また、いつか 1





「じゃ、2軒目行くぞー」

そう言って歩き出した後輩の後をゆっくり歩く。

つい先ほどまで2軒目に参加するかどうか悩んでいたのだが、期待のまなざしを向けられていることに気付いた上に、緑川に肩を叩かれて諦めた。

仕切っているのはベテランではあるものの、若手と一緒に騒げる丹波で、彼に任せておけばまあ、悪くはならないだろうと思ってその後に続く。


「村越?」

女性に呼び捨てされた。

異性に呼び捨てされると言ったら、まあ、サポーターでも呼び捨てする人も居るだろうからその類かなと思って振り返った村越は目を丸くした。

...?」

「あ、やっぱり村越だ」

ニコニコと彼女は笑っている。

スッと彼女の名前が出てきた自分に驚いたが、彼女は嬉しそうに駆け寄ってきた。

「先に行っときますねー」

丹波に声を掛けられて軽く手を上げて応えた。

この場にこの人数が足を止めるのは周りに迷惑になるので、皆の足を止めるようだったら「じゃあな」と目の前のと別れなければならなかった。


道の真ん中では邪魔だろうとシャッターの下りた商店の前に移動して足を止める。

「久しぶりだな、。って、今は違うんだったか」

以前、同窓会に顔を出したら彼女は国際結婚をしたとかどうとか聞いた気がする。

村越の言葉には目を丸くして苦笑した。

「なんで知ってるの」

「何年か前の同窓会で聞いたんだよ。国際結婚したとか、玉の輿に乗ったとか」

女子たちが賑やかに騒いでいたので、その情報が自分の耳にも入ったのだ。

まあ、『女子』と言っていいのは何歳まで良いかわから無いので、『暫定女子』であるが...

そしてその後に「村越君知ってた?」という言葉が続いた。

「いや、知らなかったな」と応えると「何で村越君に聞くの?」と別の女子が聞いた。

「え、知らないの?」と言って村越に話を振った女子は隣の女子に耳打ちをする。

出来れば目の前でしてもらいたくないんだがな...

そう思った。目の前で自分のことを内緒話されるなど、気持ちのいい話ではない。

「同窓会かー...あるかな、近々」

行ってみたいな、と彼女が続ける。

「さあな。当分案内は来てないな。一時帰国か?」

「ううん、戸籍にバツをつけて帰って来たから当分日本在住だよ」

笑いながらが返す。

村越は目を丸くした。

「早いな...」

「失敬ね!これでも中々に我慢したんだから」

少し怒ったフリをして彼女が返す。

我慢、という言葉を聞いてどうしたわけか、村越は胸が痛んだ。

突然の携帯が鳴る。

彼女は「ごめん」と断って携帯を見た。

「あー...せっかくの再会ですが」と村越を見上げた。

仕事か何かなのだろう。

「ああ」と頷いた村越は自分のポケットから携帯を取り出す。

「連絡先を聞いても良いか?」

そう聞かれては頷きかけて止まった。

「次に、また偶然会えたらってのはどうかしら?」

ゼロではないが、中々ないことだろう。

「...日本在住と言ったが、東京か?」

東京都内と言われても確率は低いが、他県だとグンと再会の確率が低くなる。

「東東京在住」

そう返されて村越は携帯をポケットに仕舞った。

「ま、そのうちまたひょっこり会えるだろう」

「そんな気がする」とも笑う。

「じゃあな、気をつけていけよ」

村越が言うとは笑って

「じゃあね、村越。また、いつか」

と軽く手を上げて雑踏の中に消えていく。


「『いつか、また』か...」

呟いて村越は再びポケットから携帯を取り出した。

今、丹波たちが何処にいるのかがさっぱり分からない。

「丹波、今何処だ」

『あれ、来れるんスか?!』

丹波が驚きの声を上げた。

「来るなと言うなら行かないつもりだがな」

『や、そういうわけじゃ...』

慌てる丹波が可笑しくて喉の奥で笑う。

村越は彼に聞いた店に向かって足を進めた。









桜風
11.6.4


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