きまぐれ猫と王子様 4






ジーノの住んでいる高級マンションから少し離れたところに、独り暮らし用のワンルームマンションが建っていた。

建築から随分と年月が経っているそれは、随分と古めかしい建物に見える。

何せ、周囲の建物がどんどん新しく生まれ変わるので歴史を刻み続けているそのマンションだけが当時の様子を体現していることになるのだ。余計に古めかしく見えてくると言うものである。

ジーノと日本で再会して、家まで送ってくれるといわれてその言葉に甘えて送ってもらったときにジーノが呆れた様子でこのマンションを見上げたものだ。

クスリと笑う。

そして、近所の高級マンションを見上げるたびに「このマンションに住んでる人はみんなイヤミな人に違いない」と思っていたは、ジーノがそこに住んでいると聞いて大爆笑をした。

その様子をジーノは冷ややかに見た。

「なに?オカシクなっちゃったの?」

ジーノの問いに

「ここに住んでる人はみんなイヤミな人に違いないって、見るたびに思ってたから。そっか、ジーノってばここに住んでるの」

が返した。

「ボクは、イヤミな人なんだ?」

からかうようにジーノが言うと

「さあ?」とが応じる。

その反応にジーノは肩を竦めた。

「じゃあ、また縁があれば」

を降ろしたジーノはそう言ってアクセルを踏もうとしたが、

「ちょい待ってて」

と止められた。

「なに?」

眉間に皺を寄せて問うと

「3分!」

とインスタントラーメンが出来上がるまでの時間を口にして彼女はマンションの中に駆けていった。

そして、3分ギリギリに戻ってきた。

時間をオーバーしたら放っておく予定だったのに、とジーノは少しだけ残念に思う。

それはともかく。

彼女の手に持っているものを見た。

「これ、今日のお礼」

そう言って渡されたのは、チーズだった。

「どうしたんだい?」

「この間は、中央ヨーロッパだったから」

お土産に買って帰ったらしい。

「ワインにすっごく合うから。ジーノ、ワイン飲むでしょう?」

「じゃあ、遠慮なく貰っておこうかな」

そういったジーノは車を走らせた。


それからというもの、はなぜかジーノへのお土産を買って帰るようになった。

味覚が近いと言うか、自分が気に入ったものを彼は高確率で気に入る。

同士ができたみたいで嬉しいのだ。

そして、たまにが好きなものをお土産で買って帰ってジーノが口にするとけちょんけちょんに言われることもある。

それはそれでスリリングで楽しい。


帰宅して荷物を置き、そのままベッドに倒れる。

この家は、とりあえず日本での生活で雨風を凌げれば良いと思っている空間なので、こだわりが無い。物も少ない部屋だ。

「明日も行ってみようかなー...」

ジーノに対する周囲の反応が楽しかった。

さすが『王子』というだけある。

ジーノが自分に声を掛けたときの周囲の表情と言ったら...

はクスクスと笑った。

「そういえば...」

ジーノのお気に入りのソファに自分は寝ていた。

食事のときは、床にぺたりと座っていたはずなのに。

「お礼、言わなきゃ...」

ごろんと床に寝転んでいたのかもしれない。

ジーノが「よっこらしょ」と言ったかどうかは不明だが、抱え上げてソファに乗せてくれたに違いない。

そういえば、ジーノの家にもいつの間にか行くようになって、いつの間にか居心地のいい空間になっていったような気がする。

つまり、「縁があった」ということでどうやらそろそろ間違いないだろう。

またしても瞼が重くなってきた。

「やばい」

そう呟いた次の瞬間、の口からは寝息が零れていた。









桜風
12.10.13


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