アイコトバ 23





は電車に揺られてある場所を目指した。

もしかしたら入れ違いになるかもしれない。そのときは有里が携帯に連絡をくれるだろう。

スタジアムについて会場を見渡す。

「...居た」

ほっとしてそう呟き、は達海と笠野の元へと向かった。


「達海さーん。場所。書置きには場所を書いてくださいねー。書置きを見たスタッフの間では『達海猛失踪事件』って状態になってますよ」

目が笑っていないの笑顔に達海は一歩後ずさる。

「笠野さん、お久しぶりです。そろそろチームが見たくなりませんか?」

はそう言って笑った。今度は本物の笑顔だ。

「だな」と頷いて笠野が立ち上がる。

「明日からの合宿は同席させてもらうよ」

「皆張り切りますね」

笑ってが答えた。

は、俺の見込んだフロントだからな」

不意にそういわれてきょとんとした。

「どうしたんですか?ビックリしますよ」

の問いには答えず笠野は目じりに深い皺を刻んだ。


電車に揺られながらホームタウンを目指す。

「そうそう、

「なんですか?」

達海に声をかけられては返事をする。

「お前、今実家出てるって聞いたけど?」

「ええ、出てます」

「今住んでるところにスパイクあるか?」

「スパイク?いえ。だって、サッカーやめたのは小学校卒業時だからサイズが合いませんよ、さすがに」

「んじゃ、買ってきて」

何言ってんだ?

の眉間に深い皺が寄る。

「村越になってんぞ」

「村越さんもわたしも誰のせいで眉間に深い皺を刻んでるのでしょうか」

真顔でが返し「さあ?」とこれまた真顔で達海が返した。

「足に馴染むのに時間掛かると思うんですけど...」

「ま、そこは得意の気力でカバーしてよ」

いつから得意になったんだ...

はうな垂れた。


電車を降りてはスポーツ用品店に、達海と笠野はクラブに戻る予定だったが、2人ともついて来た。

「何でついてくるんですかー」と不満そうにが返す。

「んー、いや。選ぶの手伝ってやろうと思って」と達海。

「俺だけ戻ったら俺ひとりが怒られるだろう」と笠野。

何なんだ、この2人は...

はこれ見よがしな盛大な溜息を吐いた。

スポーツ用品店では、達海監修の下、サッカースパイクを購入した。

監修が達海であったこともその要因か知らないが、結構履き易いものだった。その分、値段もかなり良いものとなってしまったが...

「それで?わたしにスパイクを買わせてどうするんですか?皆と一緒に練習でもするんですかねー」

冗談で言った。は間違いなく冗談で言ったのだ。

「んー、まあ」とうやむやな返事をされて何だか嫌な予感がした。


クラブに帰ると笠野の帰還に皆が騒ぎ、達海は副会長と会長に小言を言われただけで終わった。

まあ、こっそり後藤から説教されたかもしれないが...

さん。準備できたと思うから一緒に確認して」

そう声をかけた有里はがスポーツ用品店の袋を持っていることに気が付く。

「どうしたの、それ」

「さあ?」

首を傾げるに同じく有里も首を傾げ、まあ今はやらなきゃいけないことがあるんだしと思い出してそちらを片付けることに気持ちを向ける。

当然、帰ってきた達海にも文句を言う。合宿で使う道具の確認が出来ていないので、これからしなくてはならないのだ。

「なーんか、嫌な予感」

自分が手にしているスポーツ用品店の中身を思いながらは溜息を吐いた。










桜風
10.9.11


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