小春日和 2





堺の家で何となくテレビを見て、ダラダラと時間を過ごす。

意外とバラエティ番組が好きらしい堺はテレビに出てくる色んなジャンルの人物の名前を知っており、「やれ、このタレントはこんなことが意外と得意だ」とか、「この女優はバラエティ向きだ」とか解説してくれる。

基本的にテレビを見ないは逆に「これは誰?」だとか「どこかで見たことある人」とか言ってテレビを見ながらでも2人の会話は弾んだ。


ふと窓の外を見ると随分と暗い。

「おーい、本降りだ。やっぱり来たぞ。今日、泊まるか?」

ベランダのガラス戸の傍まで行った堺が外の様子を眺めてそう言う。

「明日仕事...えー、電車止まったかな?」

もうちょっと大丈夫だろうと根拠もなく自信を持って思っていたは嘆きながら堺の隣に立つ。

本当にしっかり積もっている。

「これは記録的な云々だね...」

「だな」

「タクシーもバスもムリっぽいよね...」

タクシーは走っているが、電車が止まっていたらタクシーの利用者が増えて掴まらない可能性がある。

バスも同じく混み混みだろう...

「歩いて帰れない距離じゃないだろう」

「えー、寒い」

文句を垂れるに「ほら、上着着ろ。送ってやる」と言いながら堺もコートを着る。

「良かったな、長靴で」

「ブーツって言って」

玄関先でそんな話をする。

「形状は一緒だろう?」

「響きのオシャレ度が違う」

「お前、好きだな。“響き”」

苦笑しながら堺が先に玄関を出てがそれに続く。


「良則、明日は練習?」

「あー、一応」

「雪でも?」

「屋内練習。フィジカルトレーニングとかあるし、雨でも試合はあるからな。外でちょっとはするかも」

「あ、そっか。サッカーはそうだったね」

は頷きながらそういった。

は高校のときはサッカー部のマネージャーというものをやっていた。彼女の通っていた学校は、毎回県大会の予選1回戦敗退のどちらかといえば進学校と呼ばれる公立高校だったので、部活もそこまで熱血ではなかった。

それでも、マネージャーと言うものは忙しかったことを記憶している。

と堺は同じ年だからの通っていた学校が強豪と呼ばれる学校で全国大会に出場していたらもっと早くに出会えていたかもしれない。

まあ、当時出会えていたからと言って今の関係になっているとは思えないが...

しかし、高校を卒業して以降は“サッカー”というものから随分と離れた。

マネージャーを3年間やったのでもうおなかいっぱいになったのかもしれない。

大学時代はそれこそ、サッカー以外のスポーツに嵌っていた。テニスだとか、スキーだとか。野球だとか。

しかし、結局巡り巡ってサッカーに戻ってきてしまったのはこの堺のせいである。

「ん?」

見上げてじっと見るの視線に気づいた堺は彼女を見下ろす。

堺はそんなに背が高い方ではないが、ヒールのあるブーツを履いたを見下ろす程度には高い。

「わたしがサッカーに戻ってきたのは良則のせいだったなーって思い出したの」

「“おかげ”だろう?」

悪びれずにそういう堺に「かもしれませんねー」とは適当に返す。

ちらとを見下ろした堺は「ん」と言って手を差し出した。

重ねたの手は相変わらずひんやりとしており、指を絡めてぎゅっと握った。

「ふふふ」とが笑う。

「んだよ」と不機嫌に返す堺に「逃げないって」とが言う。

の言葉に「うるせぇ」と返した堺は彼女から顔を背けて、でも歩調は飽くまでも彼女にあわせてゆっくり歩いた。









桜風
11.4.2


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