| 合宿に向かっている中、皆は気になっていた。 バスの中に物凄く珍しい人物が2人居た。 ひとりは、スカウトの笠野。そして、もうひとりはだ。 彼女はこういった長期にチームがクラブを空けるときにはクラブに残ることが多い。 理由は、広報部長が仕事をしないから。 というか、元々広報は有里とで持っているようなものだと以前他のスタッフから聞いている。 だから、2人が抜けるのは拙いのではなかろうかと思うのだ。 「、珍しいな」 「まあ...」 黒田が声をかけるとは曖昧に返す。 もしかしたら、夏の補強選手が外国人なのかもしれない。何となく皆はそう思った。 「どんなやつが来るんだよ」という黒田に、「さあ?」とも返す。 わざととぼけているのかと思えなくもないが、知らないのかもしれない。 「行ったら、きっと分かりますよ」 うんうん、と本人が頷いている。 「さん」と有里に呼ばれて「はーい」とは有里の元へと足を運ぶ。 合宿は今回も夢の島だ。 皆は荷物をホテルに置いてグラウンドに出た。 グラウンドには有里の姿はあるが、の姿はなかった。 ああ、やっぱり裏方なのかなと思っていた。 夕方、報道陣をシャットアウトして2時間練習を行うことになっている。 報道陣のシャットアウトの理由は、選手達もフロントも知らない。 知っているのは、達海と笠野と...だ。 報道陣をシャットアウトしてから出てきたのはジャージ姿のだった。 昼間は広報として色々と忙しそうにしていた。笠野と一緒にカキ氷を配ってみたり、ホテル側と話をしたり。勿論、そのときはジャージではない。 しかし、と皆は改めてを見る。 【?足元も、中々本格的だね】 からかうようにジーノが言う。 は苦笑して【どーも】と返した。 昨晩、合宿への準備が終了し、皆が帰宅した。 皆の帰宅を待って、は達海に言われたとおり買ったばかりのシューズを履いてピッチに立った。 「で?何をしろと??」 「んじゃ、俺がここに立ってるから。コーナー上げてみて」 達海はキーパーの位置に立っている。 「はあ?!」 「届くか届かないかを見たい。あとは、コントロール」 益々分からない。だが、達海はこういうときはまずやらせて、その後に種明かしをするタイプだ。 そう思って取り敢えず「ストレッチから始めて良いですか?」とは声を掛けた。 「あ、そだね。足を攣ったら大変だ。もトシだし」 「35歳のオッサンに言われたくないですよ」 そう返しながらストレッチを入念にする。その間の待ち時間については、達海は何も言ってこない。 しかし、他の話はずっとしてくる。チームの、選手達の話だ。 聞かれればは答える。 ふと、その話が途切れたところで 「何でそんなのを、わたしに聞くんですか?後藤さんのほうが元選手としての目線で話が合うんじゃないですか?」 と聞いてみた。 「でも、は今までずっと冷静にこのチームを見てきたからなー。選手としての目線は、俺でもいいけど。そうじゃない、当事者になったことのない目線の意見も欲しいの」 達海が言う。 「有里ちゃんでも良いんじゃないの?」 「有里はお前ほど冷静じゃない」 キッパリとそう言われて「買われてますね、わたし」と揶揄するように言うと「うん」と何事もないように達海が頷く。 「俺、結構のこと高く買ってると思うなー」 と言われては口を噤む。 「で、コーナーでしたっけ?」 ストレッチが終わってが言う。 「うん、取り敢えず、上げてみて」 言われたとおりはコーナーからボールを上げてみた。というか、直接ゴールを狙ってみた。 「うお?!」と声を漏らして達海は思わずそのボールをキャッチする。 「何で取るんですか。立ってるだけだって言ったじゃないですか」 不服を口にすると「仕方ないだろう、何かヤだったの!」と返された。 「んじゃ、次はニアで」 そう指示されたが「人が居ないと難しいですよ、コーナーは。達海さん、キーパー良いからどこら辺に上げたら良いから立ってください」とが言う。 まあ、確かに。PKならキーパー居た方が良いだろうが、コーナーは違うなと納得して数歩足を進める。 「んじゃ、ここら辺」 「足元?ヘッド??」 「まずは足元かな?」 そんな会話を繰り返しながら達海の要求したところには確実にボールを出していた。 「はーい、注目!」 選手達を前に達海がそう言う。 言われなくとも注目している。この状況が良く分からないのだから。 「これから2班に分かれてセットプレイの練習をします」 わかった。そこはわかった。 そう思って皆はを見る。 「ああ、1班はがコーナー上げてくれるから」 さらっと言う達海の言葉に皆は声を上げて驚く。 「ま、見てなって。コントロールだけならジーノと張るぜ?」 自信満々に言う達海を半眼で見たはそっと溜息を吐いた。 |
桜風
10.9.11
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