アイコトバ 14





ホワイトボードに連絡事項を書き込んでグラウンドに向かった。

「ちわス」

「ウス」

丁度練習に出てきた選手達と鉢合う。

「Hello」と返したに皆は苦笑した。慣れてるけど、まあ、いいけど...

「めーっけ」と声がして、はあからさまに嫌そうな顔をする。

「今度は何をたくらんでるんですか?」

顔を見るなりそう言うに達海は苦笑した。

「お使い、頼める?」

「またアイスですか?!」

眉間に皺を寄せて言うに達海は「んーにゃ」と首を横に振る。

「これ」と差し出されたメモを見ては首を傾げた。

「食堂のおばちゃんに計算してもらったから正確だと思う。100人分。お前ら、カレー好き?」

選手達に向かってそう言う。

彼らは困惑しつつも肯定の返事をした。「んじゃ、いいや」と満足げに言う達海に「これ、広報部通しました?」と返す。

「んー?」

「100人分ってさっき言ったでしょ?誰か呼ぶんですよね?」

「鋭いなー。このクラブやめて探偵に転職したら?真実はいつもひとつ」

「わたしはまだ当分このクラブに所属し続ける予定です」

眉間に皺を寄せながらがいう。

「なあ、

「何ですか?」

「村越」と言いながら達海はの眉間をぐりぐり押した。

「誰のせいでしょうかねー。あー、ホントに誰のせいかしら?」

「んじゃ、お使いよろしく。それ、後藤が良いって言ったから。ちゃんとそいつら連れてけよー。さすがの怪力でも明日腕が筋肉痛になるだろうしなー」

「誰が怪力だ!」と返しつつも、GMが良いって言ったのならまあ、仕方ないと納得してその場に鉢合わせてしまった選手達に「ご愁傷様」と一言向けて歩き出す。


「あれ?日本語スか?」

世良がに並んで歩き出す。

「んー?まあ、ね。外だし。皆も不運よね」

そう言って振り返る。皆複雑な表情を浮かべたが独りだけラッキーだと思っている人が居た。

「あー、いや。そうだ。俺、うん!じゃ!!」

何か思いついたように世良が回れ右をしたが、がジャージを掴む。

世良と同じく気を利かせようとしたメンバーのジャージも同様だ。

「何処へ行くんですかねー?」

「いや、うん。ほら、ね?」

「あのね?赤崎くんがどんなにフィジカル鍛えてても、普段使わない筋肉を使ったらやっぱり体に負担になるでしょう?100人分の材料だよ?さすがに赤崎くんの負担軽減を考えてわたしが頑張ってもムリ。付き合いなさい」

ずいと迫って言うに「ウス」と世良は観念した。

少し残念だったような、まあこんなもんだろうと思いながら赤崎は彼らの後ろをのんびり歩いた。


商店街でが買い物を始める。

お使いをするときはここまで足を伸ばしている。結構割安なのだ。

の顔を見るなりサービスをしてくれるお店すらあった。しかし、一緒に来ているのが選手と分かった途端「誰が好みよー」とおばちゃんたちに責められて仕方ない。

曖昧に笑ってその場をやり過ごしたに皆は感心した。

あっという間に買い物が終わったのだ。

行く途中にそれぞれのお店に連絡を入れていたのも早く買い物が終わった理由のひとつだろう。


気が付くとは何も持っていない。

「ちょ、誰か何か頂戴よ」とが言うが「やー、これだけ男が居てさんに持ってもらうのはちょっと...」と世良が言う。

「生意気ー」と膨れるに皆は笑う。

「そういや、さん。さんって料理得意なんスか?」

聞かれたは空を見上げて、

「食べられるか、食べられないかって聞かれたら..食べられると思う」

と微妙な答えを返す。

「それって、美味いんスか?」

「不味くない、ってところでしょう。というか、味覚なんて人それぞれだし」

はよく話をはぐらかす。

「じゃあ、さんって今までどんな人と付き合ってたんスか?」

ああ、日本語での会話、素晴らしい!!

世良はそんなことを思いながらチラと少し後ろを歩いている赤崎を見た。物凄く興味を引かれているらしい。

いつもこんなに素直なら可愛いのに...

でも、まあ。意外なことに赤崎はどうにもと会話をするのが苦手らしいから、と世良はお兄さんぶってみた。

「そうねー...」そうもったいぶってが口を開いた。



「そっかー、世良くんが今まで付き合った子って髪が長い子が多かったんだねー。というか、年下が好きだなんて意外だな。あ、安心して。ウェブには載せないから」

あ、あれ?

世良は首を傾げた。

いつの間にか自分の話になって、聞かれるままに答えてしまっていた。

「あれ?」

「いやー、人に恋愛観を聞かれるって恥ずかしいもんだな」

一緒に歩いていた矢野が笑いながらそう言う。

「あれ?え??」

「世良くん、忘れていないでしょうか。わたくし、広報担当で、こちらには語学力を買われて入社いたしました」

笑いながらが言う。

「ま、わたしが本気を出せば世良くんの過去は丸裸よ。ちなみに、黒田さんももう丸裸」

勝ち誇ったようにそういった。

「みんなも気をつけてね。わたしの過去を聞きだそうとしたら、その前に自分が丸裸にされるから」

一緒に歩いている選手達に声をかけた。

それは勘弁して欲しい...

赤崎はそっと溜息を吐いた。役に立たなかった先輩と、あまり深く突っ込まれたら色々と困る自分の心情に。

戻ると中から食堂のオバちゃんと有里が出てきた。

さん、聞いてた?!これ、広報通してないよね?!」

有里に詰め寄られ、は苦笑する。

「でも、後藤さんがOKだしたらしいよ?」

「えー?!なんで広報を通さずに??後藤さんは?」

「用事があるとかでさっき出てったはずだけど...」

が答えると「部長はともかく、私とさんには声をかけてほしいわよ!」と有里は文句を言いつつ食堂へと向かった。

「お疲れ様」

一緒に買い物に行った選手達にそう声をかける。

「ウス」とそれぞれが返事をして、彼らも食堂に向かった。

その場を離れ難かったのか、赤崎が出遅れていた。

「ほら、赤崎くんも行こう。まずくないカレーを作らなきゃ!」

「ウス」

に声をかけられた赤崎は少し笑って頷いた。









桜風
10.8.14


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