アイコトバ 33





「ここで村越さんが日和ったらがっかりするわー...」

と有里が並んで歩きながらそう話していた。

「じゃあ、緑川さんは?」

「絶対来てくれる。助けてくれる!!」

が力強く宣言する。

「えーと。じゃあ、世良くん」

「うーん...」と暫く悩み、「頑張ってくれそうじゃない?」と返した。

それについては有里も同感らしく頷く。

「じゃあ、椿くん」

「世良くんと同じく。あ、でも、意外と平気かもよ?」

の言葉に有里が腕を組んで唸る。想像できないのだろう。

「他に..杉江さん」

「助けると思う。物凄く冷静に対処してくれる」

が問うと、有里が間髪入れずに返す。

「じゃあ..達海さんは?」と有里が言う。

は腕を組んで唸り、「行かないでしょう。まず」と答えた。

「かもねー...なら、赤崎くんは?」

これが本題、とばかりに有里が問うた。

「赤崎くん、難しいなぁ...」

が唸り始める。しかし、目の前の有里は「さんが助けてって言ったら何をおいてもダッシュで駆けつけるって」と心の中で答えを見出していた。


「何の話してんだ?」

声をかけてきたのは夏木だ。

「あー、これです。ウェブ掲載用のアンケートには入れなかったんだけど、気になって...」

夏の中断期間前に新たに質問を受け付けた。上期下期で質問を分けることにしていたのだ。

「ふーん、何々?
夜中、彼女の家にゴキブリが出ました。彼女からSOSの電話がかかってきました。どうしますか?
A 即行彼女の家に向かう。
B 「頑張れ」で終わる
C 聞かなかったことにする
んで?何で盛り上がってんだ?」

から受け取った用紙を返しながら夏木は不思議そうにした。

「勝手に予想してたんですよ。面白そうなので」

「ほー?で、俺は..「Aでしょ?」と夏木の言葉を遮ってが言う。

「お?は俺のファンかー。すまん!俺には綺麗な嫁さんと可愛い娘がいるんだ。諦めてくれ」

「寝言は寝てから言うものですよ」

真顔でが返す。

グッと詰まった夏木は押し黙る。普段会話をしないにばっさり切られてどう返して良いか分からないのだ。

「俺は、Aかな」と不意に頭上から声がしてが見上げた。緑川が覗き込んでいる。

「ですよねー」とが言う。

「ん?」と不思議そうにする緑川に「そう予想しました」とは笑った。

の答えに緑川は苦笑する。

「他のヤツは?」と興味を示した緑川に

「村越さんと、世良くんと椿くんと杉江さんはAだろうなーって。監督はB。赤崎くんが難しいなーって思って」

が返すと緑川も「最後のはもう決まりきってるだろう。相手が『彼女=』てのなら」とか思う。

「Aですよ」と声がした。

振り返ると赤崎と椿が立っている。

「そうか、赤崎くんはAか...」

納得したようには頷いた。

「ちなみに、さんはどのタイプ?」と有里が聞く。

「どのタイプって?え?彼氏から夜中に電話がかかってくるの?出ないよー。何時だと思ってるの」

真顔で返した。

有里と緑川は、赤崎の様子を気配で探る。何だか複雑そうだ。直視すると彼が嫌がるだろうからしないが...

「じゃ、なくて。助けを求めるかどうかってことの方だったんだけど」と有里が訂正した。

「あー、そうだなー...気にしないかな?」

「え?!イヤじゃないの?!あんな黒くてすばしっこくて突然飛ぶアレ。イヤじゃないの?!」

有里が信じられないという視線を向けてきた。

「んー、好きじゃないけど、夜中に騒ぐほどのことでもないかな、と」

赤崎、男を上げる機会がひとつ減ったことを知ったちょっと悲しい出来事だった。









桜風
10.10.9


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