GIFT〜神様からの贈り物〜
―― 予知夢(後編) ――





恐れていたことが起こってしまった。私は、再び悪夢を見てしまった。

アキはテナント全てが立ち退いた夜のビルの中に居た。

他にも友達が居るのか話をしている。

突然、パスンと音がしたかと思うとアキが倒れた。コンクリートの床にねっとりとした液体が広がる。

「姉さん!」と叫びながら少年がアキの体を揺する。

アキは何の反応も無く、ぐったりしている。

男の人がアキを横抱きにしてその場を去っていった。

窓の外には月と向かいのビルのデジタル時計が見えている。日付は10月23日。時刻は2時を回った頃だった。


私は思わず起き上がった。嫌な汗を掻いている。

時計を見ると4時だった。起きるにはまだ早いが、寝るのが怖い。

結局、私は2度寝をせずにそのまま起きていた。

とても現実離れをしていた夢だけど、でも、『夢』のようではなかった。リアルで、私が不安に思うのに十分な存在だった。

学校に行ってアキを見かけた。

「アキ!」

私は駆けていた。

「おはよう、夢来。どしたの?」

そう言うアキはいつもと変わらない。

「あのね、夢を見たの。アキが..」

言いかけてやめた。

もう、失くすのが怖かった。

「何?あたしが、何?」

アキが聞きたがるから、

「アキの、背が縮むの。私より小さくなるって夢。中々痛快だったわよ、アキを見下ろすのって」

そう言って誤魔化した。

そのとき、私は誤魔化すのにいっぱいいっぱいで、アキの表情を見る余裕は無かった。


よく考えたら、私が何とかすればいいんだ。

あと1週間で10月23日。それまでに、あのビルを探し出してそれからアキがああなるのを何とかして止めればいいんだ。

私は毎日寮を抜け出してあのビルを探した。

夢の中にヒントはたくさんあったんだ。


でも、結局見つけられずに当日を迎えてしまった。

でも、時間は2時までまだ、30分ある。

歩き回ってやっと見つけた。夢に出てきたあのビル。

何事も無かったらそれでいい。何かあったら、そのときは何とかしたい。

そう思ってビルに忍び込んだ。

息を殺して隠れていると、長身の女の子と少年、青年など数人がビルに入ってきた。

夢に見たとおり、アキとその友達らしき人たち。

私は息を飲んだ。

この数分後、アキは撃たれる。

様子を見ていたら足を滑らせ、音を立ててしまった。

パスン、と音がした。

私は何故か男の人に横抱きにされていた。

アキは音がした方へ向かって駆けていった。

一緒に居た人たちも部屋の中をかけていく。

まるでスパイ映画のワンシーンみたいだった。アキの動きは、普通の女子中学生のものではなく、どこか訓練された洗練されたものだった。

アキの向かっていった相手の前との間に一線が光った。アキの手がそれに当たったがそのまま突っ込んで行き、相手を捩じ伏せる。

その後、何が何だか分からないまま、収集がついてしまったらしい。

アキを狙っていた人は恐らく全員捕まえられて、拘束されていた。

アキは私を見て、「ありがとう」と言った。

左手から血が流れていた。


目が覚めると寮のベッドの中だった。

昨日見たことは夢だったのかと思う。

そうだったら嬉しい。昨日見た夢も、その前に見た夢も、ただの夢で終わっていたなら嬉しい。

急いで学校に行った。

「アキ!おはよう!!」

「おはよう、夢来。元気だね〜」

そう言うアキの左手には傷があった。私が夢で見たのと同じところに。

「アキ、その手の傷って...」

「ああ、うん。それよりさ、夢来。今度の土曜日、暇?」

「え、ああ。暇だよ」

「じゃあ、一緒に来てもらいたいところあるんだけどいいかな?」

そんなアキを不審に思いながらも私は頷いた。


『楽な格好でおいで』と言われた。

でも、行き先を聞いてそんなことが出来るはずが無い。

行き先は都心の有名高級ホテルだ。

世間に興味の無い私が知っているくらいの、それはもう、大きなホテル。

色々悩んだ結果、制服で行くことにした。

私の通っている学校ってそんな悪い学校じゃないし、制服ってフォーマルだって聞いたことあるし。

