アイコトバ 66





「王子!」

日本の東京。相変わらず小ぢんまりとしたクラブハウスで呼び止められたジーノは振り返る。

「何だい?」

「昨日のザキさんの会見、見ましたか?」

「ザッキーの?いつあったの?」

真顔で返されて椿は驚く。

「見なかったんスか?」

「うん、あんまり興味がないから」

そう言って足を進めると「マジっスかーーーー!!」とロッカールームから賑やかな声が聞こえた。世良だ。

「セリーはいつもうるさいね」

そう言いながらロッカールームに入る。

「王子、知ってましたか?昨日の赤崎の会見で、通訳してたのさんだったらしいスよ」

世良の言葉にジーノは振り返って椿を見ると彼はコクコクと頷く。ああ、それが言いたかったのか...

「俺、見逃したから...!!」と悔しそうにしている世良に「有里が録ってるだろう。広報用に」と黒田が言う。

「そうか!有里さーん!!」

賑やかに駆けていく世良に嘆息を吐いたジーノは着替えを済ませてテレビが設置してあるミーティングルームに向かってみた。


「ははっ。のやつ。あっという間に掴まったじゃねぇか」

笑いながら達海がそういった。その場に居た者全員がぎょっとする。

「監督。まさか、さんが何処にいるか知っていたんですか?」

「うん。今シーズン前に笠さんと一緒にのお袋さんを買収してな。あー、でも。赤崎がスペインに行くの、連絡し忘れたなぁ。、ビックリしただろうなー...」

楽しそうに言う達海に対して皆が非難の眼差しを向ける中、ジーノが携帯を取り出したてダイヤルする。

『《はい》』と寝ている声が返ってきた。

「やあ、

『...時差。ねえ、時差を考えて。今こっちは何時かな?』

寝起きの掠れた声でが訴えるが「ああ、日本は今10時だよ」とジーノが返す。

『ありえねぇ...』と呟いては早々に常識を説くのを諦めた。

「ところで、早速ザッキーに掴まったんだって?今、会見を皆で見てるよ」

『ああ、うん。偶然ね。彼の通訳を引き受けた人がのっぴきならない事情で行けなくなって代打で行ったら赤崎くんが居たの。ね、もう電話切って良い??』

が言うと「【運命だった、ってことかな?】」とジーノがからかう。

『ま、それで良いよ。じゃ、今度はそっちの1時ごろに電話してあげる』

が言うと「出るわけないだろう、ボクが」とジーノが返す。

『そうだった...』とが呟き「じゃ、良い夢を」と言ってジーノが通話を終えた。

「おい、ジーノ...」

黒田が低い声で彼の名を呼ぶ。

「何だい、クロエ」

「お前、いつからの居場所知ってたんだ...」

が此処を出て行った年の中断期間中だよ。バカンスでスペインに行ったらが居てね。そのとき、番号を聞いたんだ。でも、内緒だって言われたから内緒にしてただけ。スペインじゃない国に行くかもしれないからって」

何事もないことのようにいうジーノに皆は「ええ〜〜〜?!」と心の中で声を上げる。

「おま、バカ崎があんなになってたのにか?!」

黒田が言うと「うん。ボクはとの約束を守るほうが大切だったからね」と返した。

「それにしても、クロエ。ザッキーと仲が悪そうだけど、意外とザッキーのこと心配してたんだね。優しいなー」

ジーノがからかうと「んなことねぇ!チームとして、俺はあのバカ崎のヤツがだなぁ...!!」とムキになる。ぽん、と黒田の肩に手を置いた杉江が「クロ、必死すぎ」と苦笑を漏らして止める。


「よーし。んじゃそろそろ練習始めるか。おら、外に出ろ。フットボールバカ共」

達海がそう言って皆が練習のために外に出る。

部屋から一歩足を出した達海が振り返って電源の落とされたテレビ画面を見た。

「良かったな、
ていうか。どーせ、ETUを取ったお前に残ったもんなんて、『フットボール』だろう?俺と同じだよ」

苦笑を漏らしてそう呟いた達海の耳に「監督ー!早く来てくださいよーーー!!」という世良の声が届く。

「おー」とやる気のない声で返事をして廊下を歩き、今日も勝つための練習が始まった。









桜風
11.1.8


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