| ふと、書店で見かけたバスケット専門雑誌を手にとってパラパラと捲る。 「何見てるの?」 ひょいと顔を覗かせてきた彼女に「うん」と生返事をしていると腕を引っ張られて仕方なくその雑誌を置いた。 何となく捲ってみたらの名前があったからちょっと読みたかったのに... 丹さんの紹介する子ってどうも合わない気がするんだよなー... そんなことを思いながら自分の腕にぶら下がるように体重を掛けている『カノジョ』を見下ろした。 それから数日後にロッカールームで丹波に「お前、あの子と別れたってホント?」と聞かれて石神は「本当ですね」と答えた。 だって、物理的にも精神的にも重い。 「お前、俺の紹介で別れたのって何人目だよ」 一々数えてないから分らないが「すんませーん」と適当に謝っておいた。 その日の練習帰りに書店に寄って先日見かけたバスケット専門雑誌を探して手に取る。 ゆっくり読むかな、と思って会計を済ませて店を出ると突然の大雨に呆然とした。 「あーあー...」 駐車場までは距離がある。 走るか... 多少濡れることを覚悟して駆け出したところで、不意に視界に入った人物のお陰で足を止めることになった。 てくてくと足を進めて着ていたシャツを脱いで、屈んでいる彼女に雨が降り注ぐのを庇った。 驚いたように振り返った彼女もまた何かを庇っていた。 「何?」 石神が問うと 「ワンちゃん」 と返ってくる。 体の角度を変えて覗いてみると、確かに生まれて間もないと思われる子犬がプルプルと震えている。 この雨に打たれるのは子犬にとってはまず良くないだろう。 「そいつ、貸して」 「え?!」 驚くに自分のシャツを被せて彼女の庇っている子犬を片手で掻っ攫い、「ついておいで」とに言い置いて駆け出した。 慌てても石神の後を追う。 着いたのは駐車場で、一台の車の後部座席に石神が入り、躊躇うを引き込んだ。 「傍から見たら無理やりだよ」 びしょぬれになりつつが呆れて返すと 「が俺の正当性を証明してくれたら万事オッケー」 と言ってバッグの中から使っていないタオルを出してに渡す。 自分と子犬は先ほど練習で使用したものを再利用だ。 「あー、あたし、乗ってていいの?」 「具体的に何の心配?」 「石神くんに女の影とかって面倒くさいことは...?」 彼女もプロバスケットチームの取材をしているからそういうのを気にするのかもしれない。 「ウチのチームはそんな有名じゃないから注目されてない。俺が代表とかに選ばれるほどだったらもうちょっと考えなきゃだろうけど、残念ながらその点の心配もない。んで、カノジョとはこの間別れたばかりだから修羅場も心配無用」 そこまでは気が回らなかったな、と思いつつも「確かに、安心」とは返す。 子犬の体を拭き終わって、「コイツ、やっぱり獣医に連れて行くべきだよな?」とを見た。 「あー、たぶん。てか、その後どうするの?」 の疑問は至極尤もで、石神はちょっと考えた。 「のとこは?」 「ごめん。住んでる自体はペットOKなマンションだけど、あたしが余裕ない」 なるほど、と石神が頷く。 「んじゃ、獣医に相談して。貰い手が見つからなかったら俺が貰うわ」 と軽く言った。 「ちょ、そんな軽く言うこと?!」 「だって、コイツ、またさっきのところに戻すの?俺はムリ。ヨロシク」 「あたしだってムリだよ!」 「なら、それ以外の選択肢ないでしょう」 軽くそういった石神は一度車から出て運転席に座る。 カーナビを操作して最寄の動物病院を検索し、そちらに向かって車を走らせた。 |
桜風
11.11.12
ブラウザバックでお戻りください