小春日和 5





一度応援してしまうと気になってしまうもので、二部の試合があった日の翌日は新聞のスポーツ欄で結果をチェックしてしまう。

やはり、二部だから本当に結果くらいしか載っていない。


「で、結局こうなるのよね」

は溜息を吐いてスタジアムのスタンドに立っていた。

好きなことは好きなのだ。

だが、以前彼らに言ったように食傷気味だっただけ。

まんまとこっちに戻ってきた自分に溜息をつきながら適当なところで落ち着いた。

チャントも覚えて、各選手のプロフィールや勿論背番号も頭に入っている。

充分どっぷり嵌ってしまったようだなぁ...

そう思っているとベンチに動きがあった。

今回スタメンではなかった堺がアップを始めた。

確かに、今日のFWは決定打に欠ける。

此処は若手の堺に頑張ってもらおうということなのかもしれない。

若手、というにはスポーツ選手としてはそこまで若くはないが...


ピッチに立った堺がふとサポーターに視線を向けるとひとりだけ自分の目に飛び込んできたのがいた。

他のサポーターは認識することはなかったが、ひとりだけ。

「んだよ」

小さく毒づく。

食傷気味でサッカー離れしてたんじゃないのかよ...

そう思いながらも何故か口元が緩む。


その日の試合は最近では珍しいくらいにハラハラすることが少ない試合だった。

珍しいこともあるもんだ...

しょっちゅう試合を見に来ているわけではないので結局は新聞だとかで小さく載っている記事だけが情報源なのだが、大抵以前自分が見た試合のようにハラハラさせられる試合だったようだ。

だから、こうして点もしっかり取って守備もきっちり決まった今日のような試合は珍しくて仕方ないはずだ。

選手の健闘をたたえていると、選手達はサポーターの傍にやってきた。

も拍手で彼らをたたえる。

ふと、目があった。途中出場の堺だ。

睨まれたわけではない。どこか、ちょっと嬉しそうに見える。

まあ、それも目の錯覚なのだろうが...

今日は接触プレイは無かったし、怪我も無いようだ。

体が資本。これはどの職業も、どの人もそうなのだろうが、彼らのようなプロのアスリートは特にそれが言える。



家に帰ると電話が鳴る。

今度は携帯に登録しているので相手が誰かと言うのは分かった。

「もしもし」と出ると『俺だ』とやっぱり“俺”さんからのようだ。

『またアイツからチケットもらったのかよ』と言われた。

以前スタジアムに行った経緯は話していないが、チケットをくれた本人から聞いたのかもしれない。

「今回は自腹です」

の言葉を聞いて向こうは驚いたような息遣いが聞こえた。

『今度、またホームでの試合のときは送ってやろうか?』

彼が言う。

「いいです。わたしの仕事って勤務形態が結構読めないので。というか、堺さんが親切だと気持ち悪いですよ」

『俺は、が敬語なのが気持ち悪い。同じ年って言ってなかったか?』

そう言われては驚く。

あのときの合コンでは、一応最低限の自己紹介だけはしたのだ。

その後は、全く会話を楽しむ気がなく、食事に勤しんでいたので自分は他の人の情報がまるで入ってきていないと言うのに...

「そうなんだ?」と返すと案の定『25だって言ってただろう?』と不機嫌な声が返ってくる。

「仕方ないじゃない。騙されてあそこに座ってたんだから。絶対に楽しんでやるかって思ってたの」

それでか、と堺もやっと納得した。

あの大人気ないの態度はとても不愉快だったが、本人が不愉快な思いをしていたのをそのままダダ漏れしていただけなのだ。

『大人げねぇな』と堺が言うと「いいの、騙した方が悪い!」とが返す。

本当に大人気ないの言葉に堺は苦笑した。

その笑った声が耳に届いたは少し拗ねたが、思ったより柔らかい笑い声でちょっと驚いた。









桜風
11.4.30


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