| 腕を組んで唸りながら歩くに声をかけると目を輝かせて彼女はその手を取る。 「ど..どうした?」 村越が躊躇いがちに問うと、 「今度の、ファン感謝祭のことを考えていたんですけど。村越さん、パッカ君の中に」 「却下」 最後まで言わせてもらえなくてはしゅんとした。 「まだ言うか」 溜息混じりに村越が言う。 「だってぇ...面白いじゃないですか」 「お前がな」 村越の言葉に「ちぇ〜」と言ってはその場を去った。 何だったんだ... 冬で、寒い中ではあるがETUはファン感謝祭を毎年ホームで開催している。 殆どの選手は出席だ。 しかし、今回は全選手の出席が叶った。 昨シーズン好成績を残した今回の感謝祭は例年以上の盛況を見せるだろうと思って広報は張り切っていた。 予想通りに申込みは多数。ファンクラブ会員限定のイベントだが、それでもこれだけの申込みは今までになかった。 ファン感謝祭と銘打っているからには、ファンと選手達の交流が主な目的で、そういうコーナーが多々用意されている。 「ジーノまで来てくれるなんて思ってなかった」 が言うと 「たまには、ね」 とウィンクつきで言葉が返ってきた。 全てのコーナーに、フロントの出場も可能としていた。 「、大人気ないんじゃないかな?」 「ジーノこそ」 ピッチで2人がリフティングを続けている。 『えー、そろそろ決着を付けてください』 司会者がそう言う。このコーナーの司会者は石神だった。 司会も選手が順番に行うと言うシステムにしている。勿論、口下手な人にはそんなことを頼めないので、この司会者は選抜だ。 しかし、決着って... 周囲を見渡すと選手達が一様にボールを置いている。 まさか... 「あはは!これってきっとタッツミーが考えたね」 「ジーノ、楽しそう...」 「動かなかったら当たらないよ。というか、女の子にプロが蹴ったボールを当てたらさすがに拙いからね」 ジーノの言ったとおりに選手達の蹴ったボールは自分達がリフティングをしているボールしか狙われていない。 ふと物凄い気迫を感じてそちらを見ると有里が腕時計を必死に指差している。ああ、時間が押しているのか... 「んじゃ、ジーノに勝利を」 はそう言って丁度飛んできたボールに当たるタイミングでボールを上げて自分のボールを落とした。 こうして、リフティング大会は終了した。 「、今のわざとでしょう?」 「時間が押してるみたいだから。選手よりもフロントが目立ったら拙いでしょう?」 充分目立った後にがそう言う。 最後は、クイズ大会だった。 優勝者はチームの誰でもひとり、一緒に写真を撮って、それにサインをもらえると言う企画だ。 チームの誰でも一人、というのは達海のファンがもしかしたらいるかもしれないという配慮だった。 クイズは二択問題で正解だと思うエリアに移動して回答を行うことになっていた。 早いうちから脱落者が出てきた。 クイズの内容は、昨シーズンの成績が主なものだったが、偶にETUの歴史が含まれていてこれまた結構な難易度だった。 問題を考えたのは、だ。 『んじゃー、次の問題〜!』 そして、司会は達海だった。 残った回答者を見ては愕然とした。 「何で居るのよ...」 「どうかした?って..あ!」 有里はの視線の先に居る人物を見て声を上げて苦笑した。 「優勝者、決まったわねー」 はその場に膝をついてうな垂れた。 「どうかしたんスか?」 体調が悪いのかと思って赤崎が声をかけてきた。 「さんのお母さんが残ってるから。たぶん、優勝するわよ」 笑いながら有里が言う。 有里の言葉に皆が興味津々だ。 「どの人?」とか「あれじゃね?」とかそれぞれ楽しそうに会話をしている。 「何ではそんなに嫌がってるんだ?」 「選手にサインを求めるなら良いんだけど、絶対に違うから」 村越に言われてはそう返した。 優勝が決まった。 『おめでとう!名前は?』 達海にマイクを向けられた彼女はニコリと微笑んで『と申します』と言う。 達海はニッと笑った。 『じゃあ、誰と写真を撮って、サインをもらいたい?』 『GMの後藤さん!』 「まだ増やすかぁぁぁぁーーーー!!」 その言葉を聞いてが吼えた。 傍にいた選手達はビクリと驚いたが、それも苦笑に変わる。 『んじゃ。おーい、後藤GM!あと、広報部のカメラマン!』 誰のことだ... は有里を見た。 「いってらっしゃーい」 ヒラヒラと手を振ってを見送る有里に恨めしげな表情を見せてはポラロイドを受け取って後藤と共に優勝者の元へと向かった。 「お久しぶりです、後藤さん」 ニコニコと笑いながらの母は言う。 「ああ、どうも」と後藤は彼女の顔に見覚えがあったのか少し親しみのある声を出した。 「あー、じゃあ撮りますねー」 やる気のないの言葉に「若く撮ってね」と彼女が声をかけ、「写真は真実を写します」とは返してシャッターを切った。 『んじゃ、これが終わったら事務局に来てねー』 司会の言葉に「はい」と嬉しそうに返事をして彼女は後藤と握手を交わしてファン達の中に戻っていった。 |
桜風
10.12.11
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