| 隅田川で花火大会が行われるその日、23歳以下の日本代表の発表がその日行われる。 赤崎はマンションにいた。 正直、クラブハウスで結果を見る勇気がなかった。 選ばれなかったら、やっぱり落ち込んでしまうだろう。 そこを慰められてみろ。更に惨めになる。 だから、椿に報告するように指示をしてマンションでひとりでそれを待つことにした。 ピンポーンとインターホンが鳴る。 「は?」 赤崎はドアを開けた。 「よっし、一緒にテレビ見ようか」 「な!?!ばっか!来んな!!」 赤崎が通せん坊をしたがその隙間をするりと抜けて彼女、が家の中に入り込んだ。 「わ、広いー。やっぱ、スポーツ選手って全然違うんだねー。同じ年なのが信じらんない」 「つか、帰れよ」 「良いじゃない。一緒に発表見ようよ」 が言う。 赤崎は苦い表情を浮かべた。 「どーせ、遼のことだから見ずに誰かからの報告を待ってるんでしょ」 「うるせー」 図星を突かれた。 「ヘタレ」 「うるせー」 「そんなヘタレな遼くんのためにやってきましたー。ほら、自棄酒、祝杯どっちもいけるようにアルコール。飲んでも大丈夫でしょ?」 「そんな飲まねぇけどな」 「余ったら全部飲んであげるから」 「お前...」 半眼になって赤崎がの手元を見た。 その量、どうかと思う。 彼女にそれを指摘すると 「ん?フツーじゃん」 と返された。 イマドキの大学生の普通はウワバミレベルと初めて知った。 「何、このでっかいテレビ。ムカつくー」 そういいながら彼女はテレビの電源を入れた。 チャンネルを合わせてつまみと酒を出す。 「さー、どうかしらねー。遼が補欠君かどうかの瀬戸際ね」 赤崎は思わずを見た。 「なに?」 「や、何でもねぇよ」 夏前に話をしたことを彼女は覚えていたのだ。 「次も選ばれる」と、そのときは啖呵を切ったことを赤崎は思い出す。 定刻になり、発表が始まった。 赤崎はグラスを握り締めている。 まずはGK、次にDFと来る。 そして、赤崎のポジションのMFの発表だ。 「赤崎遼」 一瞬心臓が止まった。 赤崎は目を見開き、そしてを見た。 彼女は俯いて震えている。 「?」 (あれ、俺聞き間違い?) 空耳で自分の名前が聞こえたのかと思って不安になる。 「やったーーーー!!!」 持っていたグラスごと彼女は万歳をした。 お陰で中の液体がぶちまけられる。 「うわっ!最悪だな、お前...」 そう言って、布巾を取ってくるために立ち上がろうとして、出来なかった。 「遼!やったよ!!」 ガバッと彼女に抱きつかれたのだ。 「お、おう」 彼女の背に腕を回そうとしたとき、画面の中の代表監督が「椿大介」と名を上げた。 「へ?」 「椿くんも?!」 赤崎に抱きついたままがテレビに視線を向けた。 聞き返しても答えてくれるはずなく、発表が終わった後に画面に表示された文字を見て、間違いではないことを確認した。 「わっ、ETUすごい!!」 弾んだ声でが言う。 何だかさっき抱きつかれたのが有耶無耶になった気がした赤崎はこっそりガッカリしていた。 暫く祝杯を交わしていたが、飲むペース配分を間違ったらしい赤崎は結構酔いが回ってきた。 「なー、」 若干呂律が回っていない。 「んー?」 愉快そうに彼女は返事をする。何かあっても逃げられるようにこちらはまだ酔っ払っていない。 「何でお前、俺を応援しないんだよー。期待しろよー、応援しろよー」 ずっと思っていた。 見栄を張って、聞かなかったこと。 彼女は笑った。 「応援してるじゃない」 「ウソだ。俺のことは応援してねーだろ」 「そりゃ、他の人たちみたいにあからさまに応援はしてないけどね」 「しろよ」 「やあよ」 笑いながら彼女が言う。 「なんでー」 「だって、プロサッカー選手・赤崎遼を応援したら、遼が遠くなっちゃうじゃない」 彼女が言う。 「へ?」 何だか一気に酔いが醒めた気分だ。 「だから、本人に応援の言葉は向けない。だって、遼と会ってるのってプライベートだもん」 「はっ!」 赤崎は笑う。満足そうに、ガキ大将が笑うように。 「任せろ。チームでも代表でも大活躍してやんよ」 |
桜風
12.12.29
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