サポーター 2





買い物を済ませて赤崎がいるはずのベンチに向かうと、女の子に声を掛けられている。

握手をしていると言うことは、どうやらファンの子が赤崎に気付いたらしい。

(へー...)

心底意外だった。

何が意外って、赤崎の表情だ。

いつも話をしている彼と何だかどこか違う。

おそらく、アレが仕事をしているときの、選手の赤崎の顔なのだろう。

不思議だと思った。

赤崎がを見てニヤッと笑った。

「俺だって人気あんだよ」と言っているようで、は肩を竦める。

(小さいなー...)

こういうところでムキになるのが、やっぱり子供だ。

と言っても、同じ年だが...

ファンの子との話が終わったのか、終わらせたのか赤崎がやってきた。

「どーよ」

「広報の人たちの、戦略的広報のお陰ね」

が言うと

「かわいくねー」

と赤崎が返す。

「ねえ、何か奢ってよ」

「いきなりたかるな」

溜息混じりに赤崎が言う。

「じゃあ、奢ってくれなくていいからカフェ行こう?」

「いいけど。買い物ってそれだけだったのか?荷物持ちって...」

赤崎の言葉に

「そんなにあたしの荷物を持ちたいの?」

と彼女はきょとんとした。

荷物持ちしろって言われたからそれを覚悟してついて来たと言うのに...

「まー、いいや。お前がいいっつってんだし。カフェか?付き合うよ」

少し投げやりに赤崎が言う。


施設の中にあるカフェを適当に選んで入った。

「そういや、練習は?」

「オフ」

「へー...じゃあ自主練は?」

「この後フィジカルトレーニングでクラブハウスに行くけど」

「そうなんだー」

「なに?」

赤崎が問う。

「スポーツ選手の練習って想像付かないから。どうしたって、学校の部活の練習量を想像しちゃうからね」

「良く言われる」

苦笑して赤崎が言う。

「そういや、この間来なかったよな?」

「この間?スタジアムでの試合?行ったよ、大阪戦でしょ?」

が言うと「いや」と赤崎が首を横に振る。

「なに?」

「カレーパーティ」

「は?」

きょとんと彼女が問い返す。

赤崎が説明する。

監督の思いつきで、ファンを招待してカレーパーティをしたと言う。

カレーは選手皆で準備し、よそったりしてファンとの交流を深めた。

「なにそれ!」

彼女は立ち上がって抗議の声を上げる。

「ばっ!静かにしろ。目立つだろ...!!」

赤崎が姿勢を低くして彼女に訴える。

「何それ...!」

椅子に座ってもう一度彼女が言う。

「あ、やっぱ来てなかったんだ」

「知らなかったもん」

むすっとむくれる。

「まあ、当日に監督が突然言い出したからなー。俺らも突然「カレー好き?」って声を掛けられてお使いに出されたし」

「わー、何で連絡くれなかったの...!」

「や。だって、お前学校あるじゃん」

「講義を放り出してクラブハウスに行くよ!信じらんない!!」

ぶーぶーと彼女はなおも言い募る。

「来てどうすんだよ。お前、カレーなんてそんな好きじゃないだろう?」

「カレーを食べに行くんじゃなくて、選手との交流に行くんじゃない!!」

が言う。

「あー、堺さんと話したかった...堺さん、いっつも不機嫌そうにしてるけど、さすがに普通に話してたら多少は眉間の皺が浅くなるかもしれないじゃない」

「...そういや、ホントあの人いつも不機嫌な感じだよな」

赤崎が頷く。

「でしょ?しかし、ETUがファンサービスが良いから、さすがにサポと話をするときまで尚眉間に深い皺を刻んでないでしょ。あと、丹さんとも話してみたいし..ガミさんも楽しそうじゃない?」

そう言って彼女は盛大に溜息をつく。

「遼の馬鹿」

「はいはい、もうそれくらいにしろよ。また今年もファン感謝祭とかするはずだし」

「絶対、クラブハウスでのカレーパーティの方が距離が近かった...!」

「ったく...」

目の前にも選手がいるというのに彼女は不満そうに頬を膨らませている。

赤崎は面白くないと思いながらそっぽを向いた。









桜風
12.11.24


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