制服を着て佐代子さんの家に行くと、アキが慌てて代わりの服を探しに自分の部屋に帰っていき、佐代子さんが笑った。

「ちょっと待ちなさい。着物着て歩けるよね」

と言いながら着付けてくれた。

「制服って、ダメですか?」

「ダメじゃないけど、目立つよ。あと、自分の普段の居場所を知らせる格好はしないほうがいいよ」

と教えてくれた。

何のことか分からなかったけど、ホテルについてそれを知ることになる。


「何で、こうも大げさなところでやるのかねー。レストラン借り切っての方がよっぽど気を遣わずに済むのに...」

ホテルのエレベーターに乗っている間、アキがそう呟いた。

レストラン貸切ってのもそれなりに凄いと思うんだけど...

目的の階に行って、パーティ会場を目指す。

そこには『GIFT 様』と書かれていた。

入り口にいる人が

「お。彰子、久しぶりだな。後ろの子は初めて見る顔だけど。名簿に...」

と言いながら名簿を見た。

「ねえ、アキ。私が一緒に来ても良かったの?」

「うん。大丈夫。望月さん、この子は7歳のときのあたしだから」

そう言うと望月さんと呼ばれた人は納得したらしく、そのまま笑顔で通してくれた。

パーティ会場に入ったら人が凄かった。

でも、みんな本当に楽な格好をしていて驚いた。

そういえば、アキもこのホテルに慣れている感じがする。

もしかして、アキは凄いところのお嬢様なのかもしれない。そう思って聞いてみるとアキは声をあげて笑った。

「いやいや。そんな大層なもんじゃないよ。まあ、収入で言ったらそうかもしれないけど、本質はそんな上品なものじゃないから」

そう言った。良く分からないけど、お嬢様ではないらしい。

「怪我をしたそうだな。気を抜くからだ」

笑ながら突然そう声を掛けてきたのは中年の男の人だった。と言ってもおじさんって感じは無く、おじ様って言いたくなるほどシャープな感じのする人だ。

「加賀さん!お久しぶりです。あたしも出席率が高い方じゃないけど、加賀さんの出席は幻の珍獣、ツチコノなみですよね」

「誰が、ツチノコだ。怪我人が居ると聞いたから来たんだが...かすり傷だな」

「酷い!乙女のこの白い手に傷がついているのに、かすり傷だなんて!!」

アキが芝居がかってそう言う。

「そうか、悪かったな。でも、敦也がいて怪我をするとは、それこそ珍しいな」

「あー。あっちゃんは居なかったんだよこの間は。色々分析した結果、あっちゃんが原因であたしが死ぬってことだったから」

アキのその言葉に私は驚いた。

アキは自分が死んでしまうことを知っていた?!

考えがまとまらずに呆然と立っていると、ちょんちょんと腕をつつかれた。

「葛城夢来さんですよね?はじめまして、高橋敦也と言います。姉を助けてくれてありがとうございました」

そう丁寧なお辞儀を添えて男の子が言ってきた。

携帯の待ち受けで見たはずなのに、今、目の前に居る彼は別人のようだった。とてもしっかりしていて、ランドセルを背負って学校に行っているのを想像してみたけど、少しアンバランスだ。

「あっちゃん!」

「久しぶり、姉さん」

アキは『あっちゃん』に抱きつき、『あっちゃん』は苦笑しながらされるがままだった。

「私からも礼を言わせてもらおう。君が居なかったら、娘を失った私の親友が消沈してしまうところだったよ。ありがとう」

そう言って優しく微笑んで去って行った。

何だか良く分からないけど、私はここに来て感謝されまくっている。

『あっちゃん』との感動の再開をして落ち着いたのか、アキが飲み物を持って壁際に誘ってきた。

壁際の椅子に座る。

「驚いたでしょ?...さて。あたしの話をしよう」

そういったアキは一度目を伏せて顔を上げた。

「まずは夢来に謝らないといけないんだ」

「何故?」

「うん。私は、2回夢来の心を読んだから。あたしも、夢来と同じ超能力者なんだよ」

アキの突然の告白に戸惑う。

自分以外にそんな変な力を持つ人に会ったことが無いから。そんな力を持っていて、こんな明るく過ごせるなんて思っていなかったから...

