| 日が沈んで空には月が浮かんでいる。 先ほど食事を済ませて車で帰宅しているところだった。 (久しぶりに会ったと言うのに、は変わらないなぁ...) 赤崎は車を運転している恋人をチラと見た。 「何?美人だって見とれてる?いやぁ、照れるねー」 「ジイシキカジョー」 呆れた声で赤崎が返す。 「おや、酷い」 クツクツと笑いながら彼女は安定した運転を見せていた。 「ところで、遼」 「なに?」 「あたしにプロポーズされるのと、自分でするのどっちが良い?」 「はあ?!」 彼女の言葉に思わず頓狂な声を上げた。 唐突に、脈絡のないことを口にするのは彼女の悪い癖だが、これは唐突過ぎる。 「何、その二択...」 (てか、バレてる?!) 此処最近、彼女との結婚は意識していることは否定できない。だが、ちょっと早いかなと思っていることもあって、それはおくびにも出していない。...つもりだ。 だって、自分はまだ21だし。ちなみに、彼女は2つ上の23だ。そんな焦る年でもないだろう。 なのに、彼女は突然あんなことを言ったのだ。 「二択じゃ不満?」 「や、不満...てか」 (その二択以外に何があるんだよ) 赤崎は心の中でそっと突っ込みを入れた。 そんな赤崎の言葉にはニヤリと笑い、ラジオのチューニングを今流しているFMからAMに変えた。 「なに」 と赤崎が警戒する。 のこの表情は、基本的に赤崎が不利になる何かがあるときだ。 「何って?」 とぼける彼女の表情に、さらに不安が募る。 「遼、次のホームゲームっていつ?」 「当分アウェーだけど、何?」 「ホームとアウェーってやっぱり違うもん?」 「そりゃ、サポーターの数とか、ピッチコンディションも慣れてないから動きもいつもと違うし。てか、突然なんだよ」 「ん?時間稼ぎ」 そう言って彼女は笑う。 何の時間稼ぎか、赤崎の不安は募る一方だ。 「お!」とが声を漏らして指をパチンと鳴らした。 突然赤崎の携帯が鳴る。 「何だ、これ」 知らない番号だった。 「出て」 「はあ?!」 「ほら、出る!良いから!!」 そういわれて赤崎は渋々知らない番号の電話に出た。一応、固定電話のようだから出てみることにしたのだ。 すると、電話をかけてきたのは慣れなれしく話しかけてくる。 そして、相手が言った言葉に赤崎は「はあ?!」と声を上げた。 『では、確かにさんからの言葉をお届けしましたよ』 そう言って電話が切れ、そして、車内に流れているラジオでは『以上、言葉の宅急便のコーナーでした』と男が言ってCMに入った。 そのラジオから流れていた男の声は、先程赤崎に電話をかけてきた男と同じで、は「あっはっはー!」と笑っている。 「...」 「二択は不満だったみたいだし?」 勝ち誇ったように彼女が言う。 「読まれるって分かってたのか?」 「ううん。けど、あたしの引きの強さ、遼は知ってんでしょ?」 パチンとウィンクした。 “言葉の宅急便”というコーナーは、リスナーが誰かに伝えたいと思っている言葉をDJが代わりに伝えると言うコーナーで、何より、相手に直接伝えるものなのだ。 そして、先ほど赤崎が伝えられたのは、勿論からの言葉で... 「けど、さっきの二択のままだろう。俺からか、からか。間にさっきのDJが入ったけど、その言葉がからだ」 「お、鋭い。もうちょっとあたふたしてくれると思ったのに」 (してるよ、かなり!) 憮然としている赤崎を見ては愉快そうに微笑んだ。 そのの余裕の笑みが気に入らない赤崎は反撃を試みた。 「」 「はいはい?」 「結婚しよう」 「0点。ムードなさ過ぎ、やっつけ感ありあり。...宿題ね」 つれなくそう返したの目元が少し赤いことに気が付いた赤崎は苦笑を漏らす。 「了解」 「...ヨロシク」 |
桜風
12.5.22
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