小春日和 4





まだシーズンが始まったばかりで、この日は今シーズン最後の雪かもしれないなと思いながらは空を見上げた。

天気予報によると雪がちらつくとのこと。

「さっむいのに、短パン...」

ガタガタと震えながら友人がピッチに立つ選手達を見てそう言う。

「短パンって...スパッツ履いてるでしょ?」

「寒いことには変わりないよ。服だって1枚でしょう?」

「アンダーは着てるだろうから2枚。アンダーも結構温かいらしいよ」

「詳しいわ...」

「何でアンタは彼と付き合ってるときにそんなことを聞かなかったの」

が返すと「はっはー。興味なかった!」と威張りながら返されて呆れた。


「でも、お客さん少ないね」

「二部だからね」

「なに、それ...」

の言葉に彼女が首を傾げる。

仕方ないので、日本のプロリーグの構造を話した。彼女は全て初めて聞くのか、一々感心していた。

「詳しいね!」

「ありがとう...」

反論する気も起きない。

試合は何とか辛くもが応援しているチームが勝った。

しかし、ホント。ワクワクしない、ドキドキしない。ハラハラしかしない試合だった。

選手達が試合後サポーターに挨拶に来る。

先日の面々もその場にいて、たちの存在に気づいた様子を見せた。

バチンとウィンクをしたのは友人の元彼。

チケットをもらったので会釈をした。

そのの反応に満足したように彼は笑った。

そして、やっぱり睨んでいるのは先日の合コンでも睨んでいた堺と呼ばれていた選手だ。

彼はFWだった。なるほどね、とは思っていた。

話を聞いていなかったからどんな性格かはイマイチ分からないが、あの時突っかかってきたその攻撃的な性格はFWかもしれない。

彼に睨まれているにも拘らずは彼の足元を指差した。

「足」と口を動かす。

さっと表情が変わった。

先ほど、試合の中で接触プレイがあった。

何でもないようにしていたが、少し動きが悪くなったと思う。

こう見えて3年間やんちゃ坊主どもの面倒を見ていたわけではない。...マネージャーって意味だ。

怪我をしても隠して結局悪化させた同級生だっている。

そういうのを見てきたので怪我には敏くなってしまった。

しかし、堺としては気づかれたくなかった事実なのだろうからのこの反応は意外だったのだろう。


スタジアムを後にして食事をしに行く。

「けど、サッカーって紳士のスポーツじゃなかったの?」

今日の試合は確かに当たりが強かったからそう思っても仕方ないかもしれない。

「『格闘技』とも言われてるって聞いたことあるよ。そもそも、サッカーの起源ってどんなだったか知ってるの?」

「どんなの?」

「...自分で調べな」

食事中にしたいと思う話ではない。

「えー、けち」

「はいはい、けちですよ」

そんな会話をしていると電話が鳴る。

誰だ、と思ってディスプレイを見ても知らない番号。

無視をしていると何回もかかってきていい加減鬱陶しい。

もしかしたら間違えた番号にかけて気づいていないのかな...

「なに、誰から?」

「わかんない」

そう返しながら席を外して通話ボタンを押す。

『俺だけど』

誰?

“俺”という苗字の知り合いはいない。

やっぱり間違い電話かな...

「すみません、電話間違っていませんか?」

が問うと『堺だ』とやっと名乗った“俺”さん。

「...堺って、あの堺?」

『どの堺を言ってるかわかんねぇけど、たぶん、その堺だ。ETUの』

何でこの人が自分の電話番号を知っているのだろうか、と不思議でたまらない。

『今日、何で気づいたんだよ』と言われてこの人は主語とか目的語とかが言えない人なんだぁ...と思いながら「昔取った杵柄」と返す。

『は?』

「堺さんも昔はサッカー小僧だったんでしょう?マネージャーって結構見てるもんですよ」

そう返された堺は彼女が高校時代にサッカー部のマネージャーをしていたことを思い出したようで『ああ、なるほど』と返す。

「で?」とが言うと『あ?』と返された。

「用件は?」

『...別に』

と言う堺には溜息を吐く。

「大事に至らないうちにケアしておいた方が良いですよ」

が言うと『わかってる』と言って一方的に通話を切った。

何だったんだ、この電話...

通話が切れた電子音を耳にしながらは溜息を心底呆れた。









桜風
11.4.23


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