| リーグ中断期間中の合宿は、リーグ開始前と同じく都内の夢の島で行われる。 「夢の島って...!」 久しぶりに掛かってきた彼女からの電話は合宿の話だった。 彼女が電話越しに笑う。 「うっせ」 「サポーター想いじゃないの」 「は?」 「応援に行きやすいじゃない。避暑地とかで合宿張られたら応援に行くのにいくら掛かると思ってるの。夢の島なら近くて良いじゃない。絶対行こうっと!」 弾んだ声で彼女が言う。応援と言ってもそこに自分は入っていないのを察している赤崎は「はいはい」と適当に相槌を打っていた。 「そういえば、石浜さん。残念だねー。寂しくなるけど、甲府でも頑張ってもらいたいよね」 不意に彼女が言う。 「あ?ああ...まあ...」 彼の移籍に関してフロントのことを詰って緑川に窘められたという苦い経験を持つ赤崎はできればその話題は積極的に入りたいと思わない。 あそこで、ベテランと若手の心構え、選手としての姿勢への歴然とした差が明らかになった。 「そういえば、パッカ君の中ってコシさんってホント?」 話題を変えられて赤崎はまた言葉に詰まる。 「お前、それどこで聞いたんだよ」 「ETUサポなら皆知ってる。あのオールスターのときのブロックはコシさん以外にありえないじゃない。つまり、オールスターにわがETUからは、王子と夏木さん、そしてパッカ君の中身でコシさんが出場してたんでしょ?」 「それ、他のサポに漏らすなよ?トップシークレットだ」 「わかった。コシさんにあったら遼がそんなこと言ってたって言ってみる」 「...やめてくれ」 電話の向こうで彼女は爆笑していた。 合宿が始まってスタンドを見るとの姿があった。 かき氷を配られて困った様子を見せている。 というか、この合宿のスタイルってどうだろうと思う。何せ、パラソルやらカキ氷屋さん。そのほか『夏』の風物詩がおいてある。 見た目、かなりふざけている。 しかし合宿を見に来たサポーター達は楽しそうだ。 笠野が声をかけている。 「ホント変わったな...」 休憩しながらスタンドを見上げてポツリと呟く。 「お、俺のサポちゃんが来てる」 石神がスタンドを見ながら言う。 「『俺のサポちゃん?』。お前、一々覚えてんのかよ」 呆れたように堺が言う。 「あの子。この間俺の出待ちしてたから」 (のことか...) 赤崎は少し機嫌悪くその場を離れた。 (そいつ、堺さんも結構好きッスよ) 心の中で石神に突っ込みをいれる。 「FWは元気がいいのが揃っているけど、やっぱりいぶし銀の堺さんでしょ」 と前に言っていた。 つまり、FWなら堺がいちばんだと言うのだ。 彼女の主張は結局チームが好きと言う話に繋がるのだろうが、本当に気が多いと言うか... (はー、つまんねー...) 結局、が合宿に来たのはその1日だけだった。 (調子でも悪かったのか?) 少し心配になって電話をしてみると「学生さんも忙しいのよ」と彼女は苦笑しながら返した。 「夏休みは?」 「残念ながらもうちょい先。ワールドカップがある年だったら、中断期間がいつもとずれるから場合によっては夏休みに入ってからの合宿なんだけどね」 が言う。 学生のスケジュールなんて知らなかった赤崎は「へー」と相槌を打った。 「後半、楽しみだねー」 不意にが言う。 「あ?ああ...」 「今年って近年では珍しい戦績じゃない?」 「まーなー」 「期待しちゃうよね」 電話の向こうの彼女がどんな表情をしているかが容易に分かった。 「はっ!大いに期待しろよ」 「うん!」 「この俺に」「達海監督にね」 自信満々に言う赤崎の声に被って彼女が言う。 「へ?何??」 綺麗にかぶっていたので聞き取れず彼女が問い返す。 「...チームに」 心が折れた赤崎は、そういいなおした。 「うん!はー、夏休みは、都合がつけば追いかけるからね!」 「都合がつけば?」 「こう見えて、アルバイトなるものもしてますし?」 「去年してたか?」 「うん、してたよ。あれ、言ってない?」 「たぶん、聞いてねーだろ。何のバイト?」 「カテキョ」 「ってそんな頭良かったか?」 「だまれ」 瞬時にそう返されて赤崎は笑った。 「はー、責任重大なもんやってんだな」 「そっちだって、責任重大」 そう返されて赤崎は苦笑した。 「こっちは本職だ」 「でしたー」 笑ってはそういい、挨拶をして電話を切る。 「期待してますよ、生意気盛りなMFさん」 |
桜風
12.12.22
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