サポーター 1





買い物をしていると少し先に、知り合いの姿を視界に認める。

昔馴染みのだ。

赤崎は少し早足でそちらに向かった。

「よっ」

ぽんと肩を叩いて声を掛ける。

彼女は振り返って赤崎を見上げた。

「よ!」

彼女も軽く手を上げてそう応じた。

「久しぶりじゃん」

「そう?」

「ああ、お前はテレビで俺見てるから」

何だか少し自慢げに言う赤崎に彼女は片眉を上げた。

「相変わらずチョーシこいてるね、遼は」

「へっ、実力だよ」

「小心者のクセに」

彼女が指摘すると「ウルセー」とムキになって返す。

あながち間違いではないのだ。

「んで?は何してんの?」

気を取り直して赤崎が問う。

「ん?買い物。何、荷物持ちしたいのー?しっかたないなー」

笑いながらは赤崎の腕を掴んでズンズンと歩き始める。

「ちょ、待てって!俺、代表選手なんだぞ。お前、色々と拙いだろ」

赤崎が慌てると

「補欠君のクセに。大丈夫よ、誰も気付かないって。王子なら大騒ぎになるかもしれないけどね」

が笑う。

「誰が補欠だ」

彼女の言葉に赤崎がムキになる。

「だって、欠員が出たから呼ばれたんでしょ?この間のって」

「あ?!つっても数多くいる23歳以下の選手の中で俺に声がかかったんだぜ?って、知ってたのかよ」

「うん、一応ね。ETUは応援してるから」

腕を引くのをやめて隣を歩きながらが言う。

ちょっとだけ面白くなさそうに赤崎は彼女を見下ろした。

彼女がETUを応援しているのは結構前からで。

だから、自分が入団すると決まったときには少しはいい反応を見せるかと思ったのに「地元に貢献じゃん...てか、貢献してね」と言われた。

一応祝福されたのだろうが、全く伝わらなかった。

「ガンナーズの窪田君とかは、たぶん次も呼ばれるでしょ?十中八九間違いない。遼はわかんないじゃん」

「ばっか!呼ばれるに決まってるだろ」

「だといいねー。ETUの代表って物凄く久しぶり...今の監督以来らしいじゃない」

彼女はそう言ってショーウィンドウに視線を向ける。

「まあなー」

「後藤GMも喜んだことでしょうね。これはひとつの成果である」

「おうよ」

「候補なら杉江さんとか村越さんもあったんだよね?」

「らしいな」

彼女はETUというチームが好きだ。

だが、チームの話をするときには絶対に自分の名前を出さない。


てくてくと歩いて複合商業施設に辿り着いた。

「ここ?」

「うん」

「へー...こんなトコ、お前来るんだなー」

「遼はこういうトコ来ないの?」

そういいながら彼女は迷いの無い足取りでエスカレーターを上っていく。

「ないなー。ショップが多いし。あと、通販」

「通販って...」

肩を落としたように彼女が言う。

「イマドキの通販を舐めんなよ。丹さんも感動してたんだぜ?」

「丹波さん?ノリが良さそうだから、ノリで感動したんじゃないの?」

苦笑しながらが言う。

(否定できねぇ...)

赤崎はこっそり溜息を吐いた。

さくさく歩くの後を付いて歩くと、ひとつのショップの前で彼女が足を止めた。

「...ちょっと待て、

「はい?さ、一緒に入ろうか」

「態とだろ!」

「うん」

彼女は素直に頷いた。

彼女が足を止めたのは、ランジェリーショップだったのだ。

「良いじゃん。向学のために。いつか彼女が出来たときに役立つ知識になる!...かもよ?」

「お前、これセクハラだよ」

「あらやだ。お気づきになって?」

からからと笑って彼女が言う。

「あっちのベンチで待ってるからな!」

そう言って赤崎がショップの前から遠ざかっていく。

耳が赤いのを見ては苦笑した。

「まだまだだねぇ...」

そう呟いてくるりと回れ右をしてショップに入っていった。









桜風
12.11.10


ブラウザバックでお戻りください