「あたしの能力は『心を読む』こと。俗に言う読心術だよね。あたしの『読む』って本当に『読む』なんだ。漫画って読んだことがあるよね?アレってセリフは吹き出しの中にあるでしょう?あたしは人の思っていることが見えるの。ホントに文字になっているの。体の横に吹き出しがあって、そこに考えていることが書いてあるの」

思わず私は体の横の何も無い空間を見る。こんなところに、そんな奇妙なものが?

「そう。そこら辺にね、出てるの。初めて夢来を見たとき、あたしちょっと気を抜いててね。力を抑えていなかったの。で、夢来が予知夢を見れて、それで、その力に苦しんでいるのを知ったの。だから、思わず話しかけてしまったの。それが、1回目。次が、夢来が予知夢を見てしまったとき。凄く気になったから、思わず見てしまいました。ごめん...」

驚いて声が出ない。

アキは私が変な力を持っているって知ってた。アキは、私の夢の内容を知った?

「夢来はね。あっちゃんがいなかったあたしだと思った。あたしも、初めて力が現れたときは自分の力の異常さを知らなくて、見えてしまったお母さんの心の中を読んで口にしてしまったの。それで、お母さんに異様なものを見るような目で見られた。それは異常なものへの畏れの目だった。その目を見て、あたしはもうダメだと思った。でも、あっちゃんが助けてくれたの。あっちゃんも力を持ってて、でも、それはあたしよりも早くそれが現れてたみたい。自分の力が何なのか分かってたあっちゃんはすでに使い方を理解してたんだと思う。あっちゃんは、あたしのために、自分の母親の記憶を書き換えたの」

思わず会場に居る敦也君を見た。彼も超能力者?!

「お父さんが丁度あたしたちのそれを見てて、ここに連れてきてくれたの。ここに居る人たちはね、殆どが超能力者。千里眼に、テレパシスト。ファイヤースターター。色んな能力を持っている人たちが居る。
勿論、そういう人たちばかりじゃないよ。そういう超能力は持っていないけど、何か特化している人。
ほら、あそこの。彼はハッカーなんだって。あたしたちみたいな力じゃないけど、それでも、人とは違う力じゃない?
でもね。あたしたちの雇い主はこう言ってるの。
『君たちのその力は、神様からの贈り物。GIFTなんだよ。呪いを受けて生まれてくる人なんて居ない。人は皆、祝福されて生まれて来るんだよ。親とか親戚に、とかじゃない。神様に祝福されて生まれるんだ』って」

衝撃的な言葉だった。こんなの...

「ねー、御伽噺って気がしない?でもね、その言葉はとても温かいよね。救われる気がしない?あたしの今の副業はボディーガードってところかな?直接的ではなく、狙われたって分かったらそれを未然に防ぐっていうところにいるの。この前、夢来がいたのはその場面。
夢来はね、知らなかっただけなの。力の制御の仕方とか、その力が神様からの贈り物だとか。教えてくれる人がいなかったから当然だけど、でも、それを覚えたら愛せるよ。自分も人も。家族も。別に、誰かに弟子入りするっていうんじゃなくて、話を聞いてみて。ここには夢来と同じ悩みを持ってた人、持ってる人が居るから」

