| 栄養計算をしてもらった翌日、クラブハウスでの姿を探した。 「あら、えーと。堺..さん?」 「おう」 声をかけられて振り返ると探し人がいた。 しかも、どうやら名前を覚えたらしい。疑問形ではあるが、全く分からなかった昨日よりもマシだ。 1日で大進歩したものだ。 「昨日はありがとな」 「いえ」 「んで。できりゃ調理法も出来りゃ教えてもらいたいんだけど」 「...あ」 どうやら失念していたらしい。 「ですよね。ごめんなさい。すっかり忘れていました」 肩を竦めて申し訳なさそうな表情を見せるに「いや、」と堺が応じる。 元々の仕事ではないし。 「堺さんに教えればいいんですか?」 「オレ以外に誰が?」 変なことを言うな、と思いながら聞き返すと、 「奥様とか」 とが覗うようにいう。 「いねぇよ」 確かに、スポーツ選手は結婚が早いといわれてはいるが、今現在そういう話はない。 過去もそこまで話が至ったこともないことを思い出す。 「え、じゃあ。あの献立、堺さんが?」 「おう。なんだよ...」 目の前のの目がこぼれんばかりに見開かれている。 「すごいですね。執念すら感じる献立でしたよ」 「なんか今余計なことを言わなかったか?」 堺に指摘されては肩を竦めた。 自覚があった、もしくは態と言ったのだろう。 「でも、そうか。じゃあ、かなりの調理スキルをお持ちですね」 はほっとしたように息を吐く。 「おー」 「そして、調理器具もそれなりにそろっている」 「だろうな」 「よし、安心だ」 独り言のようにつぶやいたは、 「献立、持ってます?」 と問う。 「あ」と漏らした堺の声が返事の代わりとなった。 苦笑したが「じゃあ、電話番号教えますから、帰宅したら連絡ください」と言う。 電話越しに指示を出すということなのだろう。 堺は頷いて携帯を取り出し、番号を交換した。 「ちゃんと番号の交換って、何やってんだよ、スケベ!」 どうやら一部始終を覗き見していたらしい丹波に言われた。 「ああ?!」 聞き返す堺は若干不機嫌になるが、それにへこたれる同僚ではなく、にやにやとからかいを続けるつもりのようだ。 堺は抗議に代えて盛大なため息をついてみたが、それも流された。 午前の練習を終えて、昼食のために食堂に向かうと、堺をからかった丹波がまっすぐを目指した。 堺は慌てて彼の襟首をつかむ。 「なに」 「迷惑かけんな、さんに」 「えー、自分だけトクベツ?」 「...今、彼女は仕事中だろ」 何だか言い訳臭いとも思ったが、ついでに村越が睨んでいることに気づいた丹波は肩を竦めて大人しくなった。 堺はほっと息を吐いた。 (は?) 何でほっとしたのかわからない。 いや、彼女の仕事を丹波が邪魔するというなら、諸悪の根源は間違いなく自分で。 だったら、ほっとするのは当然で... (何だ、この言い訳っぽいの) 自分の思考が、どうやら言い訳臭くなっていることに気づいた堺は、自信に毒づき昼食を受け取るため、配膳台へと向かった。 |
桜風
13.8.17
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