アイコトバ 45





クラブハウスに戻ると事務所の電気は点いたままだ。

「車、戻してきます」と赤崎がいい、は事務所に向かった。

「すみません、ありがとうございました!」

ドアを開けて中に入った。

「達海さん以外」

と付け加えた。

「えー?!俺も頑張ったよ?」

「具体的に何を?」

「次の試合の戦略を練ろうという資料集め」

そういわれては少し考え、「わたし、全部渡しましたよね?」と確認する。

「うん。ちょっと1枚どっかにいったからそれを探してた」

コイツは...

「てか、あれだな。もそういう服を着たら『馬子にも衣装』って言葉が浮かぶな」

「早く寝ろ」

笑顔でがそう返して先ほどまで手伝ってくれた丹波たちにコンビニの袋を渡した。

「取り敢えずのお礼です。って、大丈夫でしたか?」

肉まんとかそういうのはカロリーが比較的高いし、油も結構使ってある。

「ああ、大丈夫。腹減ったー」

そう言いながら石神が手を伸ばした。

「俺にもある?」

「...あります」

数秒の間を開けてが答えた。

「何でそんな間を空けるの?」

疑問を口にしながら達海は残っていたピザまんに手を伸ばした。

「わたしがもう1個食べようと思っていたので」

「ふーん」と言いながらぱくりとピザまんを口に運んだ。

「もう1個ってことは、は既に1個食ったんだ?どこで??」

「車の中で」

「んじゃ、その車の中、今相当匂いが充満してるな」

達海に指摘されたは顔色を変えて事務所から出て行こうとした。

ドアを開けると何かにぶつかる。

「どうしたんスか?」

不思議そうに赤崎が見下ろしていた。

「ごめん」とに謝られて首を傾げる。

「何か、もう気遣い足りなくて...」

「何の話スか?」

「今ごろ赤崎の車ん中、肉まん臭いだろうなーって話したの」

達海が言う。

「ああ、別にいいスよ。オレも食ったじゃないスか」

そう言って赤崎は事務所に入る。


「そういや、。ケンケンの今までの試合って何処まで遡れる?」

「山形ではなくて?」

の問いに「うん」と達海が言う。

暫く考えて、「ETUは全試合」と答えるに「それ以外は?」と聞いてきた。

「どこまで遡って?」

「何処まででも」

「じゃあ、京都との対戦なら数試合あるはずですよ」

が返した。

「京都?」と石神が不思議そうにする。

「ウチの母が後藤さんのファンなんです。現在進行形で」

だから、あらゆる伝手を使って収集した後藤が在籍していた頃の京都の試合も全部実家にある。

「探すのにちょっと時間が掛かると思いますけど」

「じゃあ、あさってまでに頂戴」

は諦めたように瞑目して「はーい」と返す。まあ、時間が無いといわれるのは分かるし。

「んじゃ、よろしく」と言って達海が自室に戻ろうとした。

は頭をひっぱられ、達海も足を止める。

「何てコトしてくれるんですか...」とが呟き、「それは俺のセリフ」と達海が返す。

着ていたポロシャツのボタンが引っかかったようだ。

、はさみ」

「はいはい」とは世良に言ってデスクの引き出しからはさみを取り出してもらった。

「どーぞ」とが渡し、シャキンとはさみの刃がこすれる音がした。

「あ、ない...」

後方で声がして振り返るとはさみを持った達海のシャツのボタンがない。

「あれ?」

「あー、あれだ。それにきっと絡まったままだから。今日どうせシャワー浴びるんだろう?排水溝に落とすなよー。んで、明日付けて」

そう言ってはさみをに返して達海は居なくなった。

てっきり自分の髪が切られるんだと思っていたのに...

不思議に思いながらは首を傾げた。









桜風
10.11.13


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