アイコトバ
 




外の階段に腰掛けてぼうっとしている。

太陽の光を浴びたら目が覚めるかと思って先ほどからこうして日光浴をしているのだが、どうにもこうにも...

」と声を掛けられて顔を向けると何かが飛んできた。

慌てて受け取ると野菜ジュースのペットボトルだった。

顔を上げる。

「堺さん」

「ちゃんと寝たのか」

そう声を掛けられて苦笑した。

堺の眉間に皺が寄る。

「体がもたねぇだろう...」

「ええ、まあ...」と言ってあははと乾いた笑いを零す。

「これは頂いても?」

「やらないものを投げて寄越すかよ」

「これは失礼」と言ってペットボトルのキャップを捻る。

むむ、硬い...

「ったく。貸せって」

そう言って手を伸ばす堺には素直にそれを差し出した。

簡単に開いたキャップに「うーむ」とが唸る。

「どうした?」

「さすが..やっぱ筋トレしようかな...」

「ま、キャップを捻れないのはちょっと力がなさすぎだとは思うけど。の場合は、昨日と一昨日で2日連続、慣れないこと沢山したからだろう?」

またしても苦笑。

「サッカー、やってたのか?」

「小4から小6まで。堺さんの学校にはなかったですか?学校が終わった後、放課後にクラブ活動。ウチの学校はサッカーとバレーでした」

「あー、あった。のところは小4から?」

「はい。あ、低学年から入れる学校もあったみたいですね」

「ウチはそのタイプ。だから、ちっせーガキのときからボールを追いかけてたよ」

苦笑して堺が言う。

「しかし、その足でよくサッカーをしようと思ったな。あ、ガキのときは速かったとか?」

「酷いなぁ...気を使ってくださいよ、これでも気にしてるんですから。子供のときからのんびりでしたよ。ただ、やり方によっては何とかなんないかなーって思ったんですけど...結局どうにもなりませんでした。
まあ、お陰でボールコントロールの練習に打ち込めてご覧頂いた通りなんですけどね」

そう言って笑うの頭に堺がぽんと手を載せる。

「堺さんって『お兄ちゃん』でしょう?」

がそういう。

「あ?ああ、まあ...」

「行動の端々にそういうものが見え隠れしています。だから世良くんに懐かれているんですよ」

「そーかよ...、朝飯は食えよ。昨日は晩飯食わなかっただろう。一昨日もメシの途中で呼び出されて結局食えなかったんじゃないのか?」

練習が終わってから疲れて一度部屋戻ったときに寝てしまい、慌てて起きて食事を摂ろうと思ったらスタッフの打ち合わせの時間となり、結局食べられなかったのだ。

そして、疲れすぎてて眠れなかった。寝るのにも体力が要ると聞いたことがあるが、きっとその通りなのだろう。


コクコクと堺にもらった野菜ジュースを飲む。

目の前では堺がリフティングをしている。

「何かお手伝いしましょうか?」

声を掛けられて堺は驚いたような表情を見せたが、「ピッチならともかく、ここじゃあ何もないな」と返した。

「今日も練習試合ですかね」

「どうだろうな...昨日の練習試合のルールはそれを通じて何となく監督の言うところのこのキャンプの目標のヒントを見せたってところだろうな」

「そっかー、ちょっと残念。練習試合を見てたら楽しそうだったから...」

の呟きに堺が視線で意図を聞く。

「昨日、ミスターTからお誘いがあったんですよ。コーナーを上げるのだけでも参加しないか、って」

「は?!そっちんが人数多くなるだろう」

「だから、コーナーのときは、一人出て、そのコーナーの一連のプレイが終わるまでピッチの外で待機っていう特別ルールにしてみて」

「ああ、それでがコーナー上げて...」

「3回に1回くらいは直接狙っても良いって言われてたし。やってみても良かったなーって思って。世良くんならバーギリギリを狙ったら入りそうじゃないですか?」

「...世良には言ってやるなよ。てか、だったら何でやらなかったんだよ」

「『レディ・エックス』ってどう思います?」

「は?」

「そのネーミングセンスを受け入れられなかったんですよ。ムリ...」

「それだけで...」

「じゃあ、堺さん。今度『ミスターS』って名乗ってミスターTと一緒に悪巧みしてください」

堺は数秒沈黙して「遠慮しておく」と答え、は声を上げて笑った。

うん、随分目が覚めた。









桜風
11.2.12


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