| が目を覚ますと、知らない天井で慌てた。 「杉江、ちゃん起きたよ」 近くでユーイチの声がする。 しかし、『杉江』と呼びかけたか? 「ああ、本当だ。先輩、働きすぎです。過労だそうですよ」 顔を覗きこまれてこれまた慌てた。 改めて周囲を見渡すとどうやら病院のようだ。 「何で...?」 何故、自分が病院にいるのか。 何故、杉江が自分の顔を覗きこんでいるのか。 「家で倒れた先輩を心配して、ユーイチがウチのチームのクラブハウスに来たんです。今日はオフだったんですけど、フロントは出勤していて。『杉江はどこ?』って言うから俺が呼び出されて。ほら、練習を見学に何度か来てたでしょう?フロントがそれを覚えてて、俺の知り合いのようだったし、って」 確かに、練習は何度か見に行ったし、そのたびに杉江は声を掛けてくれていた。 こんなときにそれに助けられるとは... 「で、ユーイチが『ちゃんを助けて』っていうから家に言ってみたら先輩が倒れてて。薬の買い置きとかわからなかったし、風邪かどうかも怪しかったので、先輩の出勤用の鞄を持ち出して病院に駆け込んだってワケです。 なので、すみません。財布の中身を見ましたし、鞄の中を物色しました」 そう言って杉江が頭を下げる。 「あ、ううん。こっちこそ。あの..せっかくのお休みに...」 「高校時代、散々世話になったんで良いですよ」 苦笑して返す杉江に、は酷く恐縮している。 「あ、そうだ。あと、ユーイチが覚えていたのでご実家に電話しましたよ。ご家族の方ですか、って聞かれたんですけど俺は違うんで。一応、今回の話をするみたいです」 杉江が言うと「ああああ」とは頭を抱えた。 「...先輩」 「なに...」 テンション低いまま返事がある。 「先輩って、人を頼るのが苦手..なんですか?」 「苦手と言うか、恥ずかしいことだと思ってるから」 さらっと返されて杉江は「やっぱり」と呟く。 「ん?」 「何となく、そんな気がしてました」 「あら?バレてたの?」 少しだけ驚いたようにが言う。 「ええ、何となく。ユーイチのこととか、この間の電話のこととか。それ以前に高校のときとか」 この間の電話、に全く心当たりがないは首を傾げた。 「このままだと、先輩潰れてしまいますよ。今回は、ユーイチが居たから俺が呼び出されて病院に連れて行けましたけど。例えば、今回のが車道のど真ん中だったり、駅のホームでとかそんな状況でおこったことだったら、笑い話にして済ませられないんじゃないですか?」 「やーねー。ちょっと油断しただけよ」 カラカラと笑って言ったは目の前の杉江の目を見て言葉を飲む。 杉江は一切笑っていない。 「笑いごとじゃないです」 ぴしゃりと言われてはしゅんと小さくなった。 杉江が尚も言い募ろうとしたところで、の両親がやってきた。 ひとまず、杉江の説教はこれで終わるだろうと思ったはホッとした表情を浮かべた。 当然、杉江は言い足りない。 しかし、彼女の両親から幾重にも感謝の言葉を向けられると居た堪れなくなってひとまずその場を後にすることにした。 医者の話では3日くらい入院だと言っていたからもう1日くらい顔を見に来れるだろう。 杉江が帰った後、両親の説教を受け、そして父がユーイチを連れて病室を出た。 残った母の表情は神妙で、ろくな話ではないと思った。 「何言ってるの?!」 案の定、碌な話ではなくは激昂した。 「けど、...」 「何考えてんのよ、あの子!どうせまた面倒見られないとか言って泣きついてくるのよ」 「けど、ユーイチの親はあの子だから」 そんなこと、百も承知だ。承知だが、 「じゃあ、何で今まで放ったらかしにしてたのよ。手紙を寄越しても、ユーイチの事、一切書いてなかったじゃない!」 「、病院だから...」 困ったように母が宥めようとする。 結局、弱者が勝つのだ。妹のように、誰かに寄生して生きていけば誰かが助けてくれてそれが当たり前になっていく。 「、またあの..退院してから。ゆっくりできるようになってから話をしましょうね」 そう言って母が逃げるようにして病室を後にした。 「ちゃん、おやすみ」 ユーイチが一度病室に顔を出して帰って行く。 は布団を被った。 時々堪え切れなかった嗚咽が静かな部屋の中で微かに響いた。 |
桜風
12.2.11
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