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僕は早くから自分の『秋野』での道を決めていた。
僕の力は式がいるからどれでもいけると思う。
でも、一番得意な情報収集を選んだ。Sチームだ。
そうは言っても、式がいるお陰で色んなことが出来るから、時々呼ばれる。
その日も、僕も駆り出された。
いつもの仕事とは違う。
会社関係のことだ。
僕たちはまだ社会に出ていないし、こういうコトに僕たち『GIFT』が駆り出されることは殆ど希だと聞いた。
佐代子さんたちの時代はそれが主だったらしいけど、秋野に子供がたくさん生まれてからは、それを守るのが僕たちの仕事となっている。
それなのに、今回は...
「今回って、かなり面倒くさそうだね」
チームを組んだ和に声を掛けられた。
そう。今回のは面倒くさそうだ。というよりも、聞かされている目的が実は違って狙いは別のところにあるのかもしれない。
<もしかしたら、裏切りが出たのかもしれない。俺たちGIFTの中から。誰ってのは特定できないから気をつけて>
突然頭に声が響く。
望だ。
望の『GIFT』はテレパシー。
その力のお陰で生まれたばかりの恵たちとも意思の疎通が取れた。
そして、望は絶対に『秋野』を裏切らない。
「気がオカシクなりそうなところに恵たちと会って、正気でいられた」
そんな話を聞いたことがあるから。
望が言うからには確かなんだろう。
僕は一応式神を飛ばして様子を見ることにした。
「気をつけてといわれても...これって皆に言ってるんじゃないの?」
「んー、違うと思うよ。望はチャンネル選んでいると思う。僕たちと、要と、あと、そうだな、敦也も今回参加してるよね」
頭に浮かぶ仲の良いメンバーのことを思い浮かべた。
それ以外に参加しているのは...
一応、式神に監視させようと思ったんだ。
しかし、
「よう、大丈夫か?」
突然声をかけられた。
パートナーがいない。
こんな状況下でパートナーと行動していないのは変だ。いつでもお互いがフォローできるような態勢でいないといけないのに...
僕が考えている一方で
「うん、そっちこそ。あれ?パートナーは?一人で行動するのは危ないよ。ほら、さっきのんから連絡があったでしょ。誰かが裏切っているって。一緒に居ないと疑われるよ」
と和が彼に近づいた。
和の言葉を聞いて、彼は懐に手をさして光るものを取り出した。
「和!」
和に被さって何とか守ることが出来た。右肩が熱い。
「望月か。あいつも早めに殺っとかないとな。あのテレパシーは厄介だ。俺よりも腕がいいしな」
殺意を込めた声が廊下に響く。
「殺す...」
和が殺意を込めて呟いた。
「ダメだ、和。秋野に居られなくなる、よ。そんなのダメだ。僕は、イヤだ」
僕は和の上からそう言った。
「じゃあ、2人とも死ね」
銃を向けられる。
下で和が暴れるけど、それを押さえ込む。
「彩、どいて。私が止めるから!」
「ダメだよ。和は僕が守るんだから」
これは、僕の、僕自身の約束だ。
「じゃあな。あの世でジャレてろ」
もうダメだと思った瞬間、式が帰ってきた。そして、金属が床に落ちる音がした。
「間一髪!」
「彩ちゃん、大丈夫?」
間に合った...
彼が現れてからずっと、望に対して救援信号を送っていた。
望も一緒に居る要も『霊感』というものが無い。
だから、僕の式は見えない。本当なら、式が望たちを見つけ出してこっちへ案内した方が断然早いんだけど...
でも、何とか間に合った。
「望月!?」
「あなたの力は雑すぎるんですよ。いや、性格かな?」
そう言って、望は持っていた日本刀を構えた。
望の特技は居合いだ。
「もう、大丈夫だから」
和が不安そうに僕を見た。
「...望、そいつ壊そう」
僕を支えてくれていた要が言った。
「いや。来てくれたみたいだから大丈夫だよ」
望は彼の向こうを見て笑った。
そこに居たのは、敦也だった。
「敦也?!」
和が驚きの声を上げた。
「よう。まさか、アンタがな」
僕たちに軽く手を上げ、敦也は睨みながら彼に声を掛けた。
「和さん。彩ちゃんを病院に連れて行こう。望、ここは頼んだぞ」
そう言って要は止血を済ませて僕を支えて非常口に向かった。
「カナ、代わろうか?」
追いついてきた和が要に声を掛ける。
「女の子に重いものを持たせたって聞いたら、昴たちに非難される」
...うん、怒られるだろうけど、僕って荷物??
