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ベランダに洗濯物を干してリビングに戻ると要が難しい顔をしていた。
大学生になってから僕達は一緒に生活している。ルームシェアだ。同じ学校に通って、同じところで仕事しているのだから、一緒に生活した方が良いだろうって話になった。
実際、僕たちお互いが何を考えているのか分るから気が楽だし、情報交換もしやすい。
「どうしたの?」
「最近、昴の様子がおかしいんだ」
「メグもおかしいよ」
僕が返すと要が驚いたように顔を上げた。
「マジで?」
「僕たちには無理な世界のことなんじゃない?」
僕達は霊感がない。だから、そっちの話になったら僕達は役立たずなんだ。
その分、杉浦神社の臣彩兄弟が呼ばれる。臣君はメグたちにすぐ上の兄の優のガードだから本当は嫌なんだろうけど、次代の『秋野』は昴で、僕たちガードも間違いなく『秋野』という組織に所属している。
だから、次代でも『秋野』が言うことに従うことになる。
けど、臣君がメグたちについていてくれる間は僕たちが優のガードに入ることになっている。臣君が彼女達を守ってくれるその代わりに僕たちが臣君が守るべき人を守る。
けど、前に臣君に零された。
「ウチの弐の姫、参の姫って突き抜けすぎてないか?」って。
僕達は出会ったときからあ突き抜けっぷりを目の当たりにしていたからとくに気にしなかったけど、臣君達はちょっと面食らっちゃうらしい。
僕は、あの2人の突き抜けたところに救われたからそれを奇妙だとかそんなことは一切思わない。
ただ、周囲を大切にするのに、自分を大切にしないところがあるからそこは直してもらいたい。
「買い物行くけど、何か要る?」
「アレ?今日の当番って俺だろう?」
そう言って要が首を傾げる。
「いいよ、薬局に行きたいから」
「んじゃ、俺も薬局に行く」
そう言って要が玄関に向かう。
太陽がぽかぽかと暖かい光を降らせている。
「もう春だなー...」
伸びをしながら要が言う。
「そうだね。あ、そうだ。今年はどっちにする?」
目的語を言わずに聞くと「昴たちは一緒に来ないのかな?」と要が呟く。
「最近、人ならざるものとの交流に忙しいみたいだからだめなんじゃない?」
僕の言葉に要は面白くなさそうに肩を竦め、「んじゃ、近場で良いか」と言った。
「じゃあ、高橋さんには韓国って言っておくね」
「あとは日程だなー」
「臣君を借りてる間は、僕達は日本、というか、優の傍に居なきゃだしね」
「昴たちがどれだけで片付けられるか、だよな。仕方ない、直接聞くか」
そう言って要は携帯を取り出した。
要が電話をしている間は足を止める。
傍の川を見下ろすと少し流れが速い。そういえば、昨日山は雨だったはず。
そして、ふと思い出した。
メグたちの幼馴染の紅葉は幼い頃に川で溺れそうになった。
河川敷の公園でボール遊びをしていたんだ。前日の大雨のお陰で川は増水。メグはやめるように言ったらしいけど、『普通』だった紅葉はそれが面白くなくてムキになったらしい。
メグと昴は天才で、何をやらせてもすぐに何でもできるようになるし、もう一人の幼馴染の修一も色々とできることが早かった。だから、普通の成長、もしかしたら少し体が弱かった分遅かったかもしれないけど、普通が面白くなかったのかもしれない。
そして、案の定、紅葉が遊んでいたボールは川に落ちて流された。
流されて諦めれば良いのに、紅葉はそのボールを追いかけて川の中に入った。そして、そのまま流された。
メグはその速い流れに流されている紅葉を追いかけて駆けて、すっと声をかけ続けた。
僕達は昴の『連絡』を受けて現場に駆けつけて、紅葉を助けた。
昴は生まれたときからテレパシストの素質があった。だから、同じ能力の僕は勿論、要にも意思を送ることが出来る。どんなに離れていても。
と、言っても僕達は元々昴とメグのガードで共に行動してるから、さほど遠く離れたことはない。
「距離の限界に挑戦してみようか」と昴が楽しげに言ったけど、僕たちとしては出来ればメグたちが何者かに襲われて傷つくとかいうリスクは避けたいからお断りした。
「のん」
名前を呼ばれて振り返る。
「なに?」
「臣君達には用事を頼んだだけだから優にはついておく必要ないってさ」
「じゃあ、さっさと行って済ませようか」
「だな。俺達が居ない間のガードは高橋さんに依頼しておこう」
高橋さんは僕たちGIFTのまとめ役だから、適材適所を考えながら色々と仕事を振ってくれる。
「お、増水してんじゃん」
僕が眺めていた川を覗き込んで要が言う。
「うん」
「思い出すなー...紅葉」
そう言って苦笑する要に「僕も今それを思い出してたところ」と言う。
「けど、水を恐れることなく育ったところがまた凄い」
笑いながら要が言う。
確かに、死に掛けたのに水を怖がっていない。
「しかし、でかくなったなぁ...」
薬局へ向かう道の途中にバスケットリングがある公園がある。
この辺では唯一のバスケットリング。
そこで黙々とシュート練習をしている人物が居た。先ほど僕たちの話題に上った紅葉だ。
180は超えているらしい。
「羨ましい限りだね」
僕が言うと要が苦笑した。
「体がでかけりゃその分メグを守れるっていうならその意見に賛成だけど、のんの場合はそんなの関係ないじゃん」
「まあね」
僕たちに気がついたらしい紅葉はペコリと会釈をしてまたシュート練習を始める。
「何にせよ。あいつに打ち込める何かが出来るとは思わなかったなぁ...」
そう言って要が足を進め、僕もそれに続いた。
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