また、いつか 2





パチンと携帯を閉じた丹波に「コシさん、来るんスか?」と堀田が聞く。

「あー、うん。そうみたい...」

「何スか、『あれはコシさんの元カノだ』って言い切ってて...」

赤崎が非難の声を上げる。

「や、だって。あれはそんな雰囲気だったって。なあ、堺」

「俺に振るな。というか、お前は邪推しすぎじゃないのか?」

「じゃあ、コシさんに直接聞いてみようぜ。世良、いいな」

「オレっスか?!」

世良が頓狂な声を上げる。

これは間違いなくとばっちりだ。

振り返ると椿と目があった。

「椿」と世良が名を呼ぶと彼は「はい!」と緊張したように声を上げる。

しかし、「世良さん。丹さんは世良さんに言ったんスよ」と赤崎が余計なことを言う。

「だなー。世良、諦めろって」

熊田がそう言うと世良は肩を落とした。

諦めたようだ。

良かった良かった。この場が丸く収まった。


暫くして村越がやってきた。

アルコールは1軒目で口にしたので2軒目はノンアルコールと決めた村越はウーロン茶を注文して空いている席、世良の隣に腰を下ろした。

店員が持ってきたウーロン茶に口をつけようとしたところで「コシさん!」と隣と会話をするには不適当な声量で声を掛けられる。

「どうした?」

「あ、あの...さっきの..えと...あー。き..綺麗なお姉さんは...コシさんのお姉さんスか!」

皆から非難の視線が突き刺さり、世良は居た堪れない。

「いや、高校のときの同級生だ」

「じゃあ元カノとか...?」

さらっと赤崎が聞く。怖いもの知らずはこんな話題でも本領発揮だ。

しかも、先輩方からお褒めの視線を受けている。

お、オレだって頑張ったのに...

心の中でいじけながら世良は村越の答えを待っていた。

「いいや、付き合ったことはないな」

「何だよ、丹さん!」

一斉に丹波に非難の声が上がる。

「どうしたんだ?」

隣の世良に村越が聞いた。

「あ、いや。あの...」


村越と彼女を置いてこの店に着いた途端、丹波が「コシさんの元カノって綺麗系だったなー」と声を上げたのだ。

「元カノなんスか?」と黒田が食いつき、他の若手中堅が食いついた。

「決まってるだろうが」と丹波が自信満々に言うが「苗字呼び捨てだったけどな」と緑川は茶々を入れる。

「え、いや...なんか、ほら。別れたなら名前で呼ぶのもなんかおかしいじゃないスか」

と少ししどろもどろに丹波が応える。

「ま、とにかく。今日はもうコシさんは合流しないだろうし。始めようぜ」

そんな感じで二次会が始まったが、村越から電話があり、確認してみようと言う話になった。


その経緯を聞いて村越は呆れた。

「じゃあ。アレだ!元マネージャー!!コシさん高校サッカーでしたよね?」

「ああ。けど、アイツは野球部のマネージャーだ。甲子園にも行った」

「3年間クラスメイト」

「同じクラスになったことは一度もない」

「何の接点があったんスか...」

丹波はうな垂れた。

全て外してしまい、後輩の視線が痛い。

「同級生だと言っただろう。あと、クラスが3年間隣だったな。委員会が1・2年のとき同じで、3年のときは部長会でよく顔を合わせてた。それくらいだ」

良く覚えているな、自分も...

不思議に思いながら村越は過去をすらすらと思い出す。

丹波は後輩たちから非難を受けていた。

「良く覚えてたな、そんなもん」

向かいに座ってきた緑川が声をかけてきた。

「ああ、実は俺も今そう思っていたところだ」

苦笑して返す村越に緑川は肩を竦めた。

賑やかな一角を眺めながら目の前のつまみに手を伸ばす。

明日はちょっとしっかり体を動かしておこう...

今日摂ったカロリーを考えて村越はフィジカルトレーニングのメニューを考え直していた。









桜風
11.6.11


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