| 病院での診断はやはり骨折だった。 しゅんとするに後藤はどう言ったものかと悩む。 電球の取替えくらい声をかけてくれればよかったのに、とも思ったが声をかけなかったなりの理由があるのだろう。 まあ、ウチのスタッフの女性陣は働き者だしな... 「ちゃん」 「はい」とうな垂れて返事をするに「明日から俺が送り迎えするよ」と後藤が言う。 「へ?!いや、大丈夫ですよ!!」 「ちゃんの家って場所的に半端なところにあるんだろう?」 だから、自転車通勤をしていると本人が前に言っていた。 「えーと、でも。時間を掛けて松葉杖をついて...」 「うん、疲れるね」 ばっさりそう言われてその通りだと頷く。 「どうせ通り道なんだから。朝は何時に迎えに行こうか?」 「...後藤さんの都合のいい時間で良いです。ごめんなさい」 うーん、こんなにへこまれるとは... ちょっと困った後藤はさて、どうしたら良いんだろうと少し悩む。 家に帰った赤崎は携帯をじっと見つめて溜息を吐くという行動を延々と繰り返していた。 緊急事態だったとはいえ、怒鳴ってしまった。 それが気になって仕方ない。 後藤に運ばれていったが気に入らないというか、そういう気持ちもある。 結局、怪我の状態はどうだったのだろうか... 色々とそういったことが頭の中を渦巻いて何にも手につかない状況だ。 突然携帯が鳴って赤崎は慌てて通話ボタンを押した。誰から、というのを確認し忘れたくらいに驚いた。 『もしもし』と言う声で電話が誰からかかってきたものかと言うのがわかった。 「どうでした?」 『骨折。っていってもひびなんだけど...今日はごめんね』 と先に謝られてこれまたちょっと悔しい。 怒鳴ったのは自分なのだから自分から謝るべきだろう。 「オレのほうこそ、すんませんした。明日から仕事、どうするんですか?」 彼女は自転車通勤をしている。家が何処にあるのかまだ知らないが、自転車で通勤する程度は遠いのだろう。 何だったら車を出すけど、思いながら聞くと 『後藤さんが送迎してくれるって』と答えた後『あー...』と深い溜息を吐いた。 『有里ちゃんにも仕事頼まなきゃならなくなるし、この時期にこの怪我って皆に迷惑をかけるから、ホント..ああ...』 相当へこんでるらしい。 「いっつもすげー働いてるんスから良いじゃないですか」 『良くないよー...』 呟いてそう返すが何だか可愛くて噴出した。 『何で笑うかなー』 「すんません」 『じゃあ、ね。今日はありがとう』 はそう言って通話を切った。 まあ、今回の彼女の怪我は休めっていうことなんだろう。 そう納得して、彼女が怒っていないことも確認できた赤崎は安心して翌日を迎えた。 「つか...なんでそんなにバイタリティがあるんスか」 呆然と呟く赤崎に「んー?」とが返す。 松葉杖をついているのに、いつもどおりと殆ど変わらない活躍ぶりだ。目の前のは「気力でカバー」とか言って笑っている。 有里を見ると 「いや、『ETUのフロントたるもの、怪我なんかに負けてどうするか!』って昨晩思ったらしいの。それで、このように...」 「逆に怪我が治るのに時間が掛かるんじゃないスか?」 呆れて赤崎が言うが 「それも気力で何とかしてみよう!」 とは笑う。 しょんぼりされているより全然マシだが、このまま働いていると確実に怪我の治りは遅くなる。 には悪いが、彼女もそう若くないのだから。 彼女が10代の若者なら赤崎も気にしなかっただろうが... 「ちゃん!」 バリバリに働いているを見つけた後藤が駆け寄ってくる。 この場合は、後藤に託した方が良いだろう... 赤崎と有里は同じことを思ったらしく、後藤からの説教を食らっているを置いてその場を去ることにした。 |
桜風
10.8.28
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