アイコトバ 15





別のグループは駅前に行ってチラシを配ったらしい。

カレーを作りながらそんな話を聞いた。

一体何がしたいのかなー...

こんなに大量のカレーなんて作ったことがないが、中々達成感のある仕事であると思う。


ふと気が付くと外が騒がしくなる。

「おーい、みんな来ちゃったよー」

達海が声をかけてきた。

「みんな?」

「地元の、このクラブのサポーター」

「よーし、これくらいでいいわよー。外に運びましょう!!」

食堂のオバちゃんの号令を聞いて選手達が鍋を外に運び出す。

「火傷、気をつけね」

声をかけるに「ウス」とみな返事をする。

。お前、良かったのか?」

そう声をかけて来たのは村越だ。

「まあ、大量に作るならカレーかトン汁だろうし。今の時期ならカレーしかないでしょう。食べるつもりは最初からなかったし」

の言葉に「そうか」と返して村越は外に向かっていった。

「どうかしたんスか?」

「It's nothing」

はそう返して外に向かい、置いていかれそうになった赤崎は慌てての後を追った。


外に出るとチラシを手にした地元の人たちが来ていた。

カレーパーティは大盛況のようだ。

「あ、姉ちゃん!!」

頻繁に練習を見に来ている子供達がの姿を見つけて駆けてきた。

「なあ、これ姉ちゃんも作ったの?」

「うん。選手も、食堂のオバちゃんも。フロントも皆で作ったからたくさん食べてね」

膝を折ってそう声をかける。

「あ!赤崎選手、サイン頂戴!!」

子供達にサインをねだられる赤崎に「モテモテね」と声をかけてはカレー鍋に向かっていった。

「代わりましょう」と言ってご飯にカレーをよそう係を引き受けた。

意外なことにのファンも居るらしい。

広報の顔は有里だが、練習場にくれば時々そこらへんを歩いているから顔を見たことのある人は少なくない。


少しして皆の食欲が落ち着いたところを見計らっては席を外した。

携帯を取り出して電話をしてみる。

『はい』と出てきたのは羽田で、「です」とが名乗った。

『おう。どうした?』

「今大丈夫?」

『仕事中だが、どうした?』

「あー、そっか。今、クラブハウスでカレーパーティしてるんだけど、地元の人たちとの交流って感じで。どうかなって思ったから」

『そりゃ、残念。悪いな』

「うん、こっちこそ」と言っては通話を切った。

確かに、アウェイにも必ずきてくれているから資金繰りが大変なのだろう。仕事をしないと旅費が出ない。それ以外にも旗を作ったり色々とある。

携帯を閉じてふと見上げるとクラブハウスの屋上に人影があった。


「で?今回のこれは何だったんですか?」

梯子を使って上ったは屋上に居た達海に声をかけた。

「んー?あ、お替り」

「自分で行ってください」

が答えると「ケチー」と返す。

「...いいチームだよな」

不意に聞かれて「まあ、ね」とは頷く。

「この後練習するんですか?」

「まあ、軽くねー。次の試合のスタメン、今日のこれで何となく決まったし」

「...堀田さん。丹波さん。あと..石神さん?」

が言うと達海はじっと彼女を見た後「うん、そんなとこ」と返した。

ちゃん!」

梯子の下から声がした。

梯子に足をかけたまま達海と会話をしていたは体を捻って見下ろす。

「後藤さん」

「そこに達海が居るんだな?」

言われて頷き、はとりあえず梯子を上りきった。

後藤が慌てて上ってくる。

「これは一体なんだ、達海。何かあったらどうするつもりなんだ」

そう言って迫る後藤にのらりくらりで達海は答える。何もない。皆でカレーを食べているだけだ、と。

「あれ?後藤さんが良いって言ったって...」

「言ったよな。カレー奢ってって。はい、レシート」

あれ?カレーパーティの話まではしていなかったのか?

「しかし、ちゃん。大丈夫か?」

「ん?なんかあんの?」

ちゃんはカレーが苦手なんだ。な?」

そういわれては苦笑しながら頷く。

「え?そうなの?嫌いな人いないって思って、カレーにしたのに。わりぃ」

謝る達海には首を振る。

「さっき、村越さんにも聞かれました。まあ、良いんじゃないですか?わたしが食べなきゃ済む話ですし。みんな喜んでたし」

そう答えるに「よし!」と達海が声を上げて立ち上がる。

「俺の取って置きの..ポテチをやろう」

「いりません」

冷ややかに返しては屋上から降りることにした。

「えー、美味いよ?」

「じゃあ、ご自分で食べてください!」


」と練習が終わって着替えた村越に声をかけられた。

「はい?」

「これをやる」

そう言って渡されたのはチョコレートだった。

「今日の、さっきのでもらったんだ」

「もらったのは村越さんでしょう?」

「カレーのお礼って言われたから別に俺じゃなくても良い。食っとけ。腹減ってるだろう」

「ありがとうございます」

お礼を言ったに対して少し表情を緩めた村越は「じゃあな」と帰っていく。

「んー、やられた」と呟くのはその様子を見ていた達海で、別の場所では蒼くなった赤崎が呆然としていたという目撃談があった。









桜風
10.8.14


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