アイコトバ 20





中断期間に入って一度主力選手たちが集まることとなった。

スポンサーの大江戸通運の広告の撮影に起用されたのだ。

広報としては此処は張り切らないわけには行かない、と有里大層張り切っている。

「有里ちゃん、元気ねー」

さん!!」

のんびり呟いた声が耳に届いたらしく、有里が声を上げる。

「あー、スミマセン」と小さくなるをニシシと笑って見ているのが達海だ。

「てか、俺本当に要るの?」

見上げる達海に対して応えたのは後藤だ。

うんうん、と頷きながらが相槌を打っていると「ちゃん」と営業が声をかけてきた。「はーい」と返事をしてが対応することとなった。


「何ですか?」

「はい、サンプル」

そう言って渡されたのは、がデザインしたパッカくんTシャツだ。

「うわぁ!もう出来たんですね」

念のために言っておくが、や達海の描いたあのヘンテコ妖怪ではなく、きちんとしたデザイナーに頼んで描いてもらった正真正銘のパッカくんだ。

「これこれ。こういう感じのを思い描いていたのよ。あのアーモンドのヘンテコ妖怪じゃなくて」

営業スタッフは思わす「ちゃんが描いたパッカくんも相当ヘンテコだったよね」と言いかけたが、此処で言ったらがどういう反応をするか分かっていたのでグッと我慢した。


広告の撮影が始まったところで、は有里に声をかけた。

どうやら大江戸通運の副社長も来ていたらしくて、さらに、達海が何か粗相をしたそうだ。

「まあ、達海さんがきちんとそういうの出来たら達海さんじゃないでしょう」

が言うと有里に「さん、意外と達海さんに甘い!!」とビシッと指をさされた。

というか、思い出してもらいたい。今までの達海のあちこちでの対応を。

最も苦労した有里はまだ諦めていないらしい。

「まあ、フォローもフロントの仕事でしょう」

と、いうか。後藤の...

「それより、例のサンプル届いたよ」

のいう『例の』が何か分からなかった有里は首を傾げたが「パッカくん」とが言うと「ホント?!」と興味を示した。

「後半からの販売にするけど、まずは広報でしょう」

が言うと、「だよね」と有里が頷く。

幸いにも、本日、いい素材が揃っている。

2人は顔を見合わせてニッと笑った。


撮影が終了して選手達がロッカールームに向かい始めた。

「はーい、ちょっとストップ願います」

選手達は有里の声に反応して振り返った。

「何だ?」

黒田が眉間に皺を寄せて足止めされた理由を問う。

「じゃーん!」と有里が見せたのはパッカくんTシャツだ。

「へえ?出来たのか」

興味を示した堀田に渡した。

「結構可愛いじゃん」と丹波も興味を示す。

「んで?」と黒田。

「ついでなので、此処で撮影します」

「は?!」

「うん、発売は後半に合わせるけど、ブログで宣伝しようってさんが。丁度いい素材が揃ってるし」

有里がそう言う。有里の後ろにはが高性能デジカメを持って現れた。

「え、さんがシャッター切るの?」

世良の言葉にはきょとんとした。

「だってぇ、ってゲイジュツの才能皆無じゃん」

と、達海。

の頬がピクリと反応した。

、ボクだけのポートレートとなると権利関係がちょっと面倒になるよ?】

ジーノが言うと【じゃあ、ジーノは良いや】とが返し、ジーノはウィンクしてロッカールームに向かった。

「え?!王子??」

椿が頭の上に『?』をたくさん浮かべる。イタリア語での会話だったから全く分からない。英語だったら少しくらいは..やっぱりわかんないだろうなと思った。

「何で王子返すの?!」

「権利関係がどうこうって話になるって言われたから」

有里の言葉にが返す。

って、意外とジーノを雑に扱うよなー」

達海の言葉に「そんなことないですよ。ウチのエースナンバー背負ってる人をそんな面倒だなんて...」とが返す。

面倒だと思ってるんだ...

皆は心の中で納得した。なのに、ジーノはのことをそれなりにお気に入りなのだから、ジーノの片思いか?

「で、えーと。写真スか?」

話を戻したのは赤崎だ。

「うん。はい、みんなじゃんけん」

「はあ?!」

一斉に声が上がる。

「あ、村越さんはじゃんけんに加わらなくて良いですよ」

の言葉に村越は安心したように息を吐いた。

「もう村越さんにモデルしてもらうのは決定なので」と続けられて「は?!」と声を上げたのは無理からぬことだ。

「おねがいします」とニコリとに微笑まれ、諦めたように溜息を吐いてそれが返答となった。

「はい、あと色違いで1着あるからね。フリーサイズなので、緑川さんだろうと、杉江さんだろうと世良君だろうと入ります」

「なんで俺の名前入れるの?!」と有里に抗議の声を上げたのは世良だが、有里は答えない。

じゃんけんしなきゃいけないチームメイトを横目に見ながら「Tシャツ、どれだ?」と村越がに問う。

「チームカラーってことで赤と黒があるんですけど、どっちが良いですか?」

「じゃあ、黒」と村越が答えるのと同時に「なら、赤崎と黒田にすりゃ良いじゃん」と達海が提案する。

「は?!」と周囲は眉を顰めた。

「ほら、ダジャレで」と達海が言う。

「なんだよ、そりゃあ!!」と抗議の声を上げる黒田に「そうっスよ」と赤崎。

しかし、と有里は同時にぽんと手を叩いた。

「珍しく悪くないことを言いますねー」とがいい、「じゃあ、黒田さん、赤崎君、よろしく」と有里が続ける。

「じゃあなー」とモデルを逃れたメンバーはそれぞれ晴れやかな表情でその場を去っていった。









桜風
10.9.4


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