういたしまして」と答えた。 そして「で?」と続ける。 「で?」とはイザークの言葉を繰り返した。 「俺にはないのか?」とイザークが言うと「ははは」とは笑う。 「忘れてたって言ったでしょ?」 「本気だったのか?!」とイザークは目を丸くする。 「うん。何か、そういうの覚えてても流れることが多かったから、忘れた方が気が楽だったし」 まあ、確かに。今まで結婚記念日とか誕生日とか、結局仕事などが入ってきちんとお祝いできなかった。それでも子供達のときはが口をすっぱくして言うから何とかその日は仕事を無理に引き上げたりしていたが、自分達は二の次だ。 「それは、悪かったな...」 心から反省するイザークにはからからと笑う。 「良いじゃない。不都合に思っていないんだから。そうね、今じゃなくて申し訳ないけど。結婚記念日のお祝いに8ヵ月後くらいに子供産むわ」 の言葉にイザークはきょとんとして、苦笑する。 「それじゃ、まあ。仕方ないな」 仕方ないというか、これはではないとムリなのでお願いするしかない。 「ねえ、イザーク」 「どうした?」 「まだ後悔していない?」 突然の言葉に驚いたが、なんだか昔「後悔させてやる」という言葉は聞いた気がした。 「まだ、ないな」 「早くしないとクーリングオフの期限が切れちゃうよ?」 笑いながら言うにイザークも笑う。 「」とイザークが手を伸ばす。 その手を取ると引き寄せられてはイザークの膝の上に座る形になった。 「重くなったな...」 「うるさい」 半眼になって抗議するにイザークは唇を寄せた。 「平和な証拠と言うことだろう」 そう言ってまたキスをする。 少しむくれていたも諦めて機嫌を直してイザークに応える。 存分に唇を重ねたあとに飲んだ紅茶はすでに冷え切っていて全く美味しくなかった。 「ま、これもいい思い出ね」 眉間に皺を寄せてが呟く。 「そんなもんだろう。『平和な日常』なんてものは」 「なら、とても素晴らしいことだわ」 笑って言うに「そうだな」とイザークは答え、微笑んだ。 |
桜風
11.8.29
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