そう言ってアキが寂しそうに立ち上がった。

「待って、アキ。私、アキの話が聞きたいよ。アキはどうやって制御してるの?どんなとき、それが綻びるの?教えて。私は一番アキの話が聞きたいよ」

アキの服の袖を掴んでそう言った。

アキは驚いて、そして、泣いた。私もアキと一緒に泣いた。

神様からの贈り物はこの力じゃない。神様がくれたのは一緒に泣いてくれるこの親友だった。

いつの間にか敦也君が近くに来ていた。

「ありがとう」と口を動かして一礼をしてまた他の人と話しに行く。


アキの話を聞いた。

話が終わったらアキはある人を見つけてその人の元へ行く。私もついて行った。

「お父さん」

驚いたことにその人はアキのお父さんだった。

「手は、大丈夫か?」

アキの怪我をした手を見て、開口一番そう言った。本当に『お父さん』だ。

「うん。ちょっとしくっちゃった。それはともかく。あたし、決めました。Sチームになる。これを見て」

そう言ってアキが小さな長方形の紙を差し出した。

「芸能プロダクションか?」

「うん、モデル。出所とか、それがホンモノとかそういうのは確かめたよ。あたしはこっち方面で役立ちたい」

イマイチ飲み込めないけど、アキはモデルの道を進むらしい。

「別に、引退しても良いんだぞ。好きな道を見つけたらそのままこっちを辞めても誰も何も言わない。祝福するだけだから」

「うん。でも、あたしは昴(すばる)も恵(めぐみ)も、秋野の子は皆好きだから」

「...そうか」

アキのお父さんはくしゃりとアキの頭を撫でて一言そう言った。

「あ、高校は行かせてね。全部頑張るから」

「三足の草鞋だな」

「それくらい、履きこなしてみせるよ!」

「まあ、そうだろうな」

そう言ったアキのお父さんが不意に私を見る。

「葛城夢来さん、でしたよね。娘がいつもお世話になっております」

「い、いいえ!こちらこそアキ、じゃない。彰子さんにはお世話になりっぱなしで。学校でも.....」

とずっとしゃべりっぱなしになってしまった。何を話したらいいのか分からないから思いつく限りのことを全部口にする。

「ね、夢来。学校のことはこれ以上言わないで...」

アキに止められてやっと私の口が止まった。

慌ててしまった...かっこ悪い...

でも、お父さんは私に温かい笑顔を向けて

「あなたのお陰で、彰子が生きています。本当に感謝しています」

と頭を下げてきた。

改めて、私の力が人の役に立ったって気付く。

それはとても嬉しい。


私はアキと同じ高校に行きたいって思った。

でも、アキは頭脳明晰だ。私は並。頑張らなくっちゃ!

しかし、アキに志望校を聞いたら思ったほどレベルが高くない。理由を聞けば仕事と学生の両立できそうで、しかも実家から通える学校を選んだそうだ。

兎にも角にも一応、私だとギリギリなのでアキに勉強を見てもらう。

佐代子さんの家での勉強会が私の日課となった。


ある日、佐代子さんに言われた。

「ユメはさ。家の方と上手くいってるの?アキラのようなケースってホント少ないと思うし。普通は簡単に受け入れられないからね」

確かに。アキの家、というか、お父さんが凄いと思う。

私は佐代子さんに事情を話した。

自分でも驚く。こんなにすんなり昔のことを話せるなんて。

少し沈黙した後、佐代子さんが

「ユメと、ユメのご両親さえよければ、なんだけど。ユメ、ウチに養子に来ない?」

そう言ってくれた。

私の父と新しい母との間には子供が居る。

父にとって私の存在は、ただ邪魔なはずだ。

これは私の勝手な被害妄想ではなく、たぶん、真実。

「ありがとうございます。父に話してみます」

お正月は一応仕方が無いから実家に帰る。

このことを話すと父は躊躇った。

養子になるには、私の能力を隠すのを条件として出してきた。今更の条件だ。

一応、佐代子さんにも会ってみたいそうだ。

日程を決めて都内のホテルで佐代子さんに会ってもらうことになった。


父が佐代子さんに失礼なことを言わないかとても不安だった。

そして、残念なことに私の予想は見事当たってしまった。

佐代子さんが結婚していないこととか今の仕事について勘ぐる。

そんなことはどうでもいい。佐代子さんはとても素敵な人じゃないか。私を愛してくれているのだからそれでもういいじゃない!

