サポーター 3





「はぁ...」

赤崎が溜息を吐いた。

「どうしたんだい、ザッキー。大丈夫、君も少しはモテるようになったんだから、次があるよ。何なら、僕が紹介してあげようか?」

「...なんで振られてるの前提で話をしてんスか」

半眼になってジーノを見上げた。

「おや、違ったのかい?悩ましい溜息だったから恋の悩みかと思ったんだけどね」

そう言って彼はロッカールームを後にした。

(あながち間違いじゃねースけどね)

赤崎はとりあえず着替えてロッカールームを後にした。

先日、あの後も彼女は酷く落ち込んでいた。

彼女が若い選手よりもベテランに興味があるのは、昔から応援しているからだろう。

そして、自分は間違いなく若い選手で。

だが、それにしたって昔馴染みとして応援するだろう。

「おー、若い溜息じゃねーか」

石神に声を掛けられた。

ベテラン陣にも結構フランクな、軽い人もいる。

石神と丹波はそれだろう。

「ガミさん」

「なに、どうしたの。溜まってんの?」

「...お先っス」

からかわれて赤崎はそのまま彼とすれ違った。

何であんな人たちに彼女は憧れているのだろうか。

堺は怖いし、石神は軽いし、丹波も年の割りに賑やかで...

「ドリさんとか、コシさんだろ」

「ん?どうした?」

「あ...」

声に出してしまっていたらしい。そして、目の前には緑川。

「あ、いや。俺の幼馴染がウチの応援をしてて。この間のカレーパーティ来れなくて...」

「ん?そうか。それは残念だったな。監督が当日に思いついたものだったからな。まあ、だから実現できたことだけどな」

緑川は苦笑した。

確かに、予告していたらもっとサポーターが集まってクラブハウスでは難しかっただろう。

「また機会があるさ。達海さんはサポーターを大切にする人だからな。特に、昔うちにいたからサポーターとの距離感というのまで気を配れるのかもしれないな」

そういえば、監督の達海は、自分がこのチームのユースにいたときに選手として所属していた。

たしか、はそのときから練習を見にこのクラブハウスにちょこちょこやってきていたと言っていた。

そのときはまだ赤崎とは知り合いではなかった。

中学のときに初めて出会う。

それを思うと、不思議だ。

このクラブハウスの近くの歩道ですれ違っていたかもしれない。

もしかしたら、一緒に信号待ちをしていたとかないだろうか。


クラブハウスから出て駐車場に向かっているとふと視界にの姿が目に入った。



思わず声を掛けると彼女は笑って手を振った。

「何してんだよ」

「近くに来たから。もう練習終わってた」

肩を竦めて彼女が言う。

「スケジュール、ネットにあるだろ?」

「今、携帯の電池切れてるの。あー、そっかー...」

目に見えて落胆していたので、

「もうちょい待ったらガミさんは出てくるかもよ」

と言ってしまった。

「え、ホント?!」

「王子は俺より先に帰ったけど、ガミさんとはさっきすれ違ったし。あとドリさんも」

彼女は嬉しそうに目を輝かせる。

(ドリさんはベテランだけど、ETU歴はそんな長くねーのに...)

少しムッとしながら「じゃーなー」と言った。

「ありがとう、遼」

弾んだ声でそういわれて赤崎は軽く手を上げた。

何だか、好きな子の恋の応援をしてしまう道化の気分だ。

(や、好きな子じゃねーし)

自分の思考を否定して車のキーをポケットから取り出す。


ふと振り返ると丁度石神がクラブハウスから出てきた。

しかし、彼女は彼に声をかけずに見送っている。

(何してんだよ...)

「ガミさん」

「おう、まだいたのかよ」

「あの子、ガミさんの出待ちしてたみたいッスよ。練習に間に合わなかったって落ち込んでました」

赤崎がを指差して言う。

「あ、ホント?んじゃ、ちょい行ってみるわ」

そう言って石神が向かっていく。

は嬉しそうに握手してもらっていた。

ふと彼女が視線を向けてきた。

赤崎は慌てて視線を逸らして車に向かっていく。

(ホント、何やってんだ?)

今日イチの盛大な溜息を吐いた。









桜風
12.12.1


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