| 朝食が済んで歯を磨きながら何となく点けているテレビを見ていた。 「いいなぁ、これ...」という呟きが耳に入る。 口を漱いでリビングに戻り「さっきの」と呟きを発したに声を掛けてみた。 「ん?」と彼女が振り返る。 「てか、ちゃんはそろそろ時間なんじゃ...」 テレビでは今日の星座占いが流れ始めた。彼女は大抵これが始まると玄関に向かう。 「あ、言ってなかったっけ。今日は遅番」 なるほど... 時間にきっちりしている彼女がゆっくりしているわけだ。 「じゃあ、もうちょっとラブラブできるなー」 「そっちはもう時間でしょう?」 そう言いながらカレンダーを指差す。 まあ、そうなのだが... 本日から遠征が始まる。ホームでの試合は当分無い。 スーツに着替えてバッグを肩に掛ける。 「やっぱ、スーツは魔法だね」 見送りに玄関までやってきたが笑いながらいう。 「惚れ直してる?」 「そんな感じ」と軽く流しながら彼女は答え、「ネクタイが曲がってる」と手を伸ばしてきた。 ネクタイを直してもらって、彼女のおでこにキスをして「いってきまーす」と石神は家を出て行く。 「有里ちゃん」 クラブハウスに着いて有里に声を掛けた。 「おはようございます」 「おはよう。ね、最近コンビニで新しいスイーツ出た?」 突然の話題に有里は驚き、そんなものあったかなと悩み始める。 「何だ、石神。また彼女に食べさせるのか。太るって怒らないのか、えーと、ちゃんだっけ?」 廊下で話をしていたので、傍を通った丹波が話題に入ってきた。 「ちゃんは体質みたいですよ、太らないって」 「羨ましい...」 唸る有里に笑って「有里も太ってねぇだろ」と丹波が言う。 「というか、石神さんって彼女いたんですね」 「結構長いよな?お前にしては」 「丹さん、そんな言い方されたら俺が遊び人みたいじゃないですか」 笑いながら石神が返して「『みたい』じゃないだろう」と丹波も笑う。 「石神さんの彼女さんが、コンビニスイーツ大好きなんですね」 「コンビニスイーツって言うか、食べるのが好きみたいでね。今日もテレビを見ながら『いいなぁ』って言ってたんだけど、俺、丁度見てなくて。有里ちゃんなら知ってるかなって思ったんだけど」 「CM?」と丹波が聞く。 「いや、たぶん番組のコーナーでランキングをしてたんだと思います。テキトーに見てたんで全く覚えていません」 「ばっかだなー。アレだけ食べるのが好きな彼女が傍にいるんだから。そういうのはちゃんとチェックしないと」 丹波の言葉に「今猛烈に後悔中です」と笑いながら石神が返す。 そして2人は有里を見た。 「ごめんなさい、すぐにはわからないです。けど、ウチの母もそういう朝の情報番組を見るの好きだから聞いてみます。期待はしないでくださいね」 有里の言葉に「ありがとう」と返して石神はその場を離れた。 も仕事をしているので、普段から中々ゆっくり時間をとることができない。 いつもはそれがちょっとつまらないものなのだが、今は幸いだなぁと思いながら石神はせっせとコンビニに通った。 一瞬だけ映像を見たので、その記憶を頼りに色んな店舗を巡る。 面白がって後輩たちまで探し始めたので諦めるに諦められない。 「お、ちゃんじゃん」 練習から上がるときに、サポーターのほうを見ていた丹波が呟く。 周囲がサポーターたちに顔を向けた。 「どれっスか」 「あのポニテ。ちっこい子」 「な!?ガミさん!!犯罪っスよ!!」 「お前らよか年上だよ」 騒ぐ後輩たちに笑って石神はクラブハウスの中に入った。 ロッカールームで着替えて出口に向かうところで向こうから有里が駆けてきた。 「石神さん、彼女さんが来てるって本当ですか?」 「情報が早いね」 苦笑しながら有里の言葉に頷く。耳が早い有里もそうだが、吹聴したのは誰だ。 「丹波さんから聞きました」 「...あの人かよ」 何となくそうでないかとは思ったけど... 「あ、あと。たぶん、これじゃないですか」 そう言って有里がコンビニの袋を渡してきた。 「あ、こんな感じ。凄い。ありがとう、有里ちゃん」 「えーと、それ」と有里が言いにくそうに口を開いた。 「俺が見つけたんだ」 後ろから声を掛けられて振り返る。 ニヒーと笑っている達海に思わず頬が引きつる。 「どうも」と言うと「石神の意外な面を見た気分だよ」と笑いながらいなくなった。 「監督が...」 「あの人、しょっちゅう買い食いしてるから知ってるかと思って。ごめんなさい」 「...ま、いいけどね。そのお陰でこれが手に入ったんだし。結果オーライってことで」 笑いながらそう返してクラブハウスを後にした。 「ちゃん、今日来てたんだな」 家に帰ってに言う。 「あ、うん。近くに寄ったもんだから、つい。丹波さんに手を振られてたよ」 笑いながら返すに苦笑して「はい、お土産」とコンビニの袋を出した。 あれから結構時間が掛かってるから職場とかで食べたかもしれないが... 「わ!凄い。どこにあったの?」 嬉しそうにそれを取り出す。 「わかんない。監督が見つけてくれた」 石神の言葉にの手が止まる。 「監督...?」 「あー、うん。フロントの女の子に協力を仰いだらその子が協力を仰いだ相手が監督だったみたい」 石神の言葉に彼女は頭を抱えた。 「どうかした?」 「わたし、監督さんに『食いしん坊』って思われたんじゃ...」 覗うように石神に向かってそう言う。 「あー、それはあるかも。ま、良いじゃん。俺の彼女が食いしん坊でも、スタメン外される理由にはなんないって」 一度大きく溜息をついて「そだね」と気持ちを切り替えたらしいは早速石神が持って帰ったスイーツに手を伸ばす。 ニコニコとそれを食べている彼女を見ているとこちらまで幸せになってくる。 頬杖をついてそれを眺める石神に彼女は「はい、あーん」と一口おすそ分けしてくれた。 自分にはちょっと甘すぎるが、彼女にとっては丁度良いらしい。 「美味しい!幸せ!!ありがとう」 笑顔でそう言う彼女にニコリと微笑んで石神は「どういたしまして」と返した。 |
桜風
11.5.3
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