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大学を卒業してからは敦也が忙しいこともあって殆ど会うことがなくなった。
敦也は雑誌の記者の仕事をしていて、本人の希望とは裏腹に芸能担当になってしまったと嘆いている。
まあ、これもひとえにアキ姉さんのお陰だね。
ふと、公園に差し掛かる。
子供のとき、秋野に遊びに行って、帰りに寄っていた公園。
秋野の敷地内で遊び倒して、それでも物足りなくてここで遊んだ。
冬は、秋野から帰る時間には既に日が落ちていてその後に遊ぶことなんて出来なかったけど、今の時期、夏休みは本当に楽しく遊んだ。
僕たちが子供の頃に比べて外で遊ぶ子供たちは減ってきた。
実際、この比較的広い公園にいる子供は本当にまばらで、凄く寂しい感じがする。
それでも、外での遊びは僕の子供の頃と変わらないようで、数人の子供が輪になってじゃんけんをしてひとりが鬼になるようだ。
鬼ごっこかと思えば、皆が散らばっていき、鬼と思われる子が木に向かい、目を瞑って数を数えだす。
その間に他の子が姿を隠す。
「かくれんぼか」
不意に声がした。
「懐かしいよね」
「彩は最強だったよな」
「敦也だって中々見つからなかったじゃないか」
振り返り、久しぶりに会った幼馴染に向かって言う。
「彩ほどじゃないって。だって、お前隠形の術使ったじゃないか」
「でも、そのときは簡単にアキ姉さんに見つかったよ。敦也は、そんなの使わなくても上手く隠れてたし」
「てか、俺らが公平に遊べるのって秋野の敷地の中か、杉浦神社の境内だけだったよな」
「ウチで遊んでたら、父さんから手伝いを指示されちゃってたよね」
「そうだったな」と言って敦也が笑い、僕も可笑しくなって笑う。
「懐かしいな」
敦也が目を細めて公園を眺める。
ちょうど鬼の子が100数え終わって友達を探し始めた。
「楠の上」
「滑り台の下」
「ジャングルジムの向こうの繁み」
子供たちが隠れたところを順番に当てていく。
気配を消していない子供たちの居場所を当てるのは容易だ。
「「今さ」」
敦也と同時に同じ言葉を発する。
「先、どうぞ」
「いーや。彩に譲る」
「じゃあ、いっせーのーで一緒に言ってみる?きっと同じだから」
「いいぜ。いっせーのーで」
「「今、俺(僕)たちがかくれんぼしたら、見つける側が苦労するだろうな(ね)」」
やっぱり同じことを思った。
お互い同じタイミングで噴出し、また笑う。
「いい修行になるな」
「でも、敦也体が大きくなっちゃったから隠れる場所を見つけるのに苦労するね」
「かもな」
そう言って敦也は笑う。
声も、顔つきも大人になるに従って変わってきた。
でも、変わらないものだってたくさんある。
それに気付くたびに僕は少しだけ安心する。
「敦也、今度一緒に秋野に行かない?」
「一緒に。...3人でか?」
「そう。昔みたいに」
「いいぜ。でも、俺と和の休みが合わないと難しいな」
「そっか」
2人は不規則な勤務形態だ。自営業の僕とは違う。
「まあ、長い時間じゃなかったら大丈夫だろ。和にもそう話しておいてくれよ。これから逢うんだろ?」
「うん」
「じゃ。俺また会社に出ないといけないから」
「また連絡する」
「おう!」
そう言って敦也は小さく遠ざかっていった。
「いーち、にーい、さーん」
再びかくれんぼが始まる。
その声を背に、僕も待ち合わせ場所に向かった。
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