アイコトバ 2





」と呼び止められて振り返る。

「ああ、村越さん」

こちらに向かっている村越に足を向けた。

「何ですか?」

「フロントは今どんな動きをしてる?次に来る監督はまともなのか?」

そう聞かれては天井を見上げて「微妙...」と答えた。

「おい」と責めるように村越が言う。

「うーん、何と言うか。ごめんなさい。わたしは腹を括ったし、これしかないかもって思ってるから納得できる。けど、他の人まで納得できるかは分からないんです。そもそも、後藤さんがその人を見つけられるのかどうかも...」

そう言って村越を見上げた。

「ごめんなさい、まだ確定していないし。どう転ぶか分からないってのが今の状況なんです。選手の皆さん..特に村越さんに負担をかけるのが本当に申し訳ないんですけど」と言って深く頭を下げた。

「あ、いや...」

こんな下っ端のに言っても仕方ないのは自分でも分かっていたはずだ。

「俺のほうこそ、悪い」と謝る村越を困ったような表情では見上げた。

「そいつ、日本人なのか?」

「後藤さんがその人を見つけれたら。はい」

「この前の、」と村越が話を変えた様子を見せる。

「お前は充分に役割を果たしてたからな。そう引きずるな」

きょとんとして、そして何のことか気が付いたは苦笑した。正直、あのときはズーンと落ち込んだが、結構早く復活したと思っていた。

今ちょっとテンションが上がらないのは、別の理由なのだ。

でも、この村越の言葉でもしかしたら周囲に心配をかけていたのかもしれないという自覚はできた。

「ありがとうございます」

「あ、いや...じゃあな」

少しバツが悪そうに村越はその場を去っていく。


「アイツも不器用だからなー」と代わりに姿を現したのは緑川だった。

「ものっすごくいい人なのは分かってるんですけどね...」

緑川の意見に同意しては頷いた。

「で?誰??」

「...緑川さんの口の堅さを信じますよ?」

が言うと彼はゆっくり頷いた。

「見つけることが出来れば、10年前のETUのエースです」

緑川も驚いたらしく目を瞠る。

「そりゃ、難しい表情にもなるだろうな...」

「ただ、住所も何もない葉書で『イングランドで監督をしている』って一言かかれたものが来ただけなので見つけられるかどうか...」

それはそれで途方もないことだ。彼がダメだった場合の次善の策はあるのだろうが、それにしたってリスクが高いだろう。

ちゃん的にはどうなんだ?」

「次期監督候補の人ですか?」

緑川は頷く。彼女はずっとこのETUを応援してきたと聞いたことがある。だから、その昔のエースの帰還をどう思っているのか少し興味ある。

「複雑だけど...うん。もう腹括っちゃったので、文句をずげずげ言いながら仕事しようと思ってます。広報部として」

笑顔で答えたに緑川は苦笑した。

おそらく、彼が帰ってきたらフロント側もかなり大変なことになるような気がする。

気がするが、まあ、それも含めてフロントが決めたことなのだ。

「体壊すなよ」

「有里ちゃんがいないから、2人分は働かなきゃならないんです」

笑いながら返すはぺこりと会釈をしてそのまま広報部へと戻っていった。

「さてさて、どうなることやら...」

この先に待っているであろうひと波乱を思い浮かべて緑川は息を吐く。

ま、なるようになるし、ならなきゃ困る。

逆に、村越が少し心配だなーと思いながら玄関に向かった。









桜風
10.7.3


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