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アルバムを捲ると必ずと言って良い確率で彩が居る。
当然だ。幼馴染みたいなものだし、彼が居たから私がここに居ることができる。
そっと撫ぜた写真の彩はまだ幼くて、けれどこのときから頼もしかった。
「今の僕を見てほしいかな?」
「わあ!」
いつの間に背後を取られたんだろう...
「隙だらけ。僕じゃなくて秋野に敵対する誰かだったら危険だよ?」
首を傾げて言う彩に「ごめん」と謝る。
「ううん、いいよ。懐かしいね」
そう言って彩も私の手元のアルバムを覗き込んできた。
「うん、懐かしい」
「僕たち、近場に住むようになったのは最近だけど、幼馴染歴は長いもんね」
苦笑と共に彩が言う。
「うん、そうだね」
ゆっくりとアルバムを捲る。
「私さ、中学までは敦也って結婚しないままずっと行くんだと思ってた」
「ん?」
「ほら、あの性格でしょう?結構人当たりが良いくせにそこまで周囲に興味がないって言うか」
「まあ、そうかな?というか、僕はアキ姉さんが許さないと思ってた。あの人が本気を出したら太刀打ちできる人はすくないだろうしね」
苦笑して彩が言う。
私の憧れの人は物凄く、凄いのだ。
そして、彰さんは弟の敦也を凄く可愛がっている。彰さん曰く、「あっちゃんはあたしのナイトなの!」だそうで、それはそれで面白くない。
彰さんがそういう結論に至ったその経緯は知っているけど、面白くないものは面白くないのだ。
「今度はアキ姉さんのこと考えてる」
「彩って、心が読めるの?彰さんとかのんみたいに」
「顔に出てる。というか、今の和の表情を見たら思い出すんだけど...」
そう言って彩がクスクスと笑う。
嫌な予感がするけど、気になるから聞くことにした。
「何を?」
「和の敦也に対するライバル宣言」
やっぱり!
「忘れてよー!」
「敦也も時々思い出して心温まるエピソードに感謝だ、とか思ってるんだって」
「しっつれいな!今度会ったら何か奢らせなきゃ!!」
拳を握ってそう言うと彩はまた笑う。
「ところでさ、和」
「なに?」
彩を見ると目の前にその顔が迫っていた。
驚いて身を引こうとしたけど、彩の方が早くておでこにキスされる。
「彩...」
「まあ、乗った僕も僕だけど。そろそろ別の男の話はやめにしない?」
そんな彩の言葉に私は思わず噴出してしまった。
「和、何で笑うの?」
「彩が可愛いから」
私の言葉に彩はますます機嫌が悪くなる。
「和も似たようなものだと思うけど。僕、子供のときに名前が女の子みたいで相当からからかわれたんだけど...」
トラウマと言うほどのものではないが、不愉快な思いを思い出すとのこと。確かに、私も男の子の名前みたいだって相当からかわれた。
「けど、彩には敦也が居たじゃん」
「余計にそれでからかわれた。あと、また敦也の話をしてる」
今日の彩は本当に可愛い。
ということは、つまり...
「疲れてるんだね」
そう言って手を伸ばすと彩は少し気まずそうに視線を外した。
「ね、今日はこのまま家デートでいいかな?」
彩に聞くと彼は驚いたように眉を上げた。
「でも、和は買い物に行きたいって言ってなかった?」
「いいよ、それはいつでもできる。同僚に買い物好きが居るしね。あ、それとも彩が行きたい場所があるとか?」
「僕は特にないな」
「じゃ、今日はゆっくりする日。どう?」
顔を覗きこんで言うと彩は微笑み、「賛成」と言って私を抱き寄せた。華奢に見えるけど『秋野』なんだ。私くらい軽々と抱きかかえることが出来る。
いつの間にか彩の方が色々とできるようになった。
「彩ってずるい」
「え?」
驚いたように私を見下ろす彩は目を丸くしている。
さっき思ったことを言うと彩は苦笑して
「それは、和を守れるようにって神様がくれたんだよ」
と言う。
「彩、もらいすぎ」
「そう?でも、まだまだもらう気でいるよ、僕」
「彩は欲張りね」
「あれ?和、知らなかったの?」
そういって微笑んだ彩は私にキスをした。
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