アイコトバ 53





駅まで送り届けると姜は寂しそうに俯いた。

、コンドハ、カワサキニアソビニキテクダサイ」

苦笑したは〔シーズン中はムリだけどね〕と答える。

「ナンデデスカ?!」

〔だって、わたしはETUのスタッフ..フロントだもん〕

の言葉に姜は「む〜」と唸り「キラメイタヨ!」と声を上げる。

『煌めいた』...?

皆は首を傾げた。

たぶん、何かの言い間違い。でも、が何を言っているのか分からないから指摘のしようがない。

ガ、カワサキニイセキシタライイヨ!」

「お断りだ」

間髪入れずに否定の意志を示す。

「わたしからETUを取ったら何も残らないもの」

笑いながらが返し、姜が拗ねる。

「すみません、姜が...」と近藤が慌てて謝るが「そうだよな!」とその言葉に被せて声を出した人物が居た。八谷だ。

「よし、さん。惚れた!俺の嫁さんになってくれ」

「お断りだ」

キッパリと、これまた間髪入れずに返事をした。

男らしい...

有里はうっかり惚れそうになる。

というか、やっぱり面白くないと思ったETUの選手達。中でも一際面白くないのは赤崎だが、面白くないと怒る前にがお断りをしたのでこのもやもやが消化できないことに現在困っている。

「あ、えーと...もっかい良いかな?」

「お こ と わ り だ」

一言一句区切ってがお断りした。

「あ、えっと。今度は八谷がすみません」

近藤が失礼なことを言う仲間のことを謝るが、すでに振られたのでこの先どう言う風にこの話の収拾をつけていいか分からない。

「え、いや。ほら、俺って結構...」

めげないなぁ...

は感心する。メンタルが異様に強い。

「じゃ!」とが話はお終いとばかりに手を振った。笑顔で。

「あ、はい」と近藤が頷いて姜を促し、星野が呆然としている八谷を促した。

「俺は諦めないぞー!」

「諦めた方が賢いと思いますよー」

は軽くそう返してニコニコと手を振る。

振り返った星野はぺこりとお辞儀をして、まだ暴れている八谷に手を焼きながらホームへと消えていった。



さん...」

「んー?」

半端な時間にもんじゃを食したこともあって、たちは何となく解散せずにまた別のお店に入って食事を取ることになった。

浅草寺のお参りは済ませている。

「さっきの、お断りの..凄かったね」

有里が言う。相手はともかく、もてるのは羨ましい。

「んー?そう。骨髄反射だと思うわ」

笑いながらが応じる。

「何で断ったんですか?」

「だって、わたしETUだもん」

だから、考える余地がないということなのだろうか...

いやいや、だったら同じETUの自分があんな返事をされたのはどういうことだ??

赤崎が悶々と考えているのを他所に世良たちは盛り上がっている。

さん、天宮杯の決勝って見に行くの?」

有里に問われて「たぶんね」と返す。

「そっか。おばさんたちも?」

「両親は海外でニューイヤーを迎えるって言ってるから...ウチが残ってたら間違いなく鼻息荒く参戦してたと思うけど」

笑いながら言うに「かもね」と有里が頷く。

「有里さんはさんのご両親と会ったことあるんスか?」

「うん。小学校の学区が一緒だったから。おばさんも相当のETUのサポだったし。練習とかしょっちゅう見に来てたよね」

有里に話を振られては苦笑する。母は物凄く熱いサポーターだった。

の母親の話は以前偶然にも聞く機会があったので、赤崎は何となくその熱狂的なファンっぷりは想像付く。

「じゃあ、天宮杯の決勝。一緒に見に行きます?」

さらりと誘った赤崎に有里と世良は驚きを隠せない。

赤崎くん、大人になったのね...

スゲー!赤崎、すげー!!

そんな2人の心の声気が付かない赤崎はの返事を待つ。

「赤崎くんのところは田舎に帰らないの?」とが聞くと「ウチのじいちゃんが野球派だから、帰ってもあんまり良いことにならないし」と返した。

「そうね。じゃあ、行こうか。チケットはウチの両親が買ってるのがあるし。いいところじゃなかったらごめんね」

の言葉に赤崎は「っス」と頷いた。

「...なんでさんのご両親はチケット持ってるの?」

「ETUが決勝に出たとき。チケットが買えなかったら死んでも死に切れないって高らかに宣言している人が居るから」

有里の問いにが答える。

「あ、そうなんだ...」

呆気に取られた有里には苦笑し「ま、ETUバカだから」と一言付け足しておいた。









桜風
10.12.11


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