いい加減、私の堪忍袋の緒が切れそうになったとき、突然人が尋ねてきた。

「佐代子。こういう話し合いが有るなら、早く俺に言え」

そう偉そうに言う人が出てきた。

その人は本当に偉い人だったらしい。父の会社の取引先の社長だとか何とかで

「で?佐代子の何がどうだって?ついでに言うと、何の因果か知らないがこのホテルのオーナーも佐代子だ」

と自信満々に言ってきた。

父は養子縁組の話を承諾し、逃げるように帰って行った。

「トシ。何をしに来た?」

少し迷惑そうに佐代子さんはトシさんに声を掛けた。

「俺が出たほうが話が早いと思ったんだよ。アキが俺んところに来て必死な顔をしてお願いって言うんだ。俺のことあんまり好きじゃないのにな。だから、出てきたんだ。よっぽど好きなんだな、このお嬢ちゃんとお前のことが」

そう言ってトシさんは帰って行った。本当にこれだけのために来てくれたらしい。


その後、私は『能瀬夢来』となった。高校も無事にアキと同じところに入学。

時々嫌な夢は見るけど、アキに話すことにしている。

アキは私の話に耳を傾けて一緒に考えてくれる。

佐代子さんに言われて夢日記を付け始めた。

日記をつけて気付いたことがある。楽しい夢だって結構見ている。

世界には神様からの贈り物があふれていることにやっと気がついた。





「ユメ、起きな。もう遅刻するよ」

佐代子さんの声がする。

もう少し眠りたいのに。...って、遅刻?!

飛び起きて時計を見ると約束に時間まであと2時間。

「もー!佐代子さん。もっと早く起こしてよ!」

「いい大人がそういう文句を言わない。ほらほら急いで」

佐代子さんのことは今でも『佐代子さん』だ。お互いそれがいいと思ってる。

今、私はデザイナーを目指している。

まだまだ修行中の身だけど、いつかは自分のブランドを立ち上げたい。

アキは私の名前は夢が来る。夢が叶うって言ってくれた。

でも、私の目指すところは『夢を追いかける。夢を掴む』だ。いつか夢が来るって言いながら待ってられない。

浴衣を着て急いで家を出る。

「行ってきます!」

待ち合わせの駅前の喫茶店を目指す。


佐代子さんと暮らすようになって10年。私は出来ることが増えた。

いや、寧ろできることが少なすぎたのだ。

毎日が楽しい。勿論、辛いことや苦しいことはあるけど、でもそれだけじゃない。ひとりじゃないってそういうことだってアキが、佐代子さんが教えてくれた。


窓の外から喫茶店の中を見る。

まだ私の方が早かった。

急げば結構余裕だ。いや、佐代子さんのことだから、これを見越してあの時間に起こしてくれたんだと思う。

「夢来」

待ち人ではない。でも、とても大切な人が私の名前を呼ぶ。

「アキ。どうしたの?」

「ん。今日、あっちゃんが此処に来るって聞いてたから。まだみたいだね」

私の正面に座りながらアキが辺りを見渡す。

「うん。敦也君も忙しいのよ、きっと」

読んでいた文庫本を閉じて私は答えた。

「それ、自分で着付けたの?」

「そうよ。デザイナーになる人がこれくらい出来なくてどうするの?」

「はぁ〜。凄いね。夢来は目標に向かってしっかり歩いてるじゃん」

それから近況とか話をしてると敦也君がお店の中に入ってきた。

「お、優しい彼氏さん登場。じゃ、お邪魔虫は退散しますね〜」

そう言ってアキが立ち上がった。

「あれ、姉さん。もう帰るの?一緒にコーヒーでも飲んでけば良いじゃん」

「生憎と、もうコーヒー1杯飲みましたし。弟の元気な顔が見れたし。馬に蹴られたくないから退場するわ」

そう言ってヒラヒラ手を振って去ろうとした。

「あ、姉さん。母さんが姉さんちっとも帰ってこないから拗ねてるよ。父さんも気にしてるから時間があるなら家に顔を出してあげてよ」

アキは敦也君の言葉に「そだねー」と言いながらそのまま出て行った。

「ったく、姉さんは...」

敦也君は困ったように笑ってその背中を見送った。

「さて、夢来さん。今日はどこに行こうか?」


幸せな時間を教えてくれたアキ。

楽しいことを教えてくれた佐代子さん。

そして、幸せの形を気付かせてくれる敦也君。

私は、神様からたくさんの贈り物を受け取って毎日生きている。




桜風
05.11.3



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