| リーグ、カップ共にETUの試合は終了した。 ひとつもタイトルは取れなかったが、それでも近年では最もいい成績だった。 「ねえ、さん」 「んー?」 12月に入り、クラブハウスは随分と静かになっている。 「今年の冬のバーゲン、一緒に行かない?」 誘われたは室内のカレンダーを見た。 「いつからだっけ?」 「既に開催中」 「じゃあ、今度の休みに行く?」 の返事を聞いて有里は嬉しそうに頷いた。 「あ、でも。午後からでいいかしら?」 朝一番に行こうとしていた有里は首を傾げて「何か用事?」と問う。 「ああ、お礼参りに」 「何処の組に?」 「...わたしの職業は何なの?!」 有里のボケにが突っ込む。 「ごめん。で、どこに?」 「浅草寺。毎年あそこに選手の無事の祈願に行ってるから」 の言葉に有里は目を輝かせて「じゃあ、私も行く!」と言い出した。 「有里ちゃん、お願いしてないんでしょう?」 「けど、今年凄くみんなの調子が良かったでしょう?きっとさんのお願いを聞いてくれたんだよ。だから、私もお礼をしに行く!」 元気良く宣言した有里には苦笑して、「じゃ、一緒に行こうか」と声を掛けた。 待ち合わせは雷門前。行ってみると既に有里が居て、一緒に他の人も居た。 「どうしたの?」 「荷物持ちに誘ってみた」 さらっと有里が言い、誘われたらしい彼らはぎょっとする。 「メシ奢ってくれるって言うから...!」と世良。 「ちゃんと奢るわよ?」 有里の切り返しにグッとつまり「一緒していいっスか?」と聞いてきた。 「ま、無茶させないから安心してよ」 は苦笑してそう請け負った。 世良の他にもまだ地元に帰っていなかったのか、赤崎と椿が付いてきている。全く、この3人は仲良しさんだ。 さて、お礼参りに行こうと思っていると 「コンドー!ホシノー!ハチヤー!!ドコデスカー!!」 と自分は迷子ですと大声でアピールしている人物が居た。 「...あれって」とがその人物を見る。声は聞いたことがない。けど、姿は見たことがある。 「姜昌洙...」 「迷子、なのかしら?」 有里が首を傾げた。 は溜息をつき、「あー、取り敢えず。保護者であろうその3人を探すのが先決ね」と言って同行している彼らを振り返った。 「見つけてきてあげて。わたしと有里ちゃんで..そうね。あそこの甘味処で姜さんを見てるから。見つけたら、わたしか有里ちゃんの携帯に電話頂戴。どっちかのは知ってるんでしょう?」 彼らは頷く。 「じゃ、よろしく。喧嘩しちゃダメよ?」 そう言ってが姜に近付き、慌てて有里もそれに従った。 〔こんにちは〕 が声を掛けると姜はきょとんとした。 と一緒に居る有里は驚く。 ...これって、韓国語でしょ?! まさか、韓国語まで出来るとは思っていなかった。 〔こんにちは〕と少し戸惑ったように姜が言葉を返した。 〔わたしは、ETUの広報のです。の方が呼びやすかったらそっちで呼んでください。こっちは同じく広報の永田有里。取り敢えず、確認しますけど。姜昌洙さんですよね、川崎の〕 彼はコクリと頷く。 〔門前でこう..騒ぐのもどうかと思いますので、そこの甘味処で報告を待ちませんか?今、わたし達と一緒に来ていた選手達に貴方の仲間を探してもらっています〕 「ホントデスカ?!アリガトウ!!」 日本語で返された。 「ワタシ、ニホンゴ、ダイジョーブ。ニホンゴデハナシテ」 そういわれたが、 「んー。でも、逆にわたしは毎年中国か韓国に年末に行っていたのですが、今年は予約が取れなくて。だから、出来れば韓国語で話してもらいたいんですよね。練習のために」 とが言う。 そんなの行動を知らなかった有里は驚いた。 「毎年?!」 「うん。近いから。中国語と韓国語は高校のときに勉強して以来だし。本場に行って話をするのが一番だからね」 「デハ、ワタシ、ニホンゴニハナシマス。サンハ、ワタシノクニノコトバ、ハナシテクダサイ。オカシイトコロアタラ、オタガイイイマショウ」 「...日本語上手ね」 有里が心底感心したように言うと「アリガトウゴザイマシタ」と姜は笑った。 |
桜風
10.12.5
ブラウザバックでお戻りください