「加賀さんに電話してこの状況を説明して。和さん運転できたよね?」
要にそう聞かれ、和は
「この間取ったばかり」
と返事をしながら加賀さんに連絡を取っていた。
車を1台借りて急いで加賀さんの病院へ向かって和が運転をする。
車の中で要が応急処置をしてくれていた。
目が覚めると、兄さんが居た。
「おはよう」
声をかけられて、日が昇ていることに気がついた。
「おはよう。和は?」
「無事。みんなうまくいった。今度、ハル君にお礼を言っておけよ。寝ているところを叩き起こされて、彩に血を分けてくれたんだ。一応、数日入院しておけって加賀さんの指示」
「そっか。...じゃあ、ハル君も僕たちの家族だね」
そう言うと兄さんは笑った。
「そうだな。うん、また家族が増えたな」
「...兄さんは、僕の気持ち知ってたの?」
僕がイマイチ気づいていなかった僕の和への想いについて聞いてみた。
「ん?どうだろうな。ただ、あの時は、俺じゃないって思っただけだよ。根拠は、無いけどね」
そういう兄さんには僕はきっと敵わない。
「...あのときは、ごめんね」
「あのとき..あのとき...?いつの事だ?俺が彩に謝られることは今まで一度も無いよ」
ホント、兄さんには敵わない。
僕が入院している間、和は毎日お見舞いに来てくれた。
「やあ、和。今日も来てくれたんだ、ありがとう。嬉しいけど、無理しなくてもいいよ。和だって忙しいだろうに」
僕たちは今年受験を控えている高校3年生だ。和も当然受験するって言っていたから申し訳ない。
僕は神道を学ぶために大学へ進学する。
敦也もずっとやりたい仕事があるから、そのために文学部を目指す。
そして、彩も道を決めたそうだ。警察官になって『秋野』をサポートすると言っていた。
「ううん。大丈夫。来たいから来てるんだし」
そう言って学校の授業のノートのコピーをくれる。
その後の僕たちは晴れて大学生になった。
僕と和は何となく普通に『恋人同士』ってやつになった。
不思議なことに、凄く自然な流れだと感じた。
ただ、アキ姉さんに言われたことがある。
「そういう恋人同士のなり方もあると思うけど、ちゃんとケジメっての?つけてあげた方がいいよ。その方がずっと安心するからさ。きっと和も喜ぶよ」
って。
そうは言っても、凄く今更な気分だ。
でも、和が喜んでくれるならそれはそれで、僕も嬉しいし。
どうしたものかと思って、敦也に相談してみた。
敦也はそういうのをきちんとした人だから。
「和に『好きだ』って言えばいいじゃん。簡単だろ?」
「そう簡単そうに言うけど、僕たちの場合は『今更』だよ?」
「今更上等!いいじゃないか、和が喜ぶなら」
そう言って敦也は楽しそうに僕を見て笑った。
その後、僕は恥ずかしさで倒れてしまうかという思いで和に今更の告白をして、和に泣かれてしまった。
そして、変わらず僕と和は仲良くしている。
「すみません。ちょっと道をお尋ねしたいのですが」
そう言って地図を持って少女が近づいてきた。
「...いいよ」
「えっと、ここに行きたいんですけど。どの方法が一番いいんですか?」
<良かった。多分会えると思ってたけど、ちゃんと会えた。ごめんね、忙しいのに>
「ここ?そうだねー。やっぱ、地下鉄かな?」
<いや、僕自身は忙しくないから。で、何か困ったことかい?>
僕に声を掛けてきたのは秋野の参の姫こと、恵だった。
恵はテレパシーを飛ばせない。でも、媒体があれば頭の中で話が出来る。糸電話と同じ仕組みだな、と僕は思っている。
今回はこの地図。この地図を僕も恵も触っているからそれを通して話が出来るのだ。
「地下鉄かぁ。分かりました」
<うん、ちょっと困っちゃって。手伝って欲しいんだけど。臣くんにもお願いしようと思ってるんだ。もし良かったら、今日。うちに来てくれない?詳しいことはそこで話すから>
「駅3つ過ぎたところだからね?」
<了解。僕と兄さんに話が来るってことは、望たちには難しい方面のことだよね?>
「はい、ありがとうございました」
<うん、そうだよ>
「気をつけてね」
<じゃあ、またあとでね>
そう会話をして恵と別れた。
恵たちはよく僕と兄さんの力も貸してくれと要請してくる。
望と要に霊感がないから。
それについては望たちも諦めている。
兄さんに聞いたことがある。
ガードをしている人間は、自分以外の人を頼られると結構ショックなんだそうだ。
望たちもそういう気持ちがあるのかもしれない。
それでも、自分たちは力になれないから、というコトで僕たちに恵たちを託しているんだと思う。
結構責任重大だったりする。
僕が持って生まれたこの力は多分『普通』じゃない。
これでも一応、困ることもあるけど、でも、僕にとっては宝物だ。
旦那様が言ったそうだ。
『全ての人は神様に祝福されて生まれて来る』と。
だったら、僕たちのこの力はきっと神様がくれた『オマケ』なんだろう。
ちょっと多めのお祝い。
それくらいの気持ちで受け取ればきっと心が楽になると思う。
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