アイコトバ 37





ウェブの更新作業を行っていたは「うーん」と唸り始める。

「どうしたんだい、ちゃん」

腕を組んで首を傾げて「うーん」と唸っているの後姿を目にした後藤が声をかけてきた。

「後藤さん。ちょっとウェブのトップの写真を更新したいなーって思って」

「これ、いい写真じゃないか。ちゃんが撮ったんだよな?」

はコクリと頷いた。

絵は苦手だが、写真は得意だ。ゲイジュツのセンスが無いと言うわけではないのだ。いや、そもそもあのときのパッカ君は自分の調子が悪かっただけで...

「新しいの、撮るのかい?」

「うーん。せっかく久しぶりにサポーターの方も盛り上がってきたので、サポーターに紛れてシャッター切って来たいなーって思ってるんですけど、大丈夫かなーって」

まあ、ならどこにでも溶け込めるだろう。

「いいと思うけど?」

「うーん、じゃあ。今度のホームのときに潜入してみようかなー...」

ブツブツ呟くに苦笑をして後藤はその場を離れた。

『潜入』って何だろう...


ー」

翌日の試合を控えて広報の準備をしている中、達海が声をかけてきた。

「何ですか?」

「明日スタジアムのスタンドに行くってホント?」

「はい。写真を撮りに。何か?」

「んじゃあ、さ...」

そう言って達海は悪巧みを提案してきた。

悪巧みの前半はも計画していたことなので「勿論」と答え、後半は「やってみますけど、時間的にどうでしょう?」と返す。

「まあ、無駄になるかも知んないけど、頼むよ」

「良いですよ」とが答えると「じゃ、よろしくー」と言って自室に向かっていった。



試合当日。

は少し大きめのバッグを持ってスタジアムに向かう。

クラブ関係者としてIDを受け取って一旦外に出た。

トイレに入って着替える。

「よっし!」

気合を入れてはスタンドに向かった。

スカルズがサポータを煽って声だしをしている。

?!」

ひとりがに気が付いた。

羽田に声をかけると羽田がの元へと足を運んできた。

「下に来いって」

少し嬉しそうに羽田が言う。はスタンドの最上部に居た。

「ううん、これ」と言ってカメラを取り出した。

「写真?」

「うん、ウェブの更新するのに写真撮ろうと思って。スタジアム全体を撮るなら此処がいいし」

そういわれたら羽田も引き下がるしかない。

「っつうか。んじゃ、それを着てたら拙いんじゃないのか?」

は今、レプリカユニホームを着ている。

「スーツの方が浮くって」

笑って返すの背中を見た。『12』だ。

「懐かしいな、それ。まだ持ってたのかよ」

「まあねー」

「んじゃ、お前もちゃんと声出せよ」

「はいはい」と言っては手を振った。

羽田は苦笑して肩を竦めて定位置に戻る。


姉ちゃん!!」

子供達がを見つけて駆けてきた。最近、子供サポーターと言う組織を作ったと聞いた。つまりは、子供だけのサポーター軍団。たしかに、子供だけが固まって応援している。

と、いうことは。今のETUのサポーターには3つの勢力があると言うわけか...

「え?なんで姉ちゃんここに居るの?」

コータが問う。

「うん、ちょっと趣味とお仕事。あ、ねえ皆。お姉ちゃんの正体はしぃ、ね?」

膝を折って人差し指を口に当ててがいう。

「わかった!」と答えたのはコータだ。

「えー、良いな。試合観戦が仕事ってぇ〜!」

「こんばんは」

「今日、ジーノ出る??」

子供達が口々に言う。

「さて、目いっぱい応援しよう!」

選手の入場が始まった。









桜風
10.10.23


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