アイコトバ 7





が練習場の傍を歩いているとボールがころころと転がってきた。

キョロキョロと見ると良く見学に来る子どもたちが思わず落としてしまったらしい。

「すみません」と一人が言う。

はボールを足で軽く上げて甲に置いた。

「おお!すげー!!」

と子供達が歓声を上げた。

ちょっと気を良くしたはリフティングを始める。

練習が始まる前でジャージ姿の選手達がの傍を歩いていく。「上手いじゃん」とか声をかけながら。

ふと、目があったのは赤崎で。

「赤崎くん、ちょっとジャージ借りていい?」

が言うと彼は着ていたそれを脱いでに渡した。

「寒くない?大丈夫?」

「ウス」と頷く赤崎のジャージを羽織る。

目を丸くしての様子を見る赤崎を気にせずに前も閉めてボールを軽く上げた。

肩や背中も使ってのリフティングだ。

パンツは仕方ないが、上はガードしたいと思っていたところの赤崎で、借りることにしたのだ。

赤崎自身、のボール捌きに驚いていた。彼女がサッカーファンなのは知っていたが、自分でもここまでやるとは...

何より、楽しそうにしているその表情が印象的だった。


さーん!ごめん、電話出てーーー!!」

広報部の窓を開けて有里が叫ぶ。

どうも英語でもない外国語が受話器の向こうに待っているらしい。

「はーい!」と返してジャージを脱ぎ、赤崎に「洗って返した方が良いとは思ってるんだけど」と言う。

「いいっスよ。オレ、この後も着ますから」と言って赤崎はからそれを受け取った。

「ね、名前は」と少年に声をかける。

「幸太。田沼幸太」

「コータくん、両手を出して。そう」

幸太の両掌を上に向けて出させ、はヒールキックでボールを蹴り上げて幸太の掌の真上にそれを落とした。

またしても子供達の間から歓声が上がる。

「じゃ、これからもETUの応援、よろしくお願いします」

「お姉ちゃん、またリフティング見せて!一緒にサッカーしようよ!!」

「時間があったらね」

そう返しては駆け出した。

駆け出したが、どう見ても早歩きである。

「おー!亀だ、亀!!はっはっはー!走れー」

珍しく早めにグラウンドに出ていた達海がからかう。

「うっさい!」と声には出さず、口を動かしては頑張って走った。

赤崎も駆けてグランドに向かった。

とりあえず、このジャージ。洗いたくないんだけど...

そんなことを思った自分にげんなりする。


「Hello」

電話の向こうが何語なのか分からないため、まずは英語。

向こうが話し始めてはそちらの言語に切り替える。

さんいなかったら大変だー...」

居なかったら居なかったなりの運営があるが、彼女が居ることに慣れてたこのチームはもう彼女抜きは難しい。

有里は尊敬の眼差しを送りつつ、の電話が終わるのを待った。









桜風
10.7.24


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