| パチンと携帯を閉じた丹波に「コシさん、来るんスか?」と堀田が聞く。 「あー、うん。そうみたい...」 「何スか、『あれはコシさんの元カノだ』って言い切ってて...」 赤崎が非難の声を上げる。 「や、だって。あれはそんな雰囲気だったって。なあ、堺」 「俺に振るな。というか、お前は邪推しすぎじゃないのか?」 「じゃあ、コシさんに直接聞いてみようぜ。世良、いいな」 「オレっスか?!」 世良が頓狂な声を上げる。 これは間違いなくとばっちりだ。 振り返ると椿と目があった。 「椿」と世良が名を呼ぶと彼は「はい!」と緊張したように声を上げる。 しかし、「世良さん。丹さんは世良さんに言ったんスよ」と赤崎が余計なことを言う。 「だなー。世良、諦めろって」 熊田がそう言うと世良は肩を落とした。 諦めたようだ。 良かった良かった。この場が丸く収まった。 暫くして村越がやってきた。 アルコールは1軒目で口にしたので2軒目はノンアルコールと決めた村越はウーロン茶を注文して空いている席、世良の隣に腰を下ろした。 店員が持ってきたウーロン茶に口をつけようとしたところで「コシさん!」と隣と会話をするには不適当な声量で声を掛けられる。 「どうした?」 「あ、あの...さっきの..えと...あー。き..綺麗なお姉さんは...コシさんのお姉さんスか!」 皆から非難の視線が突き刺さり、世良は居た堪れない。 「いや、高校のときの同級生だ」 「じゃあ元カノとか...?」 さらっと赤崎が聞く。怖いもの知らずはこんな話題でも本領発揮だ。 しかも、先輩方からお褒めの視線を受けている。 お、オレだって頑張ったのに... 心の中でいじけながら世良は村越の答えを待っていた。 「いいや、付き合ったことはないな」 「何だよ、丹さん!」 一斉に丹波に非難の声が上がる。 「どうしたんだ?」 隣の世良に村越が聞いた。 「あ、いや。あの...」 村越と彼女を置いてこの店に着いた途端、丹波が「コシさんの元カノって綺麗系だったなー」と声を上げたのだ。 「元カノなんスか?」と黒田が食いつき、他の若手中堅が食いついた。 「決まってるだろうが」と丹波が自信満々に言うが「苗字呼び捨てだったけどな」と緑川は茶々を入れる。 「え、いや...なんか、ほら。別れたなら名前で呼ぶのもなんかおかしいじゃないスか」 と少ししどろもどろに丹波が応える。 「ま、とにかく。今日はもうコシさんは合流しないだろうし。始めようぜ」 そんな感じで二次会が始まったが、村越から電話があり、確認してみようと言う話になった。 その経緯を聞いて村越は呆れた。 「じゃあ。アレだ!元マネージャー!!コシさん高校サッカーでしたよね?」 「ああ。けど、アイツは野球部のマネージャーだ。甲子園にも行った」 「3年間クラスメイト」 「同じクラスになったことは一度もない」 「何の接点があったんスか...」 丹波はうな垂れた。 全て外してしまい、後輩の視線が痛い。 「同級生だと言っただろう。あと、クラスが3年間隣だったな。委員会が1・2年のとき同じで、3年のときは部長会でよく顔を合わせてた。それくらいだ」 良く覚えているな、自分も... 不思議に思いながら村越は過去をすらすらと思い出す。 丹波は後輩たちから非難を受けていた。 「良く覚えてたな、そんなもん」 向かいに座ってきた緑川が声をかけてきた。 「ああ、実は俺も今そう思っていたところだ」 苦笑して返す村越に緑川は肩を竦めた。 賑やかな一角を眺めながら目の前のつまみに手を伸ばす。 明日はちょっとしっかり体を動かしておこう... 今日摂ったカロリーを考えて村越はフィジカルトレーニングのメニューを考え直していた。 |
桜風
11.6.11
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