| 大人しくは赤崎に手を引かれながら歩いて皆の待つバーベキュー広場を目指した。 行きは椿が気を使って一生懸命話題を探していたが、帰りの赤崎はそう言ったことを気にしないようだ。 というか、手を引くと言うことは手を繋ぐと言うことで。これまた自分でもビックリな行動だったらしく、に気を使えていないと言うのが現状なのだ。 無言で歩いていると、突然手を引かれたようであり、赤崎が振り返るとが前のめりに倒れるところだった。 「さん!?」と慌てて彼女の体の下に入って支える。 の頭を自分の肩に載せるとくうくうと寝息が聞こえる。 「人って、歩きながら眠れるんだ...」 どうでもいいこととは分かっているが感心してしまい、思わず言葉が漏れた。 姿勢を変えてを背負う。 独りで人を背負うって難しいものだなとか、なるべく意識しないように考えて立ち上がる。 思った以上に軽くて、そしていい匂いがした。紛れもなく、は自分とは違う性別で、それなのに、同じように、もしかしたらそれ以上の運動量でこの合宿を過ごした。 ウチがもっと強いクラブチームだったら、フロントの方も強化して彼女がもっと楽が出来たのではないだろうかとか、そういったことまで考えてしまう。 「なあ、さん。オレ、何が出来る?」 口に出して問う。 彼女は既に夢の中なので、その答えはない。 「ずりぃスよ」 バーベキュー広場に着くと後藤が駆け寄ってくる。 「ちゃんは..寝てる?」 「人って歩きながら眠れるの、知ってましたか?」 赤崎が言うと 「物凄く疲れたときにはそうなるな」 と後藤が溜息を吐きながら返す。 赤崎が膝を折り、後藤もそれに合わせて膝をついた。 「監督から話があるそうだ。選手は会議室に集合と言っていた」 「ウス」と返事をして赤崎はこの合宿の間ミーティングに使っている会議室に向かって駆けた。 「後藤さん!」 遅れてやってきた有里に「部屋に運ぶからついてきて」といい、有里はの顔を覗きこむ。 「歩きながら寝たんだって」 「無茶しすぎですよ」 有里の言葉に後藤は苦笑した。 「ウチの女性陣はワーカーホリックだからな」 「私、ここまで酷くないです」 不満そうに言う有里に 「開幕前に倒れたのは誰だったかな?」 と後藤が悪戯っぽく言って有里はグッと詰まった。 「おー、帰ってきたな。んじゃ、合宿最後のミーティングだ。その前に、は?」 「歩きながら寝ました」 達海の問いに赤崎は簡潔に答える。 「ん、わかった。無事なんならいいや。えーと、な。実は、何回か練習に参加するのをやめるように後藤とか笠さんが声をかけたらしいんだけど、『大丈夫』の一点張りだったんだってな。『時間が惜しいから』って言ったそうなんだよな。選手はこの合宿で伸びるだけ伸びたいだろうからって」 そう言って皆の表情をゆっくりと見た。 選手達の間の空気はざわりと揺れる。確かに、自分達が彼女と練習をしていたときも、休憩は丁度良いときにあった。 「ま、その上広報の仕事もこなしていたし。俺としてもにはムリをさせたっていう自覚はある。正直、最終日まで持ってくれるとも思ってなかったしな」 そして、過去に笠野がチームを木に喩えたその内容を口にする。 「俺さ、思うんだよね」と言って達海は続ける。 合宿前に会長に話した言葉。 「組織として、個々が役割以上のことをどれだけ出来るか。それでチームの強さが違ってくる。FWは点を取る。DFはゴールを守る。それは最低限だ。フロントも同じ。だから、今回後藤にも走ってもらったし、にも手伝ってもらった。あの2人はそれだけの力があったから。 フロントが俺たちに何を期待していて、それがどれくらいか。もう、お前ら分かったよな。 ま、体調管理できていなかったには後で説教しておこうと思うけど。潰れたら意味ないし。 お前ら、自分のしなくちゃならないこと、出来ること。もう..わかるよな?」 達海の言葉に元気よく返事をする若手。声を出さずとも、眸で語るベテラン。 「うーし、いいチームだ」 満足げに呟いた達海は「んじゃ、解散」と言って会議室を出て行った。 ドアをノックする音がして有里が応じる。 「、どうだ?」 達海がドアの隙間から部屋の中を覗きながら言う。 「明日の朝には叩き起こすつもりですけど、今日はもう起きないと思います」 有里の言葉に「そっか」と達海が呟く。 「有里、マッサージできるっけ?」 「多少は...」 「んー、やっぱり頼んでくるわ」 そう言って回れ右をする達海に「達海さん!」と有里が声をかける。 振り返った達海は「このチーム、もっともっと強くなるよ」と言ってニッと笑い、そのまま有里の言葉を待たずに去っていった。 「勿論よ!」 達海の余裕の笑顔が悔しかったのか、有里はそう呟き、とりあえずの傍へと戻っていった。 |
桜風
10.9.25
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