| 今年のプレシーズンマッチの相手は、川崎となった。 資料を目にして「ふーん」とが呟いたのはひと月以上前の話で、今日はその試合の日となる。 「さんも来るんスか?」 バスに乗り込む選手達を見送るに世良が聞いてきた。 「うん、スタンドにね」とは返しながらシャッターを切るまねをする。 またしても新たにウェブの素材として使用できる写真を撮ろうと考えているみたいだ。 走り出したバスに向かって手を振って見送り、そのまま準備をしてスタジアムに向かった。 スタンドに着くと子供サポーター達が駆け寄ってきた。 「お姉ちゃん、何でここに居るの?!」 「さん。今まで騙していたのね!!」 それぞれがそれぞれの挨拶をする。 女の子サポーターにニコニコと笑顔を向ける。 「今シーズンも応援してくれるの?」 がそう言うとプイとそっぽを向かれた。 彼女はジーノのファンで、ファン感謝祭のときに初めてがスタッフだと知って騙されていたと信じて疑っていない。 しかし、にとってみればそんな素直な反応を返してくる子は可愛くて仕方ない。多少嫌われていても特に堪えないのだ。 「わたしがあなた達くらいだったときはサッカーなんて全然流行ってなかったもんなー」とが言うと「オバサン」と言われた。 「ジーノと同じ年」とニコリと返すと彼女はグッと詰まる。 「、大人げねえだろう」 声を掛けられては笑った。 「今年もよろしくお願いします!」 最敬礼で言うと羽田は「おう」と苦笑した。 「お前らも気合入れていこうな」と子供達に声を掛けて定位置に向かった。 どうやってサポーター達がこんな風になったのかは、は知らない。聞けば教えてくれるだろうが、それはちょっと違う気がして聞いていない。 試合開始のホイッスルが鳴った。 「おい、椿」と八谷が椿に声を掛ける。 何だろうと、ビックリしながら「何スか」と返す椿に「ちゃんは来てないのかよ」と聞いてきた。 「は?!」 椿は思わず大きな声を出す。 何でさんの名前?振られたじゃん... そう思いながら、このスタジアムに来ていることを言うべきかどうかを悩んでいるうちに「バッキー」と声を掛けられ、パスが回ってきた。 八谷のに関する問答に付き合っていられない状況となり、試合に集中し始めた。 「ねえ、バッキー」 前半が終了してロッカールームに入るところでジーノに声を掛けられた。 「ウス」と返事をして振り返ると少々不機嫌だ。 何だろう、前半の動きがそんなに悪かったかな?? 絶好調のときに比べたらやっぱりちょっと悪かったとは思うが、此処まで不機嫌になられるほどのミスはしていない..と思う。 「向こうのうるさいのがしきりにの名前を口にしていたようだけど...」 八谷はかなり大騒ぎしていたからジーノの耳にもの名前が聞こえたのだろう。 「あー、あの人。まだ諦めてなかったんだよなー」 世良が呟く。 「セリーも事情を知ってるのかい?」 遅れてロッカールームに入ってきた達海は少し見守ってみることにした。そこまで修正が必要な試合内容でもなかったし、ちょっと面白そうだ。 年末の出来事を世良が話し終わるとジーノは盛大に溜息を吐いた。 「まったく...はお人よしだね」 「というか。八谷はのどの辺に惚れる要素を見出したのかねぇ。なあ、赤崎」 突然話を振られた赤崎は答えに詰まった。 要素ならたくさんあるだろう?! そう思うものの、確かにあの短時間でにプロポーズとかってどうかと思う。 いやいや、そもそもなんで監督は俺にこの話を振ったんだ?あれ?なんで??まさか... そう考えていると「ねえ、タッツミー」とジーノが達海に声を掛ける。 「なに?」 彼が言うことを何となく予想した達海は面白そうに続きを促した。 「後半はボクがあのうるさいののマークに入ったらダメかな?」 声のトーンが心なしか少し低い。 「んー...ま、プレシーズンマッチだし。面白そうだから良いよ。んじゃ、椿のマークは...」 達海は面白そうに後半の修正を口にし始めた。 |
桜風
10.12.25
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