アイコトバ 40





試合終了のホイッスルが鳴り、ETUは勝利した。

結果を見れは4-0だ。前半は押されていたが、後半は全く逆となった。

羽田はに頼まれたとおり、彼女から預かった高性能のデジカメをスタンドに向けて、「くそっ」と呟いた。

サポーターが皆同じような表情を浮かべている。嬉しそうだ。

それはそうだ。自分が応援しているチームが勝ったのだから。そして、その表情は自分達と一緒に応援しない昔のサポーターをまとめていた田沼たちも同じように浮かべていた。

選手がサポーターの応援に応えるためゴール裏にやってきた。

「村越さん」と羽田が声をかけると彼が顔を向ける。

「これ、に返してやってください。あと、二度とゴール裏に来るなって。アイツがここに居たら..戦場じゃなくなる」

苦々しく言っている羽田に村越は苦笑して「伝えるだけ伝えておくさ」と言ってデジカメを受け取った。


ロッカールームに戻るとも居た。

「お疲れさまー」

は大きめのバッグを持ってスーツ姿で立っていた。

「スカルズのリーダーからだ」と村越がデジカメを渡してきた。

「あー、ありがとうございます」

ニコニコと笑いながらが受け取る。

「酷い声だな」

苦笑して村越が言う。

「調子に乗って声を出しすぎました。明日、電話に出られない」

かれた声では言う。

「ねえ、。今日もボクかっこよかったでしょう?」

「あ、うん。まあまあ男前だった」

ジーノの言葉には笑いながらそう返した。

「素直じゃないな。ボクのこと、王子って呼んでくれたのに」

ジーノにそういわれ、「あれはわたしの言葉じゃない」と頑なに拒否をしてその場を逃げるように去っていった。

の答えにジーノは肩を竦めて「おやおや、本当に素直じゃないねぇ」と笑った。


皆が帰る準備を済ませた。

「じゃ、お疲れ様」とが言う。

「あれ?一緒にバスで帰るんじゃないスか?」

赤崎が言う。

「あ、今日はナイスゴール」

「ども。で、バス...」

「わたしは別行動。試合後のスタジアムの写真が撮りたかったし。なので、もうちょっとしたらスタンドに戻るんだ」

がそう言ってキョロキョロと周囲を見た。

「あ、松原さん」

コーチの松原の傍に行き、先ほどまで大事に持っていたデジカメを渡した。

「じゃ、今日はゆっくり休んでねー」

そう言って、なりに駆けてスタジアムの中へと向かった。


帰りのバスの中で達海がひとこと今日の試合について総括し、「んで、これな」と言ってテレビをつけた。

「何だ?」と皆は彼が何をしようとしているのかが分からず隣に座っている仲間と顔を見合わせる。

画面に出てきたのは、知らない顔だった。デジカメをテレビに繋いで映しているみたいだ。

しかし、それが何かということに気が付いた選手達は見入り始める。

これは、先ほどの試合で自分達を応援してくれたサポーターたちだ。その表情をが撮っていたのだ。

彼女自身声を嗄らして応援し、そして、サポーター達もきっと同じように声を嗄らしていたのだろう。

サポーターがどんな表情で自分達を応援してくれているのか、試合中は中々しっかり見ることはできない。

「これが、俺たちのサポーターだよ。の、悪巧みだ」

『悪巧み』って...皆は心の中で突っ込み、また画面を見る。

彼らは一様に何かを信じている目をしている。何か、それはつまり、チームの勝利。

「でも、残念だね。が撮ってるからの表情がないな」

ジーノが声を出した。

「ま、それは仕方ないって」

達海がそう言って苦笑した。









桜風
10.